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参考
航海・通信システムメーカー訪問調査報告書
1. Kelvin Hughes Limited (Hainault, UK)訪問
・訪問日
 2001年4月5日(木) 14:00〜16:30
・面談者
 Barry Jones, Area Sales Manager(Far East)
・訪問者
 近 藤 敏 和, Director, Japan Ship Centre(JETRO)
 Richard Pettit, Researcher, Japan Ship Centre(JETRO)
・面談の概要
 訪問に先立ち、Mr. Barry Jonesから訪問時のアジェンダを送って欲しい旨の依頼があったため、当方より希望アジェンダ(会社概要(組織、従業員数、販売・利益実績、製品及びサービス、日本との関係、研究開発)、販売・研究開発に関する企業戦略(航海機器・通信機器業界の最近のトレンド、会社戦略))を連絡したところ、販売・利益実績、研究開発、業界の最近のトレンド、今後の企業戦略については情報提供できない旨の連絡を受けた。(これは、Kelvin Hughes社(以下、「K社」という。)が日本市場で期待しているほどの成果が達成できていないことが背景にあるものと思われた。)
 このため、Mr. Jonesからは限定された情報しか得られず、特に今後の業界の動向については残念ながら情報は得られなかった。
 先方から得た情報の概要は以下のとおり。
(1) 組織
 本年4月、K社の親会社のSmiths IndustriesはTI Groupと合併し、Smiths Group(年間売り上げUS$4.3百万)を設立したが、これはK社の組織には何ら影響を及ぼしていない(従来どおり航空部門のNaval and Marine部門。旧Smiths Industriesと旧TI Group間の横断的な情報交換はなされているが、その程度である。)
K社の海外子会社は、デンマーク、オランダ、シンガポール、上海。上海事務所は2年前に設立。
 海外のサービスエージェントは100カ所程度。
(2) 従業員数
 K社の従業員数は、400人。うち、R&D関係者は、50人程度。サービスエンジニアは3人。 
(3) 製品
a) VDR(Voyage data Recorder)
 製品はほぼ完成(製品名:NDR-2002(カタログ入手))。販売実績はまだないが、近々販売予定であり、SOLAS条約による強制化が開始される2002年7月までは需要に十分対応できる体制になっている。
b) AIS( Automatic Identification System)
 K社としては製造予定はなく、顧客からの要請があれば製造しているメーカーから調達する。(AISもSOLAS条約により2002年7月から強制化が開始される)
c) ninas 9000( Nucleus Integrated Navigation Systems)
 4〜5年前から販売しており、既に数百システムの販売実績がある。(ロイズリスト(2000年8月24日付け)にStolt Nielsenのケミカルタンカー(5,200DWTクラス)3隻に搭載予定との記事あり。)
d) manta( Management Automation Navigation Telecommunications Array)
 システムとしての納入実績はなし。ただし、同システムのパーツの一部(フラット・スクリーンと思われる)を納入・搭載した実績はある。ロイズリスト(1999年11月25日付け)に掲載されたプライベート・ヨットへの同システム搭載プロジェクトについては、現在進行中とのこと(ロイズリストによれば同ヨットのデリバリーは2003年)。
e) ECDIS( Electronic Chart Display and Information System)
 かなり以前に開発したものであり、多くの搭載実績がある。
 電子海図の更新方法は、CDと衛星を利用する方法の二とおり。海図は、電子海図を含め、1週間に1度の頻度で更新している。
f) システム製品(Integrated Bridge System等)
 IBS等のシステムを提供する場合は、Autopilot等K社が製造していないものは他社から購入してシステムを完成させて提供するが、その場合は、船主、造船所に対するシステムの責任はK社が負う。提供したシステムのアフターサービスもK社が責任を持って実施する。
