Sperryの製品は、ドップラー速力計、操舵制御システム、ジャイロコンパス、レーダー、電子海図システム、統合船橋システム(Integrated Bridge System: IBS)等多岐である。特にSperryを有名にしているのはIBSである。SperryのIBSはVISION2001 IBSと呼ばれている。VISION2001 IBSは、第6-1図に示すごとく中央コントロールコンソールの両側にレーダー、ECDIS、GMDSS、VOSS(Vessel Optimization & Safety System)、VDR(Voyage Data Recorder)、機械モニタリング警報ステーション、ブリッジコンソール、航海センサー(Mk37ジャイロコンパス、SRD421/331、GPS/DGPS.測深儀、天候ステーション)、チャートテーブル等が組み込まれている。中央コントロールコンソールに組み込まれているのはADG3000VTオートパイロット、基本情報表示盤、主機・スラスターコントロール、操舵コントロール、コミュニケーション等である。

　VISION2001には多くの機能が組み込まれているが、中心的システムはVMS VT(Voyage Management System-VISION Technology)とRASCAR VT(Rasterscan Collision Avidance Radar System-Vision Technology)の2つである。VMS VTはNAV-ECDIS(Seakeeping System)、ウオッチメート、船舶パフォーマンス情報、VOSS天候、VOSS Seakeeping、VOSSルートの11種のサブシステムから構成され、航海上の必要性と予算からNavigator、Pilot、Masterの3つのシリーズの内のいずれかを選ぶようになっている。(第6-2図)(第6-3図)

　また、各サブシステムのディスプレーも10、17、20、28インチの選択が可能である。VMS VTの中心的サブシステムは、NAV-ECDIS、航海基本情報(Conningディスプレー)、プランニング、VDRである。前3者はマイクロソフトウインドウNT上のソフトウェアにより稼動する。

　

　航海、操舵、主機等の航海基本情報センターであるConningディスプレーは読み易い配置となっている。プランニングステーションは、ルートの設定等海図を操作する場所であり、ECDISのバックアップをする。またオプションではあるが、オートパイロットと連動させて最適航路を選定するANTSを入れることも出来るようになっている。上記VMS VTの11のサブシステムのうち、ドッキング、船舶パフォーマンス、VOSSはオプションである。ドッキングディスプレーには入渠時に必要な諸情報、即ち、船の前後進速力、左右舷方向速力、rpm、プロペラピッチ等が表示される。船舶パフォーマンス情報ディスプレーに表示されるのは、スリップ、燃料消費量、主補機馬力等であり、VOSSには船舶の最適航行及び安全情報、即ち7日間の天気情報(VOSS天候)、悪天候に基づく損害回避情報を示すVOSS Seakeeping、最適ルートを選定するVOSSルート等のディスプレーに分かれて表示される。

　

　RASCAR VTは、最新のフィルター技術を使い従来のレーダーに比して対象物をはっきりと区別することの出来る画像が得られる、高性能のレーダーシステムである。またSOLASのARPA(Automatic Radar Plotting Aids)に対する要求を満たしている。RASCARレーダーシステムは、単独でもVMS VTに組み込んだ形でも使用可能である。ARPAにより対象物は常時追跡され、同時にSperryのパテントである予想危険区域表示システムによりレーダー上に安全航行コースが鮮明にリアルタイムで表示される。RASCAR VTレーダーも、VMS VTと同じく航海上の必要性と予算に見合う様幾つかの選択巾がある。モニターのタイプは28インチ高分解度カラー(1,280x1,024)/28インチ標準分解度カラー(800 x600)/25インチ高分解度モノクロ(1,280x1,024)/20インチ高分解度カラー(1,280x1,024)の4種である。甲板キャビネットは船主の要求によりいろいろな高さのものを納入しているが1,100mmが基本高さである。その他1,200mmのものはDNVの「Watch One」基準である。通常運用上最も好ましい高さは1,300mmと言われている。

