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1-4 貿易
 
 国家統計局の発表によると、2000年の貿易総額は、前年比5.6%増の694億6,400万米ドルとなった。1999年には対前年比11.2%増を記録したため、2000年の伸びは、比較的緩やかであったといえる。輸出は、フィリピンの輸出総額の70%を占める電気・電子部門が好調で、前年比8.7%増の380億780万米ドル。一方、国内需要が伸び悩んでいるため、輸入は前年比2.1%増の313億8,700万米ドルにとどまった。表2-2にフィリピンの貿易額の推移を示す。
表2-2 フィリピンの貿易額の推移 (単位:100万米ドル、%)
  1998年 1999年 2000年
輸入 29,660 30,742 31,387
    前年比伸び率   3.6% 2.1%
輸出 29,497 35,037 38,078
    前年比伸び率   18.8% 8.7%
貿易総額 59,157 65,779 69,464
    前年比伸び率   11.2% 5.6%
貿易収支 -163 4,294 6,691
出所:貿易産業省
 2000年通年の品目別内訳は未発表であるが、12月単月では、電子製品の輸出が好調を持続して、同月の輸出額は20億ドルを突破したほか、衣料品も前年同月比で20%近い伸びを見せた。家具・木工品(同56.3%)やココナツ油(同108.4%)なども大幅に伸張し、石油製品(同399.7%)は約4倍に達した。
 また、品目別内訳について、1999年の統計から分析すると、世界的なITブームによる需要増を受け、電子部品の1999年の年間輸出高は253億4,300万米ドルに達し、前年対比27.5%と大きく伸びた。これにより、電子部品の輸出に占めるシェアは98年の67.4%から99年には72.3%を拡大している。とくに半導体関連部品は輸出全体の6割近くを占め、99年は伸び率26.9%と輸出をけん引している。衣類、食品類など伝統的な輸出品目は、人件費の上昇などにより、競争力が低下し、輸出は前年比でマイナスを記録している。
 一方、品目別輸入では、輸出と同様、電気・電子機器・同部品が最大の輸入品目で、輸入に占めるシェアは4割以上に上る。特にIC部品、半導体チップなど電子部品が輸入の中心で、部品を輸入し、国内で組み当て、輸出するという貿易構造が明確にあらわれている。表2-3にフィリピンの主要品目別輸出入を示す。
表2-3 フィリピンの主要品目別輸出入 (単位:100万米ドル、%)
品目 輸出 輸入
1998年 1999年 増減率 構成比 1998年 1999年 増減率 構成比
衣類 2,260 2,171 -3.9% 6.2% 41 34 -17.1% 0.1%
食品類 1,274 1,178 -75.0% 3.4% 2,246 2,074 -7.7% 6.8%
電気・電子機器 19,873 25,343 27.5% 72.3% 13,204 13,249 0.3% 43.1%
 半導体関連部品 15,665 19,880 26.9% 56.7% 9,131 9,471 3.7% 30.8%
 電気機器・部品 510 580 13.7% 1.7% 1,386 1,267 -8.6% 4.1%
 事務用機器・部品 2,713 4,147 52.9% 11.8% 1,548 1,442 -6.8% 4.7%
輸送機械・同部品 649 891 37.2% 2.5% 1,040 988 -5.0% 3.2%
その他 5,440 5,450 0.2% 15.6% 13,127 14,378 9.5% 46.8%
合計 29,496 35,033 18.8% 100.0% 29,658 30,723 3.6% 100.0%
出所:貿易産業省
出典:ジェトロ貿易白書
 貿易相手国別では、輸出先は米国が113億5,800万米ドルで、輸出総額の約30%を占め、引き続きトップである。続いて日本は56億700万米ドルで、対前年比20.2%を大きな伸びを示した。一方、輸入では、米国からの輸入が53億2,000万米ドルと16.4%と落ち込み、日本が首位にたったが、日本からの輸入も60億2,700万米ドルと、対前年比1.8%の微減である。輸入が大幅伸びたのは、シンガポール、台湾、マレーシアである。これは、フィリピンで電子部品や製品の組み立てに使う部品類の調達先が、日本や米国から、価格競争力の高いこれらの国にシフトしていることが背景にあると考えられる。表2-4にフィリピンの主要国・地域別輸出入を示す。
表2-4 フィリピンの主要国・地域別輸出入 (単位:100万米ドル、%)
輸出 輸入
1999年 2000年 伸び率 1999年 2000年 伸び率
米国 10,445 11,358 8.7% 日本 6,136 6,027 -1.8%
日本 4,664 5,607 20.2% 米国 6,365 5,320 -16.4%
シンガポール 2,467 3,122 26.6% 韓国 2,723 2,350 -13.7%
オランダ 2,865 2,983 4.1% シンガポール 1,742 2,114 21.4%
台湾 2,993 2,861 -4.4% 台湾 1,614 1,945 20.5%
香港 1,947 1,907 -2.1% 香港 1,226 1,217 -0.7%
韓国 1,032 1,174 13.8% マレーシア 979 1,141 16.5%
英国 1,766 1,507 -14.7% タイ 822 845 2.8%
ドイツ 1,229 1,328 8.1% オーストラリア 757 816 7.8%
マレーシア 1,479 1,376 -7.0% イラン 666 796 19.5%
その他 4,149 4,854 17.0% その他 7,712 8,814 14.3%
総額 35,037 38,077 8.7% 総額 30,742 31,387 2.1%
出所:国家統計局
1-5 投資
 
