第2章 バングラデシュの海事産業の現状及び政府の政策ニーズ
2-1 海運業の現状
バングラデシュの主要港はチッタゴン(Chittagong)港とモングラ(Mongla)港の2港に集約される。表4-9及び表4-10のごとく、チッタゴン港には19基の桟橋があり、年間約1,400隻の船舶が寄港、約1,000万トンの貨物が扱われている。一方、モングラ港には6基の桟橋があり、年間約350隻の船舶が寄港、約340万トンの貨物が扱われている。
表4-9 チッタゴン港とモングラ港の貨物取扱量推移 (単位:千トン)
年度
輸入
輸出
チッタゴン
モングラ
総計
チッタゴン
モングラ
総計
94/95
8,638
2,322
10,960
1,417
725
2,142
95/96
8,738
2,443
11,181
1,451
396
1,847
96/97
9,063
2,174
11,237
1,435
520
1,955
97/98
7,295
2,340
9,635
589
508
1,097
98/99
8,973
3,054
12,027
1,031
382
1,413
99/00
12,675
n.a
n.a
631
n.a
n.a
出所:チッタゴン及びモングラ港湾局
表4-10 チッタゴン港とモングラ港の外航船入出港隻数推移
年度
入港
出港
隻数
純トン(千トン)
隻数
純トン(千トン)
バラスト
貨物込み
バラスト
貨物込み
94/95
1,566
2,850
6,013
1,552
5,658
3,094
95/96
1,625
3,483
5,928
1,624
6,430
3,136
96/97
1,694
3,624
5,488
1,684
6,544
2,866
97/98
1,484
3,029
5,794
1,641
6,188
2,556
98/99
1,739
3,301
6,509
1,851
7,432
2,949
99/00
1,395*
2,743*
4,853*
1,510*
5,682*
2,259*
出所:チッタゴン及びモングラ港湾局
バングラデシュ最大の海運会社は政府系のBangladesh Shipping Corporation(BSC)で、保有船舶は25隻、総トン数287,653DWTである。
内陸水運局(BIWTA)から入手した統計数値によると、同国の登録船舶数は以下表4-11及び表4-12の通りとなっている。
表4-11 バングラデシュ海運省内陸水運局に登録された船舶隻数
船 型
97年12月
98年12月
99年12月
客船
2,082
2,096
2,107
貨物船
1,382
1,428
1,443
フェリー
33
33
33
オイル・タンカー
73
80
81
タグボート
240
247
249
荷役バージ
1,610
1,611
1,607
漁船
70
70
70
スピードボート
612
612
612
調査船
421
421
421
その他
363
363
363
合計
6,886
6,961
6,986
註: 上記数値は1976年内陸水運法に基づいて海運省内陸水運局に登録された船舶の隻数を示す。
表4-12 バングラデシュ商船局に登録された船舶隻数
船 型
97年12月
98年12月
99年12月
外航貨物船
29
29
23
沿岸船
121
120
120
客船
7
7
7
荷役バージ
53
53
56
タグボート
15
15
16
調査船
1
1
1
パトロール船
2
2
2
浮きクレーン
1
1
0
トローラー漁船
67
73
73
沿岸タンカー
82
89
93
浚渫船
2
2
2
漁業用ボート
5,167
5,816
6,126
貨物ボート
1,313
1,537
1,576
パイロット船
3
3
3
合計
6,863
7,748
8,098
註: 上記数値は1976年内陸水運法及び1983年商船法に基づいてバングラデシュ商船局に登録された船舶の隻数を示す。
また、同国最大のフェリー・オペレーターであるBangladesh Inland Water Transport Corp (BIWTC)社の旅客及び車両運搬数並びに総収入推移を表4-13に示す。
表4-13 BIWTC社フェリーの旅客及び車両運搬数並びに総収入推移
年度
運航隻数(隻)
旅客数(千人)
車両数(千台)
総収入(千タカ)
94/95
26
9,118
889
598,159
95/96
30
8,894
920
612,853
96/97
31
11,343
1,038
749,361
97/98
32
10,885
1,125
737,154
98/99
30
5,388
876
505,034
99/00
31
6,521
941
630,211
出所:Bangladesh Inland Water Transport Corp (BIWTC)
2-2 造船業の現状
バングラデシュの造船業については産業自体が鉄鋼・エンジニアリング部門に位置付けられており、造船業界の概要を把握するための統計・データや業界団体は存在していない。英国Fairplay社が発行する造船事業者リストによると、後述する内陸水運局(BIWTA)が同局保有の船舶を修理するワークショップを保有している以外に、以下の国営企業3社が代表的な造船事業者と推定される。これら国営企業は3社とも政府の国営企業民営化プログラムの一貫として1993年に設立された民営化庁(Privatization Board)により民営化の対象企業として選別されている。
2-2-1 Dockyard & Engineering Works Ltd
設立
:
1926年
所在地
:
ダッカ
事業内容
:
RORO船、タグボート、内陸・沿岸用船舶、艀等の建造及び修繕
敷地面積
:
21.78エーカー
保有設備
:
スリップウエイ(298m×290m、最大780DWT)
株主
:
政府100％、国営鉄鋼会社Bangladesh Steel & Engineering社の管轄下にある
従業員
:
452名(技術職45名、非技術職29名、事務職169名、工員209名)
資本金
:
授権資本3,000万タカ、払込資本1,590万タカ
財務内容
:
売上7,050万タカ、純損失4,790万タカ(96/97年度)
2-2-2 Chittagong Dry Dock
設立
:
1985年
所在地
:
チッタゴン
事業内容
:
最大16,500DWTまでの外航船、沿岸船、トローラー等の修繕、並びに橋梁、鉄塔等の鉄鋼構築物の建造
敷地面積
:
43.27エーカー
保有設備
:
ドライドック(最大16,500DWT)
株主
:
政府100％
従業員
:
452名(技術職45名、非技術職29名、事務職169名、工員209名)
資本金
:
授権資本10億タカ、払込資本7億1,050万タカ
財務内容
:
売上1億2,530万タカ、純損失4,940万タカ(96/97年度)
2-2-3 Khulna Shipyard
会社概要は不明であるが、同社もDockyard & Engineering Works社と同様、国営鉄鋼会Bangladesh Steel & Engineering社の管轄下にある政府100％出資の造船事業者である。
2-3 海事関連政府機関
バングラデシュ政府には次のような海事関連機関があるが、それぞれの行政を行っていくうえで、船舶が老朽化し効率的な動きができないのが現状である。
2-3-1 水資源開発庁(Bangladesh Water Development Board : BWDB)
水資源省(Ministry of Water Resources)傘下の水資源開発庁はジャナム、ガンジス、メグナの3大河川を管轄しており、流域の数箇所のポイントを浚渫することにより、河川の流れをコントロールし、洪水を防ぐことを目的としている。現在、表4-14のごとくCutterサイズ12”/18”浚渫船を複数隻所有・管理している。但し、この既存浚渫船は老朽化が進んでおり(15年以上)、効果的に作業が行われていない。この結果、洪水被害により毎年数百万の人々が家を失い、数百万ドルに相当する農作物の被害を受けている。また、これら河川の交通障害は同国の経済にも大きな影響を与えている。このため、これら浚渫船の代替等に対する要求は大きい。
表4-14 BWDB所有浚渫船
浚渫船のタイプ
保有隻数
運行可能隻数
Cutter Suction (12”)
22
9
Cutter Suction (18”)
11
11
