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知識依存型モジュラー修理
 本プロジェクトは、修理及び改造向けに、正確で効果的なリバース・エンジニアリング技術5の開発を図るものである。船舶における改造区域の高精度モデルの作成用に最新式のレーザー測定装置を適用することを研究する。本プロジェクトはまた、意思決定を支援するために、管理可能で、工程の変化に伴う工数等の変更を予測できる製造工程と知識依存モデル6を開発する。これらの工程及びモデルを利用して、船舶修理及び改造の製造工程を大幅に改善する。
 本プロジェクトは、他の製造業の専門知識、技術、そして「ベスト・マニュファクチャリング・プラクティス」を利用し、それをアトランティック・マリン・ホールディング・カンパニー社で船舶修理・改造に応用するものである。本プロジェクトのパートナーであるNIST(米国標準技術研究所)は、この技術移転のためのメカニズムを開発しており、米国産業の国際競争力の向上支援することを議会により義務づけられている。
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 初年度には、特定のリバース・エンジニアリング技術の実地実証が行われる。第二実証では、既存の修理・改造工事をシミュレートする。二年目には、アトランティック・マリンにおいて、完成した強化リバース・エンジニアリングシステムの導入と、実証及び、強化シミュレーション及び、性能を向上させた設備の実証及び記録が行われる。
革新的レーザー切断技術による先進構造接合法の開発
 本プロジェクトは、日本ですでに完成しているレーザー切断技術を、米国造船業に導入するものである。「はめ込み式(タブ・アンド・スロット)」技術に基づいた新たな構造接合コンフィギュアレーションの開発試験を実施する。本プロジェクトにより、米国造船所は、必要なツール及び施設に資本投資を行った後、即座にレーザー切断及び精密成形技術を効果的に導入するのに必要な情報が選られる。
 本プロジェクトと連結して、ベンダー造船は、最新式の初期オペレーション工場を新設し、新しいテクノロジーに関心のある米国造船所に公開する。
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はめ込み式ジョイント
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成形法と溶接法の比較――V-Crimp バルクヘッド
 初年度には、(1)多様な鋼材から最高の品質で切断できる最適のレーザー工作機械についての説明書作成、(2)船級協会により試験・承認されたはめ込み式技術を取り入れた多様な部材接合方式の開発、(3)溶接よりも精密形成を利用した方が効果的に製造できる小組立て部材の評価、を行う。二年目には、単純部材接合方式を、より複雑な小組立てブロックへ発展させ、レーザー切断を最適化するための鉄鋼化学組成の完全な評価を実施、精密形成の最適適用の報告を作成、レーザー溶接の造船への適用を検討する。
 ベンダー造船とキャタピラー社は、ニューポート・ニューズ、NAVSEAと連携して、現在、艦艇建造においてレーザー切断、はめ込み式組立て、レーザー溶接の適用試験を行っている。ベンダーによれば、レーザー切断により切断精度が向上し、3隻の転錨タグプログラムにおいて大幅なコスト節約が実現した。
船舶構造のロボット溶接用制御プログラムの自動生成
 本プロジェクトは、CAD製品モデル、溶接組立工程表、生産設計情報から直接、溶接ロボット作業プログラムを自動的に生成する能力を開発することを目的としている。これらの自動プログラムは、ロボットの柔軟性を最大限に活用し、船体のブロックの製造のほとんどに適用するものである。
 初年度には、ブロック構造のモデルと構造部材等のコード化、溶接ロボット操作手順について、視覚化されたモデルを作成する。2年目には、トーチ操作の標準要領、溶接ロボットの制御機構に要所の命令を自動的に作成するためのソフトウェアの開発が行われる。3年目には、溶接ロボットによる溶接の順番や溶接方法を計画するソフトウェアの開発、自動設計の実証、及びロボット個体につき個々の溶接部の自動設計の実証が行われる。
 今までのところ、ブロック構造のモデル化、設計ソフトウエア、操作手順の視覚化、溶接ロボットによる作業のモデル化、の実証が完了している。
船舶コンポーネント工場
