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2−3 タンザニア連合共和国
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 タンザニア連合共和国は、東アフリカのタンガニーカ(1961年独立)とその沖合に位置するザンジバル(1963年独立)が1964年に合併して成立した。同国はアフリカ大陸の東部に位置し、北部はウガンダ及びケニア、西部はコンゴ(ザイール)、ルワンダ及びブルンジ、南部はザンビア、マラウィ及びモザンビークとそれぞれ国境を接している。首都は内陸部のドドマであるが、事実上の首都はインド洋に面するダルエスサラームである。
 タンザニアは、独立以降、政府の強力な指導により内政は安定している。1967年のアルーシャ宣言に基づくアフリカ型社会主義建設を国家目標とし、各種資産の国有化、農村部の生産共同体化等を行ったが成功せず、最近では経済の自由化を推進し、一定の成果を上げている。一人当たりのGNPは210USドルと低く、後発開発途上国(LLDC)に分類される。
 タンザニアに対しては、1983年以降円借款の供与は行っておらず、同国への援助はもっぱら一般無償、水産無償が中心となっている。
 海事関係の協力については、主として、ザンジバル海運公社(Shipping Corporation of Zanzibar)に対して行われてきた。ザンジバル海運公社は、1978年に設立された 100%政府出資の公社であり、船員を含めて約200人の人員を擁している。
保有船舶は、貨客船「MAENDELEO」、「MAPINDUZI」とタンカー「UKOMBOZI」、「UHURU」の4隻である。このうち、「MAENDELEO」と「UKOMBOZI」の2隻が1979年度の円借款による建造(完成は1980年)である。1970年代にはザンジバルはクローブ(スパイスの一種)の輸出で資金が豊かであったため、他の2隻は自己資金による建造であった。日本からの円借款による支援と並行して運航面での指導のための技術協力として、JICA専門家が派遣され、海運公社の船舶運航に大きく寄与してきた。
 「M/V MAENDELEO(マエンデレーオ)」は、長さ70.0m、幅12.2m、喫水4.39m、総トン数1430. 95トンの貨客船(旅客定員450名)である。本船は1979年の円借款によって1980年に常石造船(神原海洋開発)において建造された貨客船である。当初はザンジバルとダルエスサラーム間において貨物と旅客を運ぶことができる限られた船として重要な役割を果たしており、前述のJICA専門家がいたために、順調に運航していた。その後、民間海運企業による高速船の運航が始まり、次第にその役割が変化し、12ノットしか出ない本船は貨物輸送主体に変わってきた。供与時点からのこのような環境の変化により、旅客船としては他の高速船との競争力がなく、次第にその役割を終えつつあり、貨物船のみとして運航するには運航コストがかかるというハンディを背負うこととなり、採算の採れる運航が困難になってきていた。1997年9月から2000年12月までは裸傭船貸しされていたが、現在は契約を解除してザンジバル港沖合に係留されたままとなっている。海運公社としては、傭船者が当然行うべき船体の維持管理に不備があるとして、貸し出し時の状態に復旧するよう要求し、現在係争中である。今の段階では海洋放置船とは言えないが、ザンジバル港の停泊地に長期にわたって係留されており、今後の動向を注視する必要がある。
 また、「UHURU」は、1988年建造のタンカーで、海運公社所有船舶の中で唯一日本建造でない船(オランダにて建造)である。1995年から稼動しておらず、現在はザンジバル港北側にある入り江に放置されたままとなっており、事実上廃船状態となっている。これも海洋放置船舶の一例と言える。
 従って、海運公社の4隻の船舶の中で、実質的に稼動しているのは2隻のみという状態である。
 タンザニア第一の都市であり、中心港となるのはダルエスサラームである。ダルエスサラーム港では約15年前に世銀の融資でコンテナターミナルの整備がなされ、4年前にはオランダの援助で湾口の拡張、航路の掘削と湾口のフェリーターミナル(完成は2000年)が実施された。タンザニア港湾当局(Tanzania Harbour Authority)は民営化の過程にあり、現在はコンテナサービス部門が民間会社となっている。
 このダルエスサラームの湾もまた海洋放置船の観察スポットとなっている。以前は多くの放置船が湾内に存在したそうであるが、ここ1年の間にかなりの数が撤去された模様である。確かに、貨物船、漁船、フェリーボート、ザンジバルとを結ぶ高速客船などが行き交う湾内なので、放置船はかなり邪魔になっていたであろうと思われる。それでも依然として湾内には3〜4隻の放置船が見られた。うち1隻は船体のほとんどが水中に没しており、他の船舶の航行上障害になり、危険ではないかと思われる。
 この他の例としては、湾に面してダルエスサラーム船員学校(DMI)の敷地があるが、このすぐ横の岸壁に完全に横転している貨物船があった。

海洋放置船舶の観察スポット
(タンザニア連合共和国)
 
● ザンジバル港北側の入り江
● ダルエスサラーム湾内








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