　Sperryは適応デジタルジャイロパイロット(Adaptive Digital Gyropilot: ADG)操舵コントロールシステムとして、ADG3000VT及びADG6000の2種類を発売している。ADGシステムは、その優れた適応コントロールシステムによって舵角最小で針路変更の目的を達することが可能であり、操舵機械の寿命を増すのでオペレーターにとって経済効果が大きく、更に従来Sperryが市販してきた操舵システムに比して信頼性が高い。ADG3000VTとADG6000の相違は、内蔵されたコントロールシステムの相違である。ADG3000VTには自動航路コントロール、旋回半径コントロール、旋回率コントロール等が組み込まれているがADG6000には天候コントロールというような更に複雑なコントロールが組み込まれている。

　

　SperryのSRD-331ドップラー速力計は、前述のARPAシステムや他の主要航海機器に速力と距離の情報を供給する。SRD-331は、小さな漁船から大型航洋商船まで適用可能な機器である。Sperryは30年間速力計を製造しているが、その結果として完成された循環デジタルフィルター技術に基づくSDR-331は即座に速力が読み取れる優れた製品である。

　SperryはLittonに買収されてからLitton Marineの名の下に多くの新製品を出している。また合併後IBSの業績は向上している。1998年12月、Sperryが米海軍強襲揚陸艦LHD-7用に受注したIBSには、Sperryが合併後に開発した高解度平板パネルディスプレー技術が使用されている。本技術を使用することによりIBS全体がコンパクトになりスペース節約の効果が大きい。

　また、Sperryは2000年から2001年にかけてRCCLのクルーズ船にたて続けにIBSを納入している。イーグルクラスの第1船で世界最大のクルーズ船Voyager of the Seasに続きMeyer Werft造船所で建造中のRadiance of the Seas及びその後続船への搭載が決まっている。RCCLは、方針としてクルーズ船に2組のIBSを搭載して航海の安全を確保する方針なので、Sperryの営業上の効果は非常に大きい。

　

　1998年1月、LittonはISIS2500機器モニタリング、警報及び状態評価システムを発表した。ISIS2500はウインドウNT32ビットプラットフォームを使用し、船舶内全ての機器のモニタリング、警報及び状態評価の情報を提供することが可能である。ISIS2500では機器の振動解析、シリンダー着火圧力、トレンド解析、リアルタイムのエキスパート解析等が可能であり、更に従来のISISとの両立、持ち運び可能な振動モニターやデータターミナル等からの情報受け入れも可能である。ISIS2500は振動及びプロセス計測値を取り込んで性能曲線を作成すると同時に、状況をモニターしてリアルタイムの状態評価を行い、オペレーターに対し最終的にアドバイスを行う機能を有している。このためオペレーターは、ISIS2500の各種ディスプレーに表示された全船の機械状態を正確に把握することにより、船を安全に運航することが可能となる。

　最近航海機器の業界で注目を集めているのはSOLASにより2002年7月1日以降客船及び3,000 GT以上の船舶に搭載が義務付けられることとなった航海データ記録計(Voyage Data Recorder: VDR)である。VDRは船舶のブラックボックスといえるものであり、VDRの搭載が義務付けられたことで船舶の事故時の原因究明が容易になり、船舶航行の安全性が増すことが期待されている。Littonが2000年6月に発表したVDR「Voyage Master」はIMO決議A:861.20、EC基準1999/35/ECを超える性能を持っている。LittonがRCCLから受注したRadiance of the SeasのIBSにはVoyage Masterが組み込まれている。

　

　VDRには船舶上の数多いセンサーやボイスレコーダー等からの情報を収納するデータカプセルが付いているが、その性能がVDRにとって非常に大切である。Voyage Masterは予想される衝撃、火災、6,000m水深の水圧等過酷な条件に耐える構造となっており、更に世界初の保護データカプセルが組み込まれているので、データカプセルから事故後に急速に膨大な情報を取り出し正確に解析することが出来る。VDRにはブラックボックス機能に加え自動報告、ログ、航行性能、解析等の諸データが取り出せるようになっているがLittonのVoyage Masterはこの点についてもユニークな点が盛り込まれている。