日本財団 図書館


5. Bombardier
5-1 企業実体
 ボンバルディア社(Bombardier Inc.: BI)はカナダのケベック州Montrealに本社を置くカナダの輸送機器製造会社であるが、北米、ヨーロッパ、アジアに多くの製造、販売拠点を持ち収入の90%はカナダ以外で創出されており、世界中の総従業員が56,000人という世界企業である。
 米国とカナダの間には、1989年米国カナダ自由貿易協定(U.S.-Canada Free Trade Agreement)が、また1994年にはNAFTAが発効し貿易障害は殆どなくなっている。カナダは米国にとって最大の輸出国であり、商習慣も殆ど同じことから両国間の企業活動は殆ど国境を感じない程に一体化されている。
 
 BIは、小型ジェット機を中心とする航空機部門、鉄道車輌を中心とする輸送機部門及びモーター駆動の各種リクリエーション用陸上、水上機器を製造するリクリエーション機器部門の3部門から成り立っている。第5-1表に示す如く2000年度の総収入は$13.6bilと、前年比18%増、純利益は$718.8 milと前年比30%増しで、ここ数年97−98年の停滞期を除き収入・利益ともにハイペースで上昇している。(BIはカナダの会社であるので、本章の中に出てくる財務状況を表す$の数字は、特に断りの無い限り全てカナダ$である。2002年1月現在1カナダ$=0.6US$。)。2000年の総収入及び利益を1996年の総収入$7.1bil、純利益$158milと比べると、総収入は1.9倍、純利益は4.5倍と利益率が非常に高くなっている。
 
 上記の伸びの大部分は、航空機部門と輸送機部門の伸びによるものである。航空機部門の2000年の総収入は、$8,126.2milで1999年の$6,444.1milの1.26倍、2000年の純利益は$903.9 milで1999年の$681.9milの1.33倍となっている。輸送機部門では2000年の総収入は3,446.1 mil、純利益は$174.4milに対し、1999年の総収入は$2,966.3mil、純利益は$147.9milと総収入で1.16倍、純利益で1.18倍となっている。リクリエーション機器部門は2000年の総収入$1,473mil、純利益$17.7milに対し、1999年の総収入は、$1,628mil、純損$45.5milで、総収入は0.9倍に落ち込み純利益はかろうじて損失を免れて小幅利益をあげ減収増益となっている。
 
 BIは1942年、Joseph Armand Bombardierによって雪上輸送機器の製造会社として創立された会社であり、その後多くの合併を繰り返し、国際企業の形態を整えてきた。1970年代ニューヨークマンハッタンの地下鉄車輌825輌を製造したことは、BIにとって画期的なことであった。BIのスノーモービル、万能地形車(All-Terrain Vehicle: ATV)、水上オートバイ(Personal Water Craft: PWC)等のリクリエーション用機器の駆動用に使っているエンジンの製造会社Rotaxを吸収合併したこと、さらに現在米国で一番人気のあるPWC「Sea Doo」を1988年売り出したことも画期的な出来事であった。
 
 BIの航空機部門は、2000年度292機のビジネス、或いは地域交通用ジェット機を引き渡した。その内訳はビジネスジェット5機種合計183機、地域交通用航空機4種 104機、水陸両用機5機となっている。ビジネスジェット機183機の地域別の納入先は、米国123機、ヨーロッパ22機、その他38機となっており、米国が圧倒的に多い。世界のビジネスジェット機マーケットは現在8社が競合しているが、BIのシェアは2000年度27%であった。地域交通用航空機 104機の地域別の納入先は米国70機、ヨーロッパ23機、その他11機となっており、この分野でも米国が圧倒的に多い。この分野の2000年1月31日現在の受注残は確定435機、オプション551機合計986機となっており、BIのシェアは機種により若干異なるが概ね40%以上を占めている。
 
 BIの鉄道車輌部門は、米国のワシントン/ニューヨーク/ボストンをを結ぶアムトラックの高速旅客列車Acelaを納入したことで有名である。またBIは、2000年度もマンハッタン地下鉄車輌680輌の注文を受けており、製造を完了したものから順次引き渡している。BIの鉄道車輌部門は、米国で50%、ヨーロッパで25%のシェアを持っている。BIは、1998年GMのEMD(2-3節)と契約を結び、2000年184台のディーゼル電動機関車をメキシコで組み立てた。
 
 リクリエーション機器部門は、落ち込みを挽回するため種々の対策を実行に移している。この分野は、BIの元祖的分野であり、むしろ得意な分野である。この部門で製造されている製品は、スノーモービル、ATV、PWC、Rotaxガソリンエンジン、リクリエーション用ボート、キャタピラー雪上作業車等であるが、舶用と関係ある製品はPWC、ボート、Rotaxエンジンである。この部門の総収入が2000年度約10%下落したことは前述の通りであるが、その原因は、PWCとスノーモービルの売上減少に依るものである。この部門が、2000年度に売上が減少する中で$17.7milにせよ利益を上げたのはPWCとスノーモービルの分野での社内合理化の賜物である。ATVも社内合理化の対象となっており、1999年$83mil、2000年$82.5milが投資されており、続いて2001年度も同程度の額が投資されることになっている。
 