 本プロジェクトは、鉄鋼や管といった部材及びブロックの製造用の「ワールド・クラス」施設の可能性を検討するものである。部材もブロックも、外部の工場で製作されるものとする。本コンセプトは、オランダのCentraalstaalnioiteで、周辺の複数の組立て工場向けに、鉄鋼部品一式が製造、供給され、部材やブロックが製造されていることに基づいている。ハルター・マリンのメキシコ湾岸に位置する26の組立て工場が、このコンセプトを実現するための想定工場となっている。
 初年度には、中小型造船マリン市場及びその他の市場向けに、鉄鋼や配管等について外部製作にすべき範囲を検討する。2年目には、外部における、鉄鋼、管製品等の製造に加え、ブロック先行艤装への発展についての報告を作成する。その後、「ワールド・クラス」の最新式生産設計を下に開発したパラメーター設計に適合する外部工場のあり方を検討する。最終的には、上記の結果を、要件の定義から施設設計に至るまで一貫した一つの報告書にまとめる。
制約の理論:造船所の制約を作業日程に組み込む方法
 本プロジェクトの目的は、制約理論に基づく船舶建造工程管理システムをアラバマ造船所に導入することにより、複雑な建造工程を調整し、日程及びコストの管理を改良することである。この主要は、造船・修理産業では新しいが、他の産業ですでに成功を収めている。(インテル社、ルーセント・テクノロジーズ社は大型ユーザーである)。本プロジェクトは、船舶建造という技術的特性とこの新しい管理手法を組み合わせ、様々な変更や変化に対応できる包括的訓練プログラムを組み合わせるものである。
 まず、(1)制約理論の概念、(2)制約理論に基づくプロジェクト管理実施の影響、(3)制約理論の概念がどのようにアトランティック・マリン(アラバマ造船の親会社)に適用されるか、について理解させるためエグゼクティブ・ワークショップ(管理者向け教育)を開催する。次に、(1)制約理論の利用法を理解することにより、造船所の経営の向上を図る、(2)この目的を支援するために従業員の姿勢を変える、ことについてのワークショップを開催する。
 なお、本プロジェクトについては、効果が期待できないとして、第一段階が終了後に、プロジェクト参加者により、本プロジェクトの第二段階の実施を中止する内部決定が行われた。
「ワールド・クラス」材料基準
 本プロジェクトは、船舶設計や材料選定のルール・ベースの方法論を開発、導入するものである。当該方法論には、全船及び特定部分のパラメトリック設計基準(予め指標化された標準設計を実際の設計に当てはめていく方法)、中間製品基準、生産設計、世界的に調達される機器の仕様、一般材料のデータベース、支援設計及び材料基準が含まれる。作業は、NSRPで実施された既存の研究、海軍の中期シーリフト技術開発プログラム及び参加者の社内プロジェクトを利用する。本プロジェクトにおいて開発された方法論及び関連設計ツールにより、造船所は顧客からの引き合いに迅速に対応することが可能となり、契約設計、基本設計、詳細設計の開発の工数や時間を大幅に圧縮することができるようになる。
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 初年度には、プロジェクト管理方法論テンプレート(ひな型)作成、生産セミナーの開催、ソフトウェア・メディア方法論指導書の作成及びそのセミナーの開催、既存の基準やその他の成果物の検討、参加企業グループの設立、設計・コスト推算手法の開発、全体的な船設計基準の開発、共通部品データーベース基本構造の開発、が行われる。2年目には、特別な部分の設計基準及びそのテンプレート開発、パラメトリック設計に必要な指標等の開発、一般材料と調達部品のデータベースの開発、材料基準の開発、生産設計への適用の検討が行われる。3年目には、生産設計及び全般詳細設計について能力を実証するための事例研究、開発した各種基準の評価、造船市場全般で適用できるように設定したパラメトリック設計手法の開発が実施される。
 現在のところ、800件以上の基準が審査のために提出され、ブロックや小組立て部材の一覧、設計基準の優先順位化の開発が終了、プロジェクトに必要となるデータベースの要件が定義され、サンプル・データ・テンプレートが開発され、各種の部材や部分についてパラメトリック設計手法を統合するための主設計標準が開発された。
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<設計基準の優先順位化>
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<ブロックや小組立て部材一覧>








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