 「システムを提供する場合、購買機器に関する特定の購買先はあるのか?」との当方の問いに対して、「基本的には顧客が決める問題であり、K社として特定の購買先は持っておらず、購買先はプロジェクト毎に決定する。」とのことであった。(なお、K社はISO9001の認証を取得していることから、購買先の評価等を実施しており、品質管理上適当と考える購買先のリスト等を持っているものと推測される。)
 なお、K社にあったデモンストレーション用のninas 9000のAutopilotはデンマークメーカー(ECIか?)製であった。
 また、日本の横河電子機器(株)の製品もよく購入しているとのこと。
g) その他
 "Ergo Pod"(K社によれば"Trackerball"に並ぶ同社の革新的技術)の評判について聞いたところ、ブリッジに肘掛けのある操船椅子がある船舶には非常に普及してきているとのことであった。
(4)日本との関係
 ここ2年は日本の造船所への納入実績はなく、日本への販売実績は減少している。日本市場への販売は、海外技術KK(本社横浜、支店神戸)を通じて実施している。海外技術KKは、日本国内でのアフターサービスも実施しており、スペアパーツも持ちサービスエンジニアも抱えている。なお、K社のシンガポール子会社は、販売、サービスのエリアがシンガポールとマレーシアのみであり、日本を対象にはしていないとのこと。
(5)工場見学での印象
 面談の後、研究開発部門、工場、試験サイト、海図・出版部門等の見学を行った。研究開発部門には30人〜50人程度の人員がおり、VDR"NDR-2002"が同部門にあり、開発の最終段階を迎えている印象を受けた。工場は組立作業が中心であるが、ほとんどの作業が手作業で実施されていた。
2.  Litton Marine Systems UK(New Malden, UK)訪問
・訪問日時
 2001年5月14日(月) 14:30〜17:00
・面談者
 J. Nolasco DaCunha, Vice President & General Manager, Commercial Business
 A. L. White, Assistant Director, Head of Commercial Sales
 Adrian J. Sadler, Senior Newbuilding Manager, Asia
・訪問者
 近 藤 敏 和, Director, Japan Ship Centre(JETRO)
 Richard Pettit, Researcher, Japan Ship Centre(JETRO)
・面談の概要
 先方から得た情報の概要は以下のとおり。
(1)最近の動向全般
 Litton Marine Systems(以下、「LMS」という。)は、1997年2月、航海機器メーカーSperry Marine(米国)、Decca Marine(英国)及びC.Plath(独)が合併して誕生した。合併して4年を過ぎたが、3社の統合はほぼ終了した段階である。3社の企業方針の違い、市場の違い(Deccaは製品の60-70%が現存船への追加導入(retrofit)である一方、Sperryは新造船に焦点を当てており現存船への追加導入はほとんどない。)等があったが、ようやく融合してきた(世界中の事務所間にイントラネットを持っている)。現在は、米国でシステムを、英国でレーダー、オートメーションを、ドイツでオートパイロット、ジャイロを開発・製造し、販売部門はLMS全ての製品を取り扱う。LMSの最大の強みは、グループ内で全ての航海計器を製造しているため、全ての製品に加え航海計器システムを提供できることである。これに加え、オートメーションシステムやステアリングシステム等のシステムも提供できる。最近は、船主、造船所共にエンジニアを削減しているため、1社との契約を望んでおり、舶用機器のパッケージ化の要請が高まってきている。LMSはこの要請に応えることが出来る。(Mr. Whiteは、LMSは通信機器を製造していないものの、協力関係を有するSP-Radio(デンマーク)の製品を顧客に提供しており、航海計器、通信機器全てを提供できることがLMSの強みであると強調していた。)最近の売上高は、年間2億5千万US$。うち、50%が商船部門、50%が軍事部門である。
 なお、LMSの親会社であるLitton Industry(米国)は本年4月にNorthrop Grumman(米国)に買収されたが、「今のところLMSにその影響は及んでいない。売上高ではGrummanが年間200億US$、LMSは年間2億5千万US$であり、近々大きな影響があるとは思われないが、GrummanはRolls-Royceと協力関係にあることから、舶用部門であるLMSに何らかの影響が出てくることも考えられる。」とのことであった。
(2) 従業員数
 全世界で1400人。UKは250人。
(3) 主要製品
a)高速船用の航海・通信システム、機器監視・警報・制御システム