 国家統計調整委員会(NSCB)は、投資委員会(BOI)、フィリピン経済区庁(PEZA)、クラーク開発公社(CDC)、スービック湾都市開発庁(SBMA)が認可した外国直接投資受け入れ額(認可ベース)を集計・公表している。このうちBOIは87年に制定された包括投資法に基づき、投資優先分野に投資する企業の認可期間であり、PEZAは95年に制定された特別経済区法に基づき、経済特区(エコゾーン)に進出する企業の認可機関である。
 NSCBの発表によると、2000年の投資認可額は、804億ペソで、前年25%減となった。このうち、オランダと日本からの投資が半分以上を占め、それぞれ全投資認可額の34%、25%となっている。1999年に実績のなかったオランダが首位に出たのは、フィリップス社のCDMA(符号分割多元接続)用等の半導体製造プロジェクトによるものである。業種別には、製造業が全体の90%を占めている。2000年通年の国別、および業種別のデータが未発表のため、表2-5および表2-6に1-6月までのデータを記す。
表2-5 国・地域別対内直接投資(認可ベース) (単位:100万ペソ、%)
1997年 1998年 1999年 2000年1-6月
日本 41,222 43,864 12,204 8,659
米国 42,011 16,917 8,895 3,343
ドイツ 1,462 2,850 3,029 6,020
英国 33,086 585 13,600 70
オランダ 10,767 710 0 10,613
フランス 79,040 121 526 0
イタリア 19 30,412 0 0
アジアNIES 12,947 36,449 3,402 1,365
 韓国 2,110 442 537 286
 台湾 2,374 1,246 749 200
 香港 1,153 25,540 90 5
 シンガポール 7,310 9,221 2,026 874
インドネシア 0 0 3,517 0
その他 41,599 39,662 61,567 1,409
出所:国家統計調整委員会(NSCB)
出典:ジェトロ投資白書
表2-6 業種別対内直接投資(認可ベース) (単位:100万ペソ、%)
業種 1997年 1998年 1999年 2000年1-6月
農業 780 32 174 0
鉱業 5,673 2,609 416 36
製造業 81,715 91,962 92,617 30,933
電力 16,584 33,226 6,920 0
水道 106,063 0 0 0
建設 15,209 149 15 67
商業 291 35 528 0
運輸 296 7,681 2,418 40
倉庫 52 489 1,549 56
通信 10,490 8 6 10
金融・不動産 24,186 32,607 266 8
サービス 813 2,773 1,830 330
出所:国家統計調整委員会(NSCB)
出典:ジェトロ投資白書
 誘致機関別にみると、BOIが155億2,900万ペソとこれまで最低の数字となり、首位の座をPEZAに明けわたした。また、SBMAが前年度減となった。それに対し、PEZAが90%増と大きな伸びを示した。表2-7に誘致機関別の投資額を示す。
表2-7 誘致機関別対内直接投資(認可ベース) (単位:100万ペソ、%)
機関 1997年 1998年 1999年 2000年 1999-2000年伸び率
BOI 184,530 119,642 70,723 15,529 -78.0%
PEZA 73,517 48,108 32,061 61,089 90.5%
SBMA 3,167 3,401 2,854 1,988 -30.3%
CDC 938 419 1,102 1,768 60.4%
合計 262,153 171,570 106,740 80,374 -24.7%
出所:国家統計調整委員会(NSCB)
 PEZAへの投資の55%を占めるエレクトロニクス業界は引き続き堅調で、半導体業界は、フィリピン半導体・エレクトロニクス産業連盟(SEIPI)によると、半導体各社の2001年の投資総額が10億米ドルに達すると強気の見込みを発表している。PEZAが認可した大型案件としては、上述のフィリップス社のほか、ドイツのルフトハンザ航空の航空機メインテナンスサービス、エプソン・プレシジョンの水晶振動子製造などがある。これ以外では、全体的に規模が小型化している。その背景は、大企業は既にフィリピンをはじめとする生産コストの低い国・地域に生産拠点を構築しており、これらの企業へ部品を供給するベンダー企業が進出しているためである。なお、PEZAへの1995年から2000年への累積投資額をみると、国別では日本がトップで36.9%、業種別では電子部品・製品で55.6%となっている。
 また、IT産業も大きな伸びを見せている。PEZAの投資認可案件のうち、99年にはわずか2プロジェクトで8,808万4,000ペソだったのに対して、2000年は11プロジェクトで12億800万ペソとなり12.7倍に増加した。政府は国民の英語力や毎年3万人を越す理工系大卒者に加え、人件費が先進国に比較して安いことなどからIT産業の分野に国際競争力があるとみて、ハードだけでなくソフト分野も含めた産業振興および外資誘致に力をいれている。PEZAは99年10月、ソフト関連のIT企業および同企業の開発拠点(ITパーク)建設企業に対し、法人所得税の免除など従来の経済特別区への進出時と同様の優遇措置を与えることを決定した。2000年6月までに承認を受けていた3件に加え、2001年3月には、マニラ首都圏とセブにあるビルや工業団地5ヶ所にITパークの資格を付与した。なお、PEZAはパーク建設に与えられる優遇措置をビル建設に悪用される恐れがあるとして、2000年9月にITパーク建設業者に対する優遇措置の承認を一時凍結したが、2000年12月、対象地域を首都圏以外に限定した上で、承認を再開している。








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