日本財団 図書館


6. Sperry/Litton
6-1 企業実体
 Litton Industriesは、1996年3月Sperry Marineを$160milで買収することに合意した。Littonは当時、航空、陸上の軍事ナビゲーションシステムでは大手サプライヤーであったが、一般商業用や舶用の分野ではシェアはそれ程大きくなかった。Sperry Marineを傘下に加えることにより、Littonのナビゲーション分野での地位は揺るぎないものとなった。Littonは、第6-1表に示す如く、2000年の総収入は$5,588mil、利益は$218milであるが、1996年に比して総収入は1.18倍、利益は1.81倍となっている。Littonは、先進エレクトロニクス(Advanced Electronics)、情報システム(Information System)、船舶システム(Ship System)、及び電子部品・材料(Electronic Components and Materials)の4つの事業部門から成り立っているが、買収後のSperryは先進エレクトロニクス部門に入れられている。
 
 2000年年次報告書によれば、部門別の総収入は上記の順序で$1,589.321mil、$1,362.588 mil、$1,983.222mil、$701.361milと4部門が比較的均衡している。これらの数字は部門間の内売$48.256milを含んでいるので、Litton全体の外部に対する売上は$5,588.236milとなっている。また、各部門のオペレーションによる利益は、再び上記順序で$72.169mil、$83.780 mil、$279.097mil、$112.514milと総収入に比べればバラツキの多い数字である。なお、上記各部門のオペレーション利益は経理上の諸操作、税金前の数字であるのでLitton全社としての公表利益は$221.2milとなっている。Littonの4部門のうち本報告書で解説する必要のあるのは先進エレクトロニクス部門と船舶システム部門である。Sperryは先進エレクトロニクス部門の中の船舶システムグループに入れられているが、船舶グループの総てではない。2000年度先進エレクトロニクス部門の総収入$1,589milの内訳は、軍用航空49%、陸上20%、船舶18%、商業航空7%、宇宙5%、その他1%となっており船舶の18%は$286milに相当する。
 
 Sperryは、バージニア州 Charlottevilleに本拠を置き長い歴史を有する航海機器メーカーであり、製品もドップラー速力計、操舵制御システム、ジャイロコンパス、レーダー、電子海図システム及びそれらを組み合わせた高度統合船橋システムと多岐に亘っている。Sperryは、Littonに買収されてからもLittonの総合力を背景として舶用分野での数々の新製品を生み出している。Littonは、元来航空ナビゲーション、誘導、コントロールの分野では有数のメーカーであり、LittonがSperryを買収して航空部門で培われた技術を舶用製品に適用し得たことの意義は大きい。
 船舶システム部門は、要するに造船事業部門である。LittonのIngalls造船所は、メキシコ湾岸最大の造船所であり、米国有数の最新鋭造船設備を保有している。Ingalls造船所はパスカグーラ川を挟んだ西岸と東岸に工場を持っているが、1970年に完成した西岸工場は従来の「人が船のところに行って建造する」方式から「船が人のところに来て建造される」いわゆる自動車の流れ作業方式を取り入れた造船所として有名である。西岸造船所では1972年に30隻一括受注した米国初のガスタービン駆動の駆逐艦が連続建造され、その威力を発揮した。
 
 Littonは2000年にAvondale造船所を買収し、船舶システム部門は益々重要性を増している。Avondaleはニューオリンズからミシッシピー川上流約22kmに位置し、艦艇支援船、大型商船の分野では米国屈指の造船所である。Avondale買収後のLittonの船舶システム部門は、航空母艦以外ほぼ全ての種類の艦艇建造実績を有し、また商船の分野でもAvondaleにおける$500milに及ぶダブルハルタンカーの連続建造、Ingallsにおける$880milの米国籍クルーズ船建造(船主であるACV社の破綻により建造途中で中止)等多くのユニークな実績を持つ強力な部門となっている。いずれにせよ、これ等造船所で続々と建造される船舶には、特別の理由がなければSperryを含むLitton航海計器が搭載されることになり、Sperry計器の販路確保という面でAvondale合併が果たした効果は大きい。
 
 Littonはカリフォルニア州Woodlandに本社を置き、全世界に40,000人以上の従業員を擁する大企業である。Littonはこれ迄成長企業の買収と社内非成長事業の分離を巧みに組み合わせて成長してきた会社である。Ingalls造船所は、1938年東岸造船所で操業を始め米国で初めて完全溶接船を建造した造船所として知られているが、1961年Littonの傘下に入っている。1994年、Littonは油田情報サービス、産業自動化システム部門を分離している。Littonの近年の買収、分離状況については6-4節で詳述するが、2000年度に実施したAvondaleの$590milの買収は、これまでLittonが実施した最大の買収であり、これにより船舶システム部門の2000年の総収入は1999年に比べ83%、利益は74%上昇した。船舶システム部門は、2000年に総収入でLitton全社の35%、利益で51%を稼ぐ大事業部門となった。船舶(特に艦船)の建造費は高価なので総収入の35%は容易に理解出来る。例えば、2000年Littonが海軍から受注した2隻のArleigh Burkeクラス駆逐艦の受注価格は$700.6mil、LPD17クラス強襲揚陸艦1隻の受注価格は$478milであった。利益51%というのは、Littonが船舶のエレクトロニクスシステムを内作しているという事実を考えても非常な高率である。
 