 新技術が必要な分野であり、重要分野の一つとしてとらえ、IBS(Integrated Bridge System)、レーダー、ECDIS(Electronic Chart Display and Information System)等の航海・通信システムや機器監視・警報・制御システム"ISIS 2500"を開発・提供している。
b)機器監視・警報・制御システム
 ISIS 2500を米国のソフト会社(テキサス・インストルメント社)と協力して開発した(エンジンメーカーとは特段協力は行わなかったとのこと)。このシステムの特徴は、単なる監視システムではなく、これに管理システムを加えたことである。このシステムは日本製のエンジンを含め多くの機器に採用できる。三菱下関や韓国造船所にも供給実績がある。また、このシステムにより機器状態の情報を衛星を通じて陸上に送ることもできる。
c)VDR(Voyage Data Recorder)
 現在DNVの検査を受検中。
d)フィンスタビライザー
 フィンスタビライザー"ジャイロフィン"は日本でも50%のシェアを持つ。韓国、デンマーク、中国、シンガポール等へも供給している。2年前にデジタルコントローラーを開発した。
e)ECDIS
 電子海図の更新方法はCDと衛星を利用する方法の2つがある。
(4) アフターセールスサービス
 全世界に450のサービスステーションがある。アフターセールスサービスは、USA、欧州、アジアの3地域に分け、各地域のセンターが各地域のサービスをコントロールしている。顧客がLMSに直接連絡するシステムをとっている。サービスステーションのエンジニアはLMSで教育するシステムを取っている。
オランダにスペアパーツの大きな倉庫があるが、コモンパーツはシンガポール、東京、韓国等にもストックしている。24時間以内にパーツを供給できる体制を取っている。
(5) 日本等との関係
 日本の造船所(MHI、IHI、三井等)とはよい関係を維持している。日本造船所向けの製品はほとんどが欧州船主の船舶向けであり、日本船主の船舶向けはない。日本には東京に事務所があり、マネージャーやエンジニアがいる。最近トキメックと協力協定を締結した。トキメックは厳しい状況にあるが、この協定にもとづき、日本でのシェアを拡大したい。なお、この協定は相互協定であり、Littonはトキメックの製品を欧米で販売することとなる。
 なお、韓国には釜山に事務所があるほか代理店もある。韓国では50〜60の新造船のプロジェクトがある。中国には上海に事務所がある。
(6) その他
 近年、製品のライフサイクルが短くなってきており、R&Dの費用回収が非常に難しくなってきた。航海機器・通信機器メーカーのグループ化の傾向は、競争の激化に加え、このような問題も背景にある。STN Atlasも立派な会社であるが損失を出した。Raytheonも同じ。
・所 感
 LMSは自社の強みを航海機器・通信機器の全て並びにそれらのシステムを提供できること、いわゆるOne-Stop-Shopであることしている。これを実現するために4年前に航海機器メーカーSperry Marine(米国)、Decca Marine(英国)及びC.Plath(独)を合併させてLMSを設立し、この4年間で事業システム、組織の改革等を実施してきた。LMSのこの特徴は顧客である船主、造船所のニーズに合致したものであり、強い競争力を維持できる会社であるとの印象を受けた。
3. STN ATLAS Marine Electronics GmbH(Hamburg, Germany)訪問
・訪問日時
 2001年7月10日(火) 9:30〜12:00
・面談者
 Gunter R. Krombach, Vice President Marketing, Sals & Service Co-ordination
・訪問者
 近 藤 敏 和, Director, Japan Ship Centre(JETRO)
 Richard Pettit, Researcher, Japan Ship Centre(JETRO)
・訪問の概要
 Mr. Krombachから会社の組織、活動等について説明を受けた後、質疑、意見交換を行った。その後、同社のWedel(ハンブルグの西部(ハンブルグ中心部から約30km))にある工場を見学した。なお、Mr. Krombachは舶用電子機器関連会社の国際組織CIRM(Comite International Radio-Maritime)のPresidentである。
 先方から得た情報の概要は以下のとおり。
(1)全般(会社の組織、歴史、売り上げ、従業員数等については別添7参照)
 SAM Electronics(以下、「S社」という。)の強みは、電気・電子システムを一社で供給できる唯一の会社であること( SAM Electronics is only one company in the world which can supply systems out of one hand.)。個々の機器では他のメーカーとそれほど変わらない(個々の機器ではJRCや古野にはかなわない)が、統合システムを提供できるのが強み。Hydrographyの分野でも同様で、ソナー等個々の機器ではそれほど強くないが、システムを提供できることが強みである。イニシャルコストは他社に比べ高いこともあるが、システムとしての競争力があり、シングルソースサプライヤーなので、ライフサイクルコストとしては安くなる。
(2)製品等(製品及び関係プロジェクトの概要については別添7参照)
a)Energy & Drives
(ア) 軸発電システム
 冷凍コンテナの増大に伴い、コンテナ船への搭載が増えている。タンカーやケミカルタンカー向けにも搭載が増えている。
(イ) ポッド推進システム(DOLPHIN)
 第一号機が2002年、旅客フェリー"Seven Seas Voyager"(船主Radison Seven Seas)に搭載予定。
b)自動化システム
・ 主機遠隔操縦システムは、MAN B&W等どこのメーカーのエンジンにも適用できる。同システムに関してはライセンスを与えており、三菱はライセンシーになっている。同システムの開発等に関する協力は、AEGと実施している。
c)航海・通信システム
・ NACOS(統合航海システム)は、航海・通信システムでは最もよく売れており、数百の販売実績がある(2000年8月現在では約640)。クルーズ船市場での世界シェアは70%。
・ ジャイロ、オートパイロットは、C-Plath(ドイツ)や横河電子機器(株)等から購入している。(S社は、NACOSではジャイロ、オートパイロットは周辺機器との認識とのこと。)
・ 通信システム、GMDSSは、EuroCom Industries AS(S P Radio(デンマーク)とSkanti(デンマーク)を子会社に持つ)からOEM供給を受けている。
・ 防火システムもOEM供給を受けている。
・ レーダーでは最新シリーズの1000シリーズも販売している。
・ VDR(航海データ記録装置)はNACOSのシステムの一部として開発しており、販売予定。AIS(自動船舶識別システム)もシステムの一部として開発しており、販売予定。これらはスタンドアロンをEuroCom Industries AS(以下、「ECI」という。)で開発している。(S社としては、VDR、AISの個別機器の開発製造は行っていないが、同じグループのECIから購入してシステムに組み込んで販売するものと思われる。)
d)サービス
・ サービス事業としては、保守整備、予備品提供に加え、船体改造も行っている。
・ 全世界150の港で保守・整備が可能。
・ 機器の更新も頻繁にあるので、サービスステーションのレベルアップに力を入れており、サービスエンジニアのトレーニングも実施している。
・ 保守契約については、800隻とフル・メンテナンス契約を結んでいる。システムの高いスタンダードを維持するという技術的な観点から良い方法と考えて導入したが、特にサイプラス船主、ギリシャ船主はメンテナンス費用を低く抑えようとするため、今のところあまりよいビジネスではない。しかし、技術的観点からも重要であり、また船主も経費を固定化したいとのニーズもあることから、将来的にはもっと力を入れていきたい。
(3) 日本との関係
[1] 日本の顧客は日本郵船であり、14隻に製品を搭載している。その他のアジアの主な顧客はHyundai Merchant Marine、Hanjin Shipping及びCOSCO。
[2] アジアで建造される船舶へのシステム搭載は、欧州船主向け船舶がメイン(約70%)。
(4) Wedel工場見学
・ Wedel工場は、S社の主要工場である。同工場の他、Bremen工場(Hydrographic、一部レーダーを製造)、Rostock-Elmenhorst工場(Rostock近郊の造船所向け製品を製造)、Bremerhaven工場(小型船向けの備品を製造)、Wilhelmshaven工場(海軍向け製品製造)がある。
・ 工場見学時、工場内では航海・通信機器システム、配電盤、主機遠隔操縦システム(主機がMakのRORO船向けのシステムを製造)、軸発電システム(韓国で建造中のハパックロイド向けコンテナ船(7000TEU)搭載用システムを製造)等が製造されていたほか、レーダーの整備も行われていた。航海・通信機器システムのところでは、C-Plathのオートパイロットを組み込んだシステムを製造していたが、システムの個別構成機器については、顧客(船主)の要請により、どの様にでも対応する(対応できる)旨の説明があった。
