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1.序 論
1.1 信用は電子商取引の鍵である。
 電子商取引は、経済や仕事に対して、また、企業と各産業分野の間、企業間、各業界内の新しいサービス及び新しい形態の取引関係の開発、そして、とりわけ消費者に対しても重要な機会を提供するものである。現在、多くの企業及び消費者は、例えば、インターネット上で電子的にビジネスを行うことに躊躇しているようである。その大きな理由の一つは、システム、取引相手の企業(これは、多くの場合に、知られていない)及び法的保護について十分な信用がないことである。
 
 そこで、電子商取引関係における信用の構築が、多くの関係者に要望されている。すなわち、消費者間のみならず、また業界及び政府の関係者間における信用の構築である。
 
1.2 信用を構築するための文書
 優れた国際的な法的インフラストラクチャーは、法的な問題と技術的な問題の相互関連性を確保し、それにより、とりわけ法的セキュリティの創造を可能にする。EU域内では、電子商取引の特定分野に関する指令(まだ草案であるが)という方法によって、調和のとれたインフラストラクチャーを構築する作業が進行中である。
 
 しかし、オランダには極めて適切な法的枠組みがすでに全国レベルで存在していてる。電子ハイウェーのための制定法に関する白書(the white Paper on Legislation for the Electronic Highway)は、概略すると、オランダの立法システムが電子商取引を支援するために十分な体制を備えていることを確認している。また、この白書は、自己規制が重要な役割をもつことを示している。
 
 特定の条件に従って、急速に変化する世界で、自己規制は、現行の特定法を補足し、また、時には、制定法の代替物として役に立つ有効なメカニズムである。同時に、―「オフライン世界」におけるように―サプライヤー(ビジネス社会)は、それ自体が信用を創造するために著しい努力をするという重要な役割をもっている。これを行う一つの方法は、サプライヤーが取引慣行規約(code of practice)に従うことを明示することである。このような取引慣行は、例えば、制定法で規定することができるけれども、また、行動規範または政策声明書の承認によって示すことも可能である。
 
 究極的に、自己規制は、制定法と結合して、事実上の信用を創造できる。行動規範に基づいたEコマース・ビジネスでは、顧客もこの行動規範に従うことが要求される。行動規範に基づく標準化が一般に容認されるものとなり、法により執行可能なものになることを妨げることはできない。
 
1.3 枠組み
 制定法の補足として、ECP.NLのモデル行動規範は、Eコマースにおける信用強化を目的に考えられた行動規範の主要項目からなる一般的枠組みを提供する。同時に、このモデルは、行動規範を起草する際に、ブロックの組み立てに役立つと思われる「ひな型条項」を提案している。
 
 ECP.NLのモデル行動規範は、これが一般的な性質なので、幅広く社会の各分野や業界において(技術から独立した)行動規範を作成するための出発点に適している。このような性質ゆえに、このモデル行動規範は、企業間または企業対消費者間の電子商取引のための一種のチェックリストと看做すことができるし、また、政府もこれを使用することができる。このモデル行動規範は、(慣習)法に従い、かつ、実務に焦点を合わせて起草された。
 
1.4 諸原則
 前項に述べたように、このモデル行動規範の目的は、オフラインに適用されるものは何でも、オンラインにも適用されなければならないというコンセプトに基づいて、信用を開発することである。特定の行動規範に挿入される条項の配列方式に、以下の諸原則が適用される。
 
―信頼性(reliability):パートナーは、提供された情報の正確性と的確性を信頼できるか?コミュニケーションシステム及び取引システムは信頼できるか?電子的に締結された債務が実際に適切に履行されると確信できるだろうか?電子商取引の信頼性は、参加者自身が信頼できる情報・通信システムにどれだけ責任をとるかということに左右される。さらに、この原則は、信頼できる企業及び交換される情報の保護によって支持される。
―透明性(transparency):「言ったことは、必ず行うこと」。すべての参加者に対して、これが明確で、理解され、論理的であり、そして、可能ならば、誰と何について、どのような取引条件で取引しており、その目的のためにどのような情報が関連しているのか、または使用されているのか、といったことが証明できなければならない。
―秘密性(confidentiality)及びプライバシー(privacy):当事者は、秘密情報が実際に秘密に取り扱われる確実性について明確な基準を設けなければならない。プライバシーに関する権利が確保されなければならない。
 
1.5 モデル行動規範の構造
 本モデル規範は、行動規範の主要項目を述べることから始まっている。これは、モデル規範が行動規範に含まれる全ての項目の完全なリストを記載していることを意味するものではない。
 
 例えば、規則は、現存する業界別または専門別の行動規範または取引慣行規約の形ですでに存在しており、これは、また、Eコマースにも関連している。このような場合、現存の規則をEコマースの行動規範に追加することが考えられる。
 
 さらに、モデル行動規範は、受発信の時点、電子的通信における過失の結果に対する当事者の責任といった、多くの電子商取引に関する国内法的側面を無視している。
 
 本モデル行動規範に規定されている優先的項目は、これらの相互関係及び配列方法の双方から、Eコマースの当事者が、他の当事者との間に十分な信用を創出するために、自分たち自身が最小限守らなければならないような一組の完全な規則であると広く考えられる。
 
ECP.NLは、一組の完全な優先的項目が行動規範に挿入されることを推奨する。
 
 優先的項目に加えて、本モデル行動規範には、また、個々の行動規範を起草する際に、ブロックを組み立てるために使用できるひな型条項(specimen provisions)が沢山含まれている。それぞれのひな型条項は、それ自体がモデルであり、起草者自身の状況に応じて、使用また修正することができる。
 
 「執行(enforcement)」という優先的項目に関するひな型条項は設けなかった。けれども、幾つかの可能性のある執行メカニズムについて、解説を述べた。取引関係者は、個々の行動規範を起草するときに、適切な方法で自分たち自身のために優先的項目を規定すべきである。専門グループまたは関連業界内における紛争解決メカニズム、その他の適切な執行メカニズムを使用することも、魅力ある選択方法である。
 
 終わりに、多くの項目に解説を付けた。22
22以下の「行動規範のための枠組み」では、囲みの中に優先的項目を示し、その後に「ひな型条項」および「解説」を掲げています。個別に行動規範を作成するために、英文(原文)が参考になると考えられるので、本稿では、まず、英文を、そしてその後に訳文を掲げることにしました。








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