 BIのスノーモービルの生産ラインは、北米市場向けのSki-Dooラインとヨーロッパ向けのLynxラインから成り立っている。Ski-Dooの2000年シーズンの売上は189,000台で、1999年より18,600台、9%の減少となっているが、Lynxの売上は2000年シーズン21,500台、1999年シーズン20,774台で726台と僅かながら増加している。いずれにせよ全体では17,874台の減少となっている。BIの北米におけるスノーモービルのシェアは30%、ヨーロッパにおけるシェアは42%に達する。BIは2001年シーズン、ヨーロッパでスポーツ及び雪上旅行用に12種の新型モデルを投入し、スノーモービルの売上増加を計っている。1998−2000年の3冬シーズンとも、北米では降雪時期が遅かったのでスノーモービルの売上は落ち、ヨーロッパでは微増するというパターンが続いている。
 
 PWCの生産ラインはSea-DOO一本に絞られる。過去3年間、北米のPWCの売上は連続して落ち込んでいる。1999年9月30日のシーズン終了時の北米での販売実績は112,000台で前年の136,000台より17.6%落ち込んでいる。北米市場以外では販売実績は22,000台であり、前年の25,000台から12%の落ち込みとなっている。世界PWC市場におけるBIのシェアは、1999年度は42%、1998年は45%であった。BIのATV部門は後発である。1998年に初めて生産が開始され最初の1年で6,000台が生産された。米国のATV市場は1999年には550,000台といわれており、前年の433,000台から27%上昇した大きな市場である。BIのリクリエーション機器に用いられているのは、テキサス州オースチン工場で生産されているRotaxエンジンである。2000年のRotaxエンジンの生産は、スノーモービルやPWCの生産が減った分だけ減っているが、その一部はATV、スクーター、モーターサイクルの増加によって補われている。Rotaxエンジンは今後ATVやモーターサイクルへの使用量が増加するので攻勢に転ずると予想されている。
 
 BIでは、リクリエーション機器部門の落ち込みを防ぐため、リクリエーション用ボート、雪上作業車に力を入れて売上を伸ばす予定である。BIでは、リクリエーション用ボートとして、14ftのRotaxエンジン駆動のもの及びMercuryと共同開発したジェットドライブによるボートを売り出しているが、詳細は次節で述べる。無限軌道付き雪上作業車の一番大きな市場はヨーロッパであるが、BIの全世界のシェアは2000年度すでに34%に達しており、今後の成長が見込まれる分野である。
 
 BIが他社を買収して大きくなったことは前述の通りであるが、最近の買収ハイライトは2001年1月米国の歴史ある船外機及びボートメーカーであるOMC(Outboard Marine corporation)を買収したことである。OMCは、有名なEvinrude、及びJohnsonブランドの船外機メーカーとして知られ、買収時米国の船外機シェアの33%を持っていた。買収はボートメーカーのGenmarとの共同入札で行われ、エンジン部門をBIが、ボート部門をGenmarが引き継ぐことになった。今後、OMCのEvinrude、及びJohnsonがBIの業績に加われば、U.S.$で1,000mil程度の売上が見込まれるので、リクリエーション部門のみならずBI全体の業績向上に繋がるものと期待されている。
第5-1表 BIの経営状況(1991−2000)
出典:BI2000年 年次報告書
HISTORICAL FINANCIAL SUMMARY
For the years ended Jaunary 31 2000 1999 1998 1997 1996
Operations Summary (milllons of Canadian dollars, except per share amounts) Revenuse
Aerospace $ 8,126.2 $ 6,444.1 $ 4,874.1 $ 4,283.8 $ 3,766.9
Recreational Products 1,473.0 1,628.1 1,718.5 1,959.0 1,641.8
Transportion 3,446.1 2,966.3 1,688.1 1,599.4 1,574.7
BC 738.5 570.6 352.4 244.6 220.0
Interegmente liminations (165.3) (109.0) (124.2) (111.1) (80.0)
External revenuse $13,618.5 $11,500.1 $ 8,508.9 $ 7,975.7 $ 7,123.4
Income (loss) berore unusual Items and Income taxes
Aerospace $ 903.9 $ 681.9 $ 479.6 $ 287.3 $ 162.7
Recreational Products 17.7 (45.5) (1.1) 209.2 175.9
Transportation 174.4 147.9 84.6 62.9 99.9
BC 28.0 42.6 64.1 46.9 28.7
Unusual items, net 1,124.0 51.1 826.9
-
627.2
-
606.3
-
467.2
231.4
Income before Income taxes 1,072.9 826.9 627.2 606.3 235.8
Income taxes 354.1 272.9 207.0 200.1 77.8
Net Income $ 718.8(1) $ 554.0 $ 420.2 $ 406.2 $ 158.0(2)
Per common share $1.02(1) $ 0.77 $ 0.59 $ 0.59 $ 0.22(2)
 