・ 工場の1/3程度のエリアはテストエリアになっており、製品製造過程においてテストを念入りに実施している旨の説明があった。
・ システム搭載時は、ドイツ国内ではS社のエンジニアを派遣している。韓国には13人のエンジニアを常駐させているが、現在約40隻への搭載プロジェクトが進行しており、常駐エンジニアに加え、トレーニングを受けた現地エンジニアも活用している。
・ システム搭載時の問題点としては、造船所がケーブル敷設を行う場合よく問題が生じること。造船所が品質の低いケーブルを使用したり、敷設工事がお粗末だったりすることが多々ある。
(5) その他
・ S社は、1999年にEuroMarine Electronicsの傘下となったが、EuroMarine Electronicsには通信機器メーカーであるSP Radio及びSkantiを子会社に持つEuroCom Industries A/Sも傘下にあり、この組織改革の目的の一つがシステム提供能力の向上と考えられることから、EuroMarine Electronicsの傘下となったことの影響を聞いた。これに対して、Mr. Krombachから、EuroMarine Electronicsの株を50%所有しているS.A. SAIT-STENTO N.V.が所有株を売ろうとしており、その影響でEuroMarine Electronicsは現在のところうまく機能していない旨の回答があった。
・ Mr. Krombachは、業界全体の問題として、「舶用市場は成長しているものの、市場自体はそれほど大きくない。例えば、レーダーは年間需要が2,000から3,000台しかない。舶用メーカーが生き残っていくためにはコンペティター同士がもう少し話し合っていく必要があると考えている。」旨の発言があった。
・所 感
 Mr. Krombachは、CIRMのPresidentでもあり、今回の訪問では、昼食もはさみ、航海・通信機器メーカーの全世界的問題についても話が聞けたことは大きな成果だと思われた。
 S社自体としては、その強みをシステム提供能力の強さとしており、これは同業者のLitton Marine Systemsや分野は違うがRolls-Royceや主要エンジンメーカーMAN B&W Diesel、Wartsila等と共通するものである。ただし、Mr. Krombachの言にあるように、S社としては親会社(S.A. SAIT-STENTO N.V.)の問題もあり、グループ全体としての協力関係の向上はまだ充分に図られていないようであり、S社の今後もグループ内の協力関係の向上に大きく左右されるものと思われる。
4. Kongsberg Maritime Ship Systems AS(Horten, Norway)訪問
・訪問日時
 2001年7月11日(水) 14:00〜16:00
・面談者
 Hans Petter Eriksen, Vice President-Sales, Ship Automation & Control
 Leif Kristian Weum, Vice President-Custom Support, Ship Automation & Control
 Morten Hasas, Vice President-Automation Systems, Ship Automation
・訪問者
 近 藤 敏 和, Director, Japan Ship Centre(JETRO)
 Richard Pettit, Researcher, Japan Ship Centre(JETRO)
・訪問の概要
 会社の組織、活動等について説明を受けた後、質疑、意見交換を行った(会社の概要は別添2参照)。
 先方から得た情報の概要は以下のとおり。
(1)全 般
・ Kongsberg Maritime Ship System AS(以下、「KMSS」という。)は、Kongsberg Maritimeの一傘下会社であり、商船市場を担当している。製品は“システムを作る”という感じ。この他、Kongsberg Maritimeの傘下には、Kongsberg Simrad(オフショア・海洋科学市場を担当)とSimrad(Yachting/Fishery市場を担当)がある。Kongsberg Simradの製品は“大型エンジニアシステム”という感じであり、Simradの製品は“消費者向け電子機器”という感じ。 Kongsberg Simradの世界シェアは、ダイナミックポジショニングシステムは60−70%、オフショアは40%程度。
・ KMSSの目指すところは、センサーから完全な統合船舶システムまでの一貫したパッケージを提供することである。これは、将来大きな需要があると考えている。2000年夏にNaviaからAutronicaを買収したが、この買収により、今まで弱かったセンサー部門と、カーゴ部門を強化し、完全なパッケージの提供が可能となった。KMSSの強みは完全なパッケージシステムを提供できる唯一の会社であることである。KMSSと同じ機器や部分的なシステムを提供できる会社はあるが、フルパッケージ、フルシステムを提供できるところはない。将来的にはソフトウェアのライセンスを売りたい。多くのメーカーから機器を購入してシステムを作ると、故障時にメーカー間で責任の押しつけ合いになることが良くあるが、KMSSのようなシングルソースサプライヤーから購入すればそのような問題はないと船主に言っている。
・ Kongsbergグループ(Kongsberg MaritimeとKongsberg Defence & Aerospaceにより構成)の売り上げは10億USドル。うち、Kongsberg Maritimeの売り上げは、6億USドル。
・ KMSS製品の世界シェアは、物にもよるが、シェアが高い物では35−40%、低い物では5−7%程度。
(2)製品等
・ シミュレーターに関しては、世界の船員の2/3はNorcontrolのシミュレーターで教育を受けている。この事実はKongsberg Miritimeの強さの一つでもある。KMSSは港湾に関する世界最大のデータベースを持っており、これがシミュレーターに関する強みになっている。シミュレーターは、小さいものから大きいものまで様々あり、世界中のトレーニングセンターに納入している。
・ 世界各地の多くの港湾に船舶航行監視システムを納入している。この事業はKongsberg Miritimeのコア事業ではないことから、売却し、現在Norcontrol IT(Kongsberg Miritimeが67%の株を所有)が実施している。
・ よく売れている製品は推進制御システム。日本で売れている製品は火災警報システムとタンクゲージ。
・ 推進制御システムに関しては、MAN B&WとWartsilaからはKMSSのシステムが推奨されている。三菱は独自のシステムを持っているため、三菱のエンジンには組み込めない。コンペティターは、ナブコ。
・ AIS(自動船舶識別システム)は、KMSSでは開発していないが、姉妹会社のSimradが開発している。
・ VDR(航海データ記録装置)については、開発が終わり型式承認も取得済みでいつでも販売できる状態。商品名は"Marine Black Box"。これは既に商標登録をしている。
・ IBS(統合ブリッジシステム)については、ジャイロはC-Plath等グループ外から購入し、GMDSSはKongsbergグループ内から購入している。プロセスユニット、レーダープラント、トラックパイロット等IBSのコアとなる機器は自社で製造している。
・ システム搭載実績は、総トン数2,000トン以上の船舶に関しては300隻/年。小さい船も含めれば1,100−1,200隻/年。バルクキャリア、コンテナ船、カーキャリア、各種タンカー、クルーズ船等に搭載。カタマランの高速船への搭載はない。搭載実績は伸びており、競合相手のLyngso、ATLASやSaabのシェアも食っている。
・ アフターセールスサービスに関しては、サービスホットラインがあり、24時間以内に世界中のどこにでも行ける体制になっている。
(3)日本との関係
・ 日本での販売代理店は、Asahi Mechatronics Co. Ltd. (センサー、計測機器)、大洋電機 (自動システム、航海システム) 等。大洋電機は、ハードを作っているので、それと組むことにより日本市場参入を図った。システムそのものだけでの売り込みは、日本市場では困難であった。
・ 日本郵船は最大の顧客(システム納入実績140隻)。商船三井ともプロジェクトがある。
・ 造船所も良い顧客であり、IHI、川重、三菱とはよい関係にある。
・ 大阪湾のLNG陸上タンクのシステムに関し、大阪ガスと共同開発している。
(4)その他
・ 2001年にKongsberg Norcontrol、Kongsberg Norcontrol Simulation及びAutronica(Naviaから買収)の合併によりKMSSが設立されたが、組織の融合状況について訪ねたところ、完全な融合にはまだ数年かかるであろうとのことであった。
・ 「造船・舶用市場はそれほど大きくないことから、もっと合併を進める必要がある。製造者が多すぎる。」旨の発言があった。
・入手資料
1) Kongsberg Maritime Ship Systems - Your supplier of sensors, integrated ship systems and maritime simulators
