4.民間業務EDI低迷の要因と問題点
4.1 国土交通省による「港湾物流分野における中小事業者の情報化促進のための調査」
平成13年3月に刊行された同調査報告書は、EDI導入状況および主な阻害要因について次のようにまとめています。
■EDI導入状況(複数回答あり)
・EDIを導入、業務に利用している:84.3%
内訳: |
行政手続EDI:85.2% |
sea-NACCS(税関) |
92.5% |
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港湾EDI(港長/港湾管理者) |
22.4% |
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JETRAS(外為EDI) |
3.7% |
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民間手続EDI:25.7% |
POLINET |
24.2% |
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S.C.NET |
5.0% |
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S.F.NET |
13.7% |
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個別EDI対応(自社仕様) |
16.8% |
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個別EDI対応(顧客仕様) |
36.0% |
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電子メール(添付ファイル) |
68.9% |
■民間EDIの主な阻害要因(複数回答あり)
・行政手続EDIには対応済みだが、民間EDI対応の投資余力がない |
43.2% |
・民間EDIネットワークへの参加企業が少ない |
38.3% |
・初期費用の負担が大きい |
31.7% |
・利用料金が高い |
26.8% |
・複数の取引先から各々個別のEDI対応を要求される |
25.7% |
4.2 港シ協によるアンケート調査結果
4.2.1 海貨業者
港シ協が平成13年6月に実施した海貨業者ヒアリング調査(EDI導入事業者であって書類搬送比率80%以上の事業者を対象)においても同様の阻害要因が挙げられており、加えて、以下の問題が内在していることを挙げています。その中でも、取引相手先のEDI対応の有無により、書類作成・搬送、EDI対応の二重運用が避けられないことによる非効率的な業務運用、コスト増加などの問題が大きいことも指摘されています。
・社内システムに起因するもの |
−データ処理エラーが多くて仕事にならない。
−二重入力が避けられない。 |
・社内組織に起因するもの |
−EDI対応の要員が不足している。 |
・商慣習に起因するもの |
−荷主からハードコピーを要求される。 |
・物流そのものに起因するもの |
−貨物の搬入、S/I入手が非常に遅い。
−コンソリ貨物が多く、EDIに不向き。 |
・過渡期的なもの |
−EDIに対応しない相手先への書類作成搬送。
−二重運用に伴う非効率的な業務、コスト増加。 |
4.2.2 船社又は船舶代理店
一方、船社、船舶代理店業界のEDI対応状況をみてみると、大手の邦・外船社は、コンピュータB/L作成システムを導入し、業務効率化のために積極的にEDI(Sea−NACCSまたはPOLINET)を活用しており、それなりの効率化効果を挙げています。しかし、海貨・通関業者からのD/R情報のEDI比率が低迷していることにより、Sea−NACCSおよびPOLINET合わせても30〜40%程度で、期待効果には程遠い状況です。
大手邦・外船社は、現状を静観しているのでしょうか。そうではありません。海運業界も他業界と同様に熾烈な競争下に置かれていますので、各船社は最新IT導入による業務効率化、組織のスリム化、コスト削減、情報サービスなどによる市場競争力強化に努めています。その鍵を握るEDI化率が新Sea−NACCS運用開始後も低迷が続くとなれば、大手船社は新たな対応策を講じることになるでしょう。一部の大手船社は、D/R書類をコストの安い東南アジアのベトナム、フィリピンあるいは中国などの海外拠点にファックスまたはイメージ情報として伝送し、そこで入力されたデータを利用してコンピュータB/Lを作成する仕組みを構築しています。
この方式でも、人手による入力ですからコストと時間的なロスが避けられませんので効率化にも限度があります。最終的には、川上から川下へEDIデータとしてやり取りする方策を模索するでしょう。そこで考えられるのが、荷主と船社間の直接EDIとなります。荷主が持ち合わせていないデータについては、荷主が海貨業者または港運事業者にデータ提供を要求し、完全なデータを船社に伝送することになるかも知れません。いわゆる、情報フローの中抜き現象です。こうなると、海貨業界、あるいは港運事業者は物流情報を含む総合的な調整役、オルガナイザーの役割(機能)を失うことになり兼ねません。
他方、船舶代理店業界に問題が内在しています。 一般的に大手を除く外船社は総代理店を介して、港ごとにサブエージェントを置いてサービスを行っています。殆どの船舶代理店は港湾運送事業者が兼業しており、大手船社のようにコンピュータB/L作成システムを持っていません。船舶代理店は、代理店手数料の収入が少なくて、とても情報化、EDI化に対応できる投資余力がない事業者が多い。それに加えて、外船社の本社システムへマニュフェストデータを伝達するために、別途に本社と直接接続された端末機に入力しているか、書類で郵送しているという代理店が多い。発展途上国の外船社や国営船社の中には、情報化対応が遅れていたり、B/Lなどの書式を国連の統一仕様に準拠せず、独自フォームを採用している船社が多く、船舶代理店の情報化促進を妨げる要因となっています。
従って、EDI促進のためにはこの辺の情報化投資コスト、業務システム、そして海外本社とのデータ交換という3つのハードルをクリアして、多くの船舶代理店にEDIに参加してもらう必要があります。