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2−2 ナミビア共和国
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 ナミビア共和国は、アフリカ大陸南西部、南緯18度から29度に位置し、南太平洋に面している。海岸線は約1,500kmであるが、南半分は世界最古の砂漠と言われているナミブ砂漠、北半分はスケルトンコースト(一部は国立公園)で占められており、中央部に港湾都市ウォルビスベイがある。ナミビア沿岸にはベンゲラ潮流(Benguela Current System)という特殊な潮流があり、豊富なプランクトンを産出している。これは、海底を陸側に向けて流れる冷たく栄養分の高い海水がナミビア沿岸で海水表面に浮上し、沖に向かって海表を流れるもので、沖合いで暖かい海流とぶつかることにより、良好な漁場を形成している。このような例は他に北西アフリカ(モロッコ、モーリタニア沖)、カリフォルニア沖、ペルー沖でも見られる。
 ナミビアと日本とは漁業を通じた交流があり、日本のODAも水産無償資金協力が中心である。ナミビアの漁業資源省が所有・運航している漁業資源調査船「Welwitchia(ウェルウィッチア)」は、日本からナミビアへの無償資金協力(水産無償)案件として1994年に供与されたものである。建造造船所は、三保造船所である。(起工1993年8月25日、進水同年11月26日、竣工1994年1月3 1日)
 同船は、ナミビアの漁業資源の実態を把握し、資源の保全を行うための国の計画策定に必要なデータを収集している。主要寸法は、全長47.28m、垂線間長41.70m、幅8.30m、深さ4.00m、満載喫水3.25m、載貨重量283トン、総トン数490トン、満載航海速力11.5ノットである。
 海岸北部の「スケルトンコースト」は、一部は国立公園として人の出入りを厳しく管理されている地域で、人工の構造物はほとんどない。海岸と土漠が背中合わせとなった不思議な光景が続く一帯である。昔からこの地域で難破したり、座礁したりする船が多く、「骸骨海岸」という名もそこから来ているようである。ここは数百kmにもわたって避難港がなく、運良く海岸に乗り上げることができたとしてもそこで生存することも困難という極めて危険な地域であった。
 事前の調査で、この地域には、以下の船舶が難破し、放置されているという情報を入手したため、現地で確認することとした。
 「Winston」(1970)
 「South West Seal」(1976)
 「Atlantic Pride」(不明)
 「Luanda」(1969)
 「Montrose II」(1973)
 「Henrietta」(1968)
 「Atlantic」(1977)
 
 しかし、実際に現地を訪れて見ると、そもそも道路のないような地域であることから、これらすべての難破船の現場にたどり着くことができず(標識が整備されているわけではない)、現場で確認できたのは、「Winston」と「South West Seal」の2隻のみであった。考えてみると、難破船が集中しているとは言え、数十kmから数百kmもの離れた中で点在しているだけであり、大きな船体といえども、もともと広大な土地の中ではほんの砂粒のような存在でしかないのである。視界の中に必ず人工物が入るような日本の感覚ではなかなか理解しにくいが、アフリカでは放置船舶のような問題が大きな社会問題とならない背景がこのようなところからもよく分かる。
 因みに、ナミビアでは、宿泊施設、公共交通機関が発達していないことから、観光産業は未成熟であるものの、難破船は単なる荒涼とした風景にアクセントを添えるものとして、むしろ観光スポットとして資源的な扱いをされている。(今回の難破船に関する情報のほとんどは観光ガイドブックから得られている。)また、多くの難破船は、芸術的な写真の被写体として使われているし、絵画の主題に取り入れられることも多い。
 
海洋放置船舶の観察スポット
(ナミビア共和国)
 
● スケルトンコースト
(ナミビアの場合、港付近での放置船は見られないが、基本的に海難の起こりうる海岸線には放置船が多数あるものと思われる。)








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