2) Passenger Vessel Control from Sensors to Systems
3) Gas Tanker Control from Sensors to Systems
4) Chemical Tanker Control from Sensors to Systems
5) Oil Tanker Control from Sensors to Systems
6) Container Vessel Control from Sensors to Systems
7) Ro-Ro Vessel Control from Sensors to Systems
8) Bulk Carrier Control from Sensors to Systems
9) Marine Diesel Engine Control from Sensors to Systems
10) Customer Support Network Services and Spare Parts
11) Maritime Simulation - A Total Concept for Training & Evaluation
12) Annual accounts 2000(preliminary), Kongsberg
13) 2001 1st Quarter Report, Kongsberg
・所 感
 KMSSは、航海機器システム・自動システムのパイオニアであるKongsberg Norcontrol(1965年設立)と同社の姉妹会社Kongsberg Norcontrol Simulation並びにAutronica(Naviaから買収)の合併により誕生した。KMSSの目指すところは、センサーから完全な統合船舶システムまでの一貫したパッケージの提供であり、これはAutronica買収により強化された。また、強力なシミュレーター部門の取り込みによるシナジー効果でさらにパッケージ提供能力の強化が図られるものと見られる。組織の融合にはまだ数年かかるとのことであったが、組織の融合が図られればさらに強力なシステム提供会社になるものと思われる。
5. Consilium Selesmar S.r.l. (Florence, Italy)訪問
・訪問日時
 2002年1月16日(水) 9:00〜11:00
・面談者
 Michele Giamporcaro, Area Sales Manager
・訪問者
 近 藤 敏 和, Director, Japan Ship Centre(JETRO)
 Richard Pettit, Researcher, Japan Ship Centre(JETRO)
・訪問の概要
 Mr. Giamporcaroから会社の組織、活動等について説明を受けた後、質疑、意見交換を行った。
 先方から得た情報の概要は以下のとおり。
(1)歴 史
 1960年、レーダー製造メーカーSeleniaがナポリに設立された。SeleniaはRaytheonとジョイント・ベンチャーを設立し、Selenia製造のレーダーをRaytheonが販売する協力体制を取った。この協力は成功裏に進み、年間1000台のレーダーを販売するまでになった。
 1978年、SeleniaとRaytheonの協力が解消され、1980年、Seleniaは解散した。
 1981年、Seleniaを母体として、Selesmarがフィレンツェの近郊に設立された。
 1984年、Selesmarは高解像度のラスター・スキャニング・ディスプレー・レダーを世界で初めて開発・製造した。
 1988年、Selesmarは、フィンランドの会社ASPOとの協力のもと、Integrated Navigation System(ブランド名"Vector")を世界で初めて開発・製造した。
 1995年、Selesmarは、スウェーデンのエンジニアリンググループConsiliumに買収され、同グループのIntegrated Navigation Packageの独立部門(independent division)となった。
(2)製品
 主力製品は、レーダーと統合航海システム(INS(International Navigation System))。
a)レーダー
 製品ラインは、MM950(新造船用)とNavBat(レトロフィット用)。モニターについては現在CRTモニターからTFT(thin film transistor)液晶ディスプレーモニターに変えつつある。近い将来でCRTはフェーズアウトし、全てTFTになる予定。