 Littonの企業実体の最大の特色はその軍需色にある。1998−2000年の3年間のLittonの総収入のうち、夫々66%、65%、68%は連邦政府との契約であり、その殆どが軍需である。先進エレクトロニクス部門では、エレクトロニクス戦闘システム、敵味方識別システム、レーザー戦闘システム、夜間戦闘(ナイトビジョン)システム等、近代戦に必要な戦闘、防衛システムを製造している。また、軍民両用システムとしては陸上、水上及び空中のナビゲーションシステム、統合艦橋システム、統合航空航行システム等多くの製品がある。情報システム部門では、戦闘命令コミュニケーション・コントロールシステム、急速に老朽化する武器システムの保全システム等の純軍事的なものから指紋識別システム、健康情報管理システムと言った純民需的なもの迄、幅広い製品を連邦政府に納めている。
 
 軍需の比率が一番高いのは船舶システム部門である。船舶システム部門の2000年の売上の84%が艦艇であり、商船は16%に過ぎない。電子部品及び材料部門でも勿論軍需用のものを製造しているが、その比率は4部門のうち一番小さい。この部門ではインターネットを含むワイヤレス通信、データ容量の大きいコンピューターシステム等に使用される部品や材料、例えばガリウム砒素半導体ウエハー、光ファイバー通信用スイッチ等を北米、ヨーロッパ、アジア等に分散した工場で製造し、世界16ヶ国にあるセールスオフィスを通じ、世界中に販売している国際事業部門である。
 
 Littonは、今後の重点投資部門として船舶システム部門と電子部品及び材料部門を挙げている。2000−01年の間Ingalls造船所の生産性増強のための重点投資を実施し、競争力の保持を確実なものとすることを狙っている。電子部品及び材料部門への投資は、急成長するテレコミュニケーション、インターネット、データ蓄積市場に見合う新製品製造のための投資である。また既存の急成長製品例えば高密度コネクター、光学スイッチやその部品、大型複雑多層集積回路等の分野の生産力増強のためにも新規投資が実施される。
 
 Littonは、同社の今後の長期収益を支えていくのは船舶、情報技術、商業用エレクトロニクス及び有望企業の買収と考えている様である。レーガン時代の艦艇600隻体制から(軍縮下で)300隻の維持も危ないといわれている現在、Litton船舶部門の過度の艦艇依存体質は問題があるかもしれない。艦艇分野でのLittonの弱みは、原子力推進艦の建造経験が非常に乏しいことである。将来艦としてこれまでLittonが最も力を入れてきたのは、2004年から発注される予定であった沿岸駆逐艦DD21であり、既に$103milの開発費を受け取っているが、前述の如くブッシュ政権になってから本艦の建造そのものが見直されておりLitton船舶システム部門の将来は多難である。しかし、後述の如くLitton自体がNorthropに買収されて事態は思わぬ方向に進んでおり、Littonの船舶システム部門もNorthropの大きなパイの中で再編成されるものと思われる。
第6-1表 Littonの経営状況(1998−2000)
出典:Litton2000年 年次報告書
Litton Industries YEAR ENDED JULY 31.
CONSOLIDATED STATEMENTS OF OPERATIONS
(thousands of dollars,except per share amounts) 2000 1999 1998
SALES AND SERVICE REVENUES $5,588,236 $4,827,517 $4,399,888
Costs and Expenses
Cost of sales 4,421,781 3,774,457 3,390,475
Selling general administrative 497,741 531,811 507,531
Depreciation and amortization 189,469 160,622 147,556
Gain on sale of businesses (19,185) (12,774) -
Special charges 4,711 74,644 -
Voluntary settlement - 18,500 -
Interest - net 108,079 66,951 52,043
Total 5,202,596 4,614,211 4,097,605
Earnings before Taxes on Income and Cumulative
Effect of a Change in Accounting Principle 385,640 213,306 302,283
Taxes on Income (164,464) (92,722) (120,913)
Earnings before Cumulative Effect of a Change on Accounting Principle 221,176 120,584 181,370
Cumulative Effect of a Change in Accounting Principle,Net of Tax (2,777) - -
Net Earnings $218,399 $120,584 $181,370
EARNONGS PER SHARE
Basic
Earnings before Cumulative Effect of a Accounting Principle $4.85 $2.63 $3.91
Cumulative Effect of a Accounting Principle (0.06) - -
Net Earnings $4.79 $2.63 $3.91
Diluted
Earnings before Cumulative Effect of a Accounting Principle $4.80 $2.58 $3.82
Cumulative Effect of a Accounting Principle (0.06) - -
Net Earnings $4.74 $2.58 $3.82
See accompanying notes consolidated financial statements.








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION