V. 船会社から見た電子商取引の現状と促進のための今後の課題
1. 電子商取引の現状:
1.1 電子商取引の現状:
電子商取引が話題となってから、既にかなりの時が流れました。
しかし、電子商取引は、船会社の業界で見る限り、特筆するに足る程、拡大したとはとても言い難いと言うのが現状ではないでしょうか?
その原因は、何処に有るのか?
1.2 利用拡大が進まない理由:
取引の現場で観察していると、電子商取引の利用が余り進まない理由は、決して単に“未知のものに対する漠然とした不安”という様な情緒的なものだけでは無いということに気がつきます。
(実は、「技術的・法的基盤の整備状況に対する不信」と「情報不足」が根底に有るのですが、)取引当事者としては、極めて実際的・合理的な判断の結果として、電子商取引を敬遠していることが多いのです。
何故なら、実際に取引する当事者にとって、安心して、積極的に電子商取引に取り組む為には、電子商取引に付随する
−(電子的情報の交換に係わる)“技術的基盤”の理解に加え、
−“法的・契約的基盤”の理解と、
−更には、そこに生ずる“リスクの分析”、そして、(もし必要であれば、)付保することによって、その“リスクをヘッジする方法の検討”
などが必要であり、その為の技術的・法的知識や情報に自信が持てない状況では、逡巡してしまうのも至極無理からぬことだからです。
例えば、電子商取引の為の契約書の中に、
「当事者は、使用するsecurityのレベルが電子取引にとって適切なものであることを保証しなければならない。」
などという条項を見出すと、いかにビジネス自体に就いて詳しい知識と経験を持つ者でも、技術的基盤に対する知識に欠ける場合、困惑してしまうという訳です。
また、電子商取引上の行為の法的効果に就いて、たとえ「電子取引のために作成された契約の仕組みが、従来の紙の取引と同等の効果を保証しているのだ!」と言われても、実際には必ず何処かに差異が有りますから、その結果、リスクがどの様に変化し、その変化したリスクをどの様にヘッジすべきかに就いて考える必要が有り、その点に就いて不安があると電子商取引に踏み切るのに二の足を踏んでしまうことも有るでしょう。
従って、電子商取引がより広く活用される様になる為には、「何も問題は無い。従来の紙に基く取引と同じだ。」という類の安易な説明を避け、如何なる課題が存在し、その課題には如何なる対応策が有り、そして各対応策の結果、従来の紙に基く取引と如何なる差異が生じるのかを出来るだけ分り易く整理し、より包括的で、User-friendlyな情報を提供することが必須であると痛感します。