General information (milllions of Canadian dollars, except per share amounts Export revenues from Canada $ 6,198.3 $ 6,021.7 $ 4,642.2 $ 4,532.7 $ 3,537.8
Additions to fixed assets $ 419.5 $ 364.2 $ 262.6 $ 232.4 $ 297.8
Depreciation and amotization $ 227.5 $ 232.6 $ 180.1 $ 165.8 $ 158.3
Dividend per common share Class A $0.220000 $0.170000 $0.150000 $0.100000 $0.100000
Class B $0.223125 $0.173125 $0.153125 $0.103125 $0.103125
Number of common shares (millions) 688.8 683.2 678.9 675.3 670.1
Book value per common share $ 4.81 $ 4.40 $ 3.57 $ 3.01 $ 2.46
Shareholders of record 11,168 10,097 10,781 11,541 9,873
 
Market Prioe Range (Canadian dollars) Calss A  High $ 32.25 $ 23.55 $ 16.98 $ 13.30 $ 10.19
  Low 19.10 14.05 12.50 8.88 5.72
  Close 29.95 22.15 14.13 13.05 10.19
Calss B   High $ 32.20 $ 23.75 17.00 $ 13.20 $ 10.07
  Low 18.95 14.05 12.40 8.75 5.66
  Close 29.30 22.50 14.05 13.00 9.94
 
For the years ended Jaunary 31 1995 1994 1993 1992 1991
Operations Summary (milllons of Canadian dollars, except per share amounts) Revenuse
Aerospace $ 3,409.6 $ 2,579.0 $ 2,602.9 $ 1,899.8 $ 1,755.4
Recreational Products 1,112.1 792.3 556.9 392.2 389.0
Transportion 1,309.6 1,311.5 1,237.6 725.6 697.1
BC 166.0 133.5 77.5 63.3 63.2
Interegmente liminations (54.3) (47.5) (26.9) (22.3) (12.4)
External revenuse $ 5,943.0 $ 4,768.8 $ 4,448.0 $ 3,058.6 $ 2,892.3
Income (loss) berore unusual Items and Income taxes
Aerospace $ 158.2 $ 151.7 $ 192.0 $ 141.7 $ 138.5
Recreational Products 118.0 77.3 28.8 (8.8) (24.1)
Transportation 66.0 (24.0) (71.4) 4.2 20.7
BC 11.5 4.8 2.9 (15.7) (14.6)
Unusual items, net 353.7
-
209.8
-
152.3
-
121.4
-
120.5
-
Income before Income taxes 353.7 209.8 152.3 121.4 120.5
Income taxes 106.4 32.5 18.6 13.7 20.4
Net Income $ 247.3 $ 177.3 $ 133.7 $ 107.7 $ 100.1
Per common share $ 0.36 $ 0.28 $ 0.21 $ 0.18 $ 0.17
 
General information (milllions of Canadian dollars, except per share amounts Export revenues from Canada $ 2,960.3 $ 2,252.1 $ 1,950.8 $ 1,084.5 $ 975.8
Additions to fixed assets $ 176.0 $ 169.8 $ 227.8 $ 161.5 $ 162.2
Depreciation and amotization $ 131.6 $ 124.6 $ 101.3 $ 75.3 $ 76.8
Dividend per common share Class A $0.075000 $0.050000 $0.050000 $0.040000 $0.040000
Class B $0.078125 $0.053125 $0.053125 $0.043125 $0.043125
Number of common shares (millions) 662.9 659.9 617.1 609.3 565.8
Book value per common share $ 2.42 $ 2.02 $ 1.52 $ 1.40 $ 1.15
Shareholders of record 8,776 9,108 9,534 8,735 9,315
 
Market Prioe Range (Canadian dollars) Calss A   High $ 6.25 $ 5.50 $ 4.35 $ 4.38 $ 2.58
  Low 4.50 2.41 2.66 2.10 1.82
  Close 5.72 5.25 2.97 4.29 2.11
Calss B   High $ 6.32 $ 5.47 $ 4.32 $ 4.32 $ 2.58
  Low 4.44 2.41 2.60 1.94 1.61
  Close 5.69 5.29 2.91 4.29 1.97
(1) The effect of the unusual items described in note 14 to the consolidated financial statements on net income amounts to $33.6 million ($0.04 per common share). Exclusive of these unusual items, net income would be $752.4 million ($1.06 per common share).
(2) The effect of the writedown of investment In Eurotunnel share units on net income amounts to $155.0 million ($0.24 per common share). Exclusive of this writedown, net income would be $313.0 million ($0.46 per common Share).








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION