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2-3-2 内陸水運局(Bangladesh Inland Water Transport Authority : BIWTA)
 
 海運省(Ministry of Shipping)傘下の内陸水運局はその名の通り、内陸水運の効率並びに安全面を管理・監督する部局である。同局は表4-15に示す標識、浮標、灯台、信号灯などの航行補助装置を内陸水域各所に保有しており、それを管理するため、以下の表4-16に示すごとく浚渫船や調査船、設標船など86隻の船舶を保有・運航している。しかしながら、現時点で同局が保有する船舶は隻数において十分とはいえず、しかも86隻中32隻(37%)は船齢が21年を上回っている。このため、これら船舶の代替等に対する要求は大きい。
表4-15 BIWTA保有・管理する航行補助装置
航行補助装置 東部
デルタ
中央
デルタ
南部
デルタ
西部
デルタ
北東部
デルタ
Aricha 北部
デルタ
合計
灯台 - - - - - - - -
信号灯 20 68 90 48 36 20 - 282
航路標識 20 13 5 4 3 - - 45
浮標 3 15 13 13 18 - - 62
デッカ式ステーション 1 1 - 1 2 - 1 6
レーダー式信号灯 - - - - - - - -
その他信号灯 1 - - 1 - - 1 3
DGPSステーション - - - - 3 - - 3
合計 45 97 108 67 62 20 2 401
出所:BITWAにて作成
表4-16 BIWTA保有船舶の明細
No 船 名 分 類 建造年 GT 最大スピード(Knots) 船体 エンジン エンジン出力(BHP)
1 Pathfinder 設標船 1962 421 10.0 鋼板 Lister 674
2 Dishari 1976 487 10.5 Yanmer 960
3 Investigator 沿岸調査船 1967 213 14.0 Mercedes 1520
4 Sandhanj 1975 365 11.0 Yanmer 960
5 Tista 調査ボート 1991 105 10.5 Deutz 376
6 Turag
7 Tistas
8 Suratya 1963 60 10.0 RollsRoyse 524
9 Sitara
10 Saima
11 Syeeda
12 Ayla 1961 65 Gelniffer 320
13 Balga 調査作業船 1983 10 14.0 アルミ Daf 160
14 Badip
15 Aries 1966 6 Mercedes 132
16 Accord
17 Appollo Cummins 212
18 Agile
19 Alert
20 Angel
21 Shama 検査ボート 1963 60 10.0 鋼板 RollsRoyse 524
22 Samia 1975 128 10.7 Daihatsu 600
23 Hattya 1935 33 12.0 Ajak -
24 Sonartori 1980 50 10.0 Yanmer 180
25 Sonar Kheya
26 Azra 1961 65 11.0 Gleniffer 320
27 Amina
28 Karatoya 1982 40 10.0 Volvo 270
29 Shaku 1989 20 9.0
30 Astral 検査作業船 1966 6 14.0 アルミ Mercedes 132
31 Argus
32 Aris
33 Amber
34 Flying Recorder 1965 4 10.0 鋼板 BMC 90
35 Workboat No.1 1975 20 Isuzu 200
36 Hamza サルベージクレーン 1964 512 - Klockner 500
37 Rustom 1983 600 - Daf 200
38 Siddique 訓練船 1966 156 12.5 - 650
39 Mohana 試作曳航船 1983 Daf 188
40 Agrant 1975 136 10.0 Daihatsu 600
41 Agrabahak 1976 56 Volvo 672
42 Agrajan 1975 88 9.5 540
43 Agradoot 1964 74 Mercedes 630
44 Agrapathik 1983 180 10.0 Duetz 700
45 Agrajatra 1991 138 10.5 Detroit 880
46 Asha-1 1975 43 8.0 460
47 Asha-2
48 Probal 1987 20 Duetz 280
49 Panna 1981 16 Yanmer 120
50 Mukta
51 Khanak 浚渫船 1969 - - Caterpiller 850
52 Delta-1 1971 - - 1125
53 Delta-2 - -
54 Dredger-135 1975 - -
55 Dredger-136 - -
56 Dredger-137 - -