 レーダーについては全てCEマークを取っているほか、ロシア、ポーランド、中国の承認も取っている。しかし、日本では型式承認の取得が難しいことから、日本の承認は取っていない。
b)統合航海システム(INS)
 システムに組み込む機器のうち60%は自社で製造している。システムの大切なところは自前で製造し、周辺機器は他社から調達するのが基本方針。具体的には、ECDIS、コンニングシステム、レーダーは自社で製造している。ジャイロ、オートパイロット、GPS、エコーサウンダーは他社から購入している。ジャイロはC-Plathから、ログとVDRは姉妹会社のConsilium Navigation AB(スウェーデン)から、GMDSSはSkanti(デンマーク)から調達している。
(3)従業員数
 Consilium Selesmarの従業員数は約60名。
 
(4)日本との関係
 日本市場での販売実績は、航海機器に関しては、船主指定で搭載した実績はあるが、日本籍船への搭載実績は全くない。Consiliumグループとしては、タンクのレベルケージについては日本市場に参入しているが、航海計器については、日本政府の型式承認取得が難しいこと、日本市場が閉鎖的であること等から日本籍船への搭載は100%不可能と考えている。
 韓国は日本と違いオープンマーケットである。
 日本市場に対する戦略は、ストックホルムのConsiliumグループ本社で管理しており、Consilium Selesmarは本社で決定する方針に従うだけである。
 日本ではOKE Services Co.が長年Consilium Selesmarの代理店となっているが、同社は保守・整備業務だけで、セールスは行っていない。
 
(5)その他
・ 他社の製品と比較した場合の強みは、品質と最新の電子技術を取り入れた技術水準の高さである。
・ 現在の市場は、イタリアを含む欧州、中国、韓国。
・ Consiliumグループによる買収(1995年)により、Selesmarは韓国を含む世界市場に進出できた。それ以前のSelesmarの市場はイタリア国内と欧州のみであったが、Consiliumは国際ネットワークを以前から確立していたことから、それが可能となった。Consiliumによる買収後7年を経過したが、現在は姉妹会社のConsilium Navigation AB(スウェーデン)とも協力関係にあり、グループ内の組織融合は十分図られたと考えている。
・ Consilium Selesmarは、Littonのような大きな会社ではなく、小さい会社であるが、それ故に人件費、施設費等の負担が小さく、厳しい環境にも耐えることが出来ると考えている。
・ アフターサービスのネットワークは主要港湾を含め、世界中にある。とはいうものの、レーダーは以前に比べ信頼性がだいぶ向上しており(2−3年ごとの保守整備で十分)、サービスエージェントは儲からない。
・ 2002年7月から強制化されるAIS(Automatic Identification System)は、戦略的に不要と判断し、製造していない。
・ 2002年7月から強制化されるVDR(Voyage Data Recorder)については、Consilium Navigation ABで開発・製造し、既に販売実績がある。
・ レーダーの販売実績について質問したが、企業秘密であるとして回答を拒否された。
・ 工場見学も申し入れたが、拒否された。
・所 感
 Concilium Selesmarは、欧米の航海・通信機器メーカー4大グループの一つである(他はLitton Marine Systems、 STN ATLAS Marine Electronicsのグループ、Raytheon Marineのグループ)。Conciliumグループとしては2000年度の従業員数約500人、売り上げ約5億9千万SEK(79億7千万円)でありそれなりの規模であるが、Concilium Selesmar自体は、従業員数60人程度の小さい企業である。しかしながら、Mr. Giamporcaroとの面談からは、小さい規模であるが故に厳しい環境においても技術開発を進めながら柔軟に適応できる底力のある会社との印象を受けた(Raytheon Marine(従業員500人を超える企業)が、2001年、親会社の負債処理の一環でレジャーボート製品部門を売却している例に見られるように、大きい会社は経営環境、社会環境の急速な変化に対応が難しい側面がある)。
 Concilium Selesmarは日本市場に対して大きな不満を持っており、そのせいか売り上げ実績、財務状況等の情報が全く得られなかった。また、工場見学が出来なかったのは残念であった。








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