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7. 現状及び今後の発展(TEDI事例)
本章では、貿易手続き電子化動向の、現時点での最新状況及び今後の発展の方向性について触れます。これも、TEDIの状況を具体的事例として、説明します。
7.1 TEDI商用開始
前述した、TEDI実地検証完了した2000年9月以降の商用開始までの過程を簡単に説明します。まず、TEDI全体の運営母体として、昨年11月14日に、TEDI CLUBを設立させました。このTEDI CLUBの基で、TEDIの実用化に必要な準備を行ってきました。
 
具体的な準備活動としては、まず、システムの第一次改善を行いました。これは、実地検証時の開発システム基盤の上に、実用化に際して必要なシステム改変を行い、より使い勝手のよいシステムで実用化をスタートさせようという意図があり、2001年5月にそのリリースを行いました。そして、ユーザー検証も実施し、処理機能向上を確認しました。
 
また、TEDIを動かしていくのに必要な諸機関の設立を行ってきました。つまり、前述した、RSP事業会社の(株)日本電子貿易サービス、そして、ASP事業会社のテディ・アドバンスト・ネットワーク(株)です。
 
そして、2001年11月にTEDIとしての実運用開始がなされました。まずは、これまでTEDI実用化を推進してきた企業の内の、三菱商事、住友商事、富士通が自社内の貿易取引案件について、実利用を開始したものです。三菱商事においては、海外荷主、銀行、船社を含むTrade Chain全体をカバーする案件を実施、一方、住友商事では、荷主と海貨業者との間での特化した案件を実施、そして、富士通では、社内システムとの連携を行っての実施と、それぞれに特徴をもつ案件で、実用をスタートさせています。これらの実用から開始して、各社対象案件を増やし、実績を積み上げて、2002年4月以降本格的に貿易業界全体にTEDIの利用促進を図ることになっています。
7.2 アジア各国ネットワーク連携
TEDIにおいて、今後の有望視される発展の方向性として、アジア各国ネットワーク連携があるので、それを取り上げます。これには、具体的には、2つの動向があります。ひとつは、Pan Asian E-Commerce Allianceについて、そして、もうひとつが、経済産業省支援事業としてのアジア連携実証実験プロジェクトです。
 
7.2.1 Pan Asian E-Commerce Alliance
現時点で、アジアの中で、国内のネットワークが発達している国がいくつかあります。それらの国のネットワーク企業が、国をこえて共同して国際ネットワーク化を図ろう、という意図で、Pan Asian E-Commerce Alliance(通称PAA)という、同盟を組んでいます。このAllianceに参加している国、ネットワーク企業とは、韓国(KT-NET)、台湾(TRADE-VAN)、香港(Trade-LINK)、シンガポール(TradeNet)そして、中国(Infoshare)です。
 
これらの国の多くのネットワーク企業は、国内のネットワークをほぼ纏め上げ、すでにONE-STOP-SHOP化が実現している、あるいは、実現途上にあり、その意味で一部に日本より進んでいる部分がある国です。彼らの次なるターゲットが、この国際連携なのです。また、各国のネットワーク企業で特徴的なのは、当初は政府手続きシステムとの連携を独占的に運営し、ある程度システム化が普及した段階で、政府はその独占的運営権を廃し、他企業の新規参入を促し、サービス提供の自由競争を実現させつつある点です。従い、前述の各ネットワーク企業は次なる経営戦略的観点からも、この国際ネットワーク化を促進させようとしており、その点で、Allianceの各ネットワーク企業は一致した方向性を持っています。
 
そのAllianceにTEDIも、定例ミーティングに参加しており、今後、具体的な国際連携のアクションに参加する方向となっています。従来は、TEDIに事業会社がなかったために、オブザーバーとして参加していましたが、ようやく実運用の事業会社が設立されたため、今後正規会員として、行動することになります。今後、各国ネットワーク間で、ebXMLを利用しての相互連携の実証実験を行うことになっています。
 
7.2.2 対アジア各国連携実証実験プロジェクト
TEDIとアジア各国の対政府手続システムと連携をさせようという実地検証プロジェクトが経済産業省の支援を得て実施されることになっています。
 
まず、2001年度は、韓国のKT-NET、及び、台湾のTRADE-VANを相手とした連携実験が行われます。この両国ともに、連携には非常に熱心であり、今回の連携実験を、次の実用化に繋げようとの、強い期待を持っています。確かに、実験の後に、実用化のステップに移行する際には、実験環境と違い、法的、技術的な課題を克服し、また、実験において判明した問題点の対応をした上で、着実に進まねばならない、というハードルがあるのは事実ですが、双方にとっての有効性が確認できれば、そして、双方の国が誠実にことにあたれば、実用までの道のりは長くはないと考えられます。政府としても、アジアに対しては日本の貢献の重要性を考慮しており、今後もアジア各国への連携展開を継続することが期待されています。
 
7.2.3 海外ネットワークとの連携の意義
このような、ネットワーク間同士とが連携されますと、結果として、一方のネットワークのユーザーはそのまま、連携先のネットワークのユーザーになり、お互いの相乗効果が生まれます。つまり、それぞれのネットワークのユーザーを増やすことが、結果として、相手のネットワークのユーザーを間接的に増やすことになります。従い、相互に利用ユーザーが一挙に増えるわけで、貿易手続き電子化の普及が飛躍的に促進される効果があります。








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