57 Dredger-138 - -
58 Dredger-139 - -
59 Khanika-1 クレーンボート 28 6.5 GM 240
60 Khanika-2
61 Khanika-3
62 Khanika-4
63 Khanika-5
64 Flipper 1971 25 Caterpiller 235
65 Dolphin
66 Dredge Tender 1974 35 GM 450
67 Durdun 測深ボート 1976 7 - 150
68 Nirjharini オイル船 1975 110 - Volvo 270
69 Saki 水船 1978 100 - Deutz 240
70 OBD-1 燃料船 1966 - - - -
71 OBD-2 - - - -
72 OBD-3 - - - -
73 OBD-6 - - - -
74 OBD-7 - - - -
75 OBD-8 - - - -
76 House boat No.1 船員居住船 1975 - - - -
77 House boat No.2 - - - -
78 House boat No.3 - - - -
79 House boat No.4 - - - -
80 House boat No.5 - - - -
81 House boat No.6 - - - -
82 House boat No.7 - - - -
83 House boat No.8 - - - -
84 House boat No.9 - - - -
85 House boat No.10 - - - -
86 OBD-5 浮き作業船 1974 - - - -
出所:BITWAにて作成
 バングラデシュは3大河川の合流点により広大なデルタ地帯を形成している特殊な地形から河川、及び沿岸海域を利用した輸送が同国における人及び物資の基本的輸送手段となっている。現在、モンスーンの季節には約6,000キロ、乾季(12月〜5月)には約4,000キロの水路がエンジンを搭載した船舶で航行可能となっており、エンジンを搭載しないボートを含めると国内で100万艘の舟艇が運航されていると推定される。
 国土の約3分の2は洪水に対して無防備な状態で、図4-1のごとく国土の大半が毎年2〜5ヶ月間、特にモンスーンの時期に水面下に埋没している。結果として、道路・鉄道などの陸上輸送は洪水の被害により機能が停止することが多く、同国の地形及び気候条件から有効な輸送手段にならないのが現実である。対照的に、内陸水運は自然条件をうまく利用したコストの安い輸送手段となっている。
図4-1 バングラデシュ国土の洪水による被害面積と比率
(拡大画面: 47 KB)
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 一方、同国では、40の主要河川で約2,200隻のフェリーが運航されており、旅客・貨物にとって主要な輸送手段となっているが、しばしば貨客のオーバーロードやフェリーそのものの老朽化と補修の欠如、安全装置・機器の不備、未熟練の船員、モンスーン・洪水などの厳しい気候条件で船舶乗揚げ座礁、衝突といった事故が多発し、表4-17に示すとおり、2000年には1〜6月の間に131名以上の死者を出している。このため、同庁は航路標識整備の実施により、水路事故災害の防止に努め、輸送航路網を安全且つ能率的に維持・管理することが急務となっている。
表4-17 バングラデシュの海難事故発生件数
年度 事故件数 死者数 負傷者数 行方不明者数
1990 13 168 n.a n.a
1991 11 19 3 n.a
1992 17 5 3 n.a
1993 24 183 24 n.a
1994 27 303 20 n.a
1995 19 40 79 60
1996 20 147 5 47
1997 11 102 36 2
1998 10 91 91 58
1999 6 104 n.a 11
2000(1〜6) 7 131 50 50
合計 165 1,293 311 228
註: 内陸または沿岸海域における海難事故は主に座礁事故で、乾季に水深が浅くなり水路が狭まることに起因している。
出所:BITWAにて作成
2-3-3 環境省・環境局(Department of Environment : DOE)
 
 環境省・環境局では河川、沿岸海域の水質の調査・モニターなどを通じて環境調査を行っているが、調査船そのものは保有していない。
2-4 業界の抱える問題点と政策ニーズ
 
 河川及び沿岸海域の輸送航路網を安全且つ効率的に保つことはバングラデシュを経済的に向上させる必要最低条件である。河川及び沿岸海域での船舶の乗揚げ座礁、衝突等水路事故、災害を防止して同国の基本的輸送手段を安全且つ能率的に維持・管理し、また向上させるためには航路標識整備の実施・確立は重要な一方策である。 
 しかしながらバングラデシュの経済・財政状況から独力でこれらの整備等を行うことは困難であり、整備のためには他国の経済援助等が必要となっているのが現状である。








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