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第2章 インドネシア海運業の現況
2-1 インドネシアの商船隊
 
 インドネシアの商船隊については、政府の公式統計は発表されていないが、Lloyd's社発行のWorld Fleet Statisticsによると、1999年のインドネシア商船隊は表1-9のとおり。
表1-9 インドネシアの商船隊(1999年)
  船舶数 GT CGT DWT
全体 2,369 3,241,462 5,438,092  
貨物船 1,449 2,939,027 4,247,798 4,060,914
その他の船 920 302,435 1,190,294  
液体バラ積船(LPG) 5 16,985 30,197 18,505
液体バラ積船(原油) 14 252,137 132,192 422,119
液体バラ積船(石油製品) 220 577,974 823,390 910,724
液体バラ積船(ケミカル) 19 26,634 52,910 45,024
液体バラ積船(その他の液体) 9 8,511 17,350 14,304
バラ積乾貨船 13 271,126 161,373 469,977
荷役装置付バラ積乾貨船 2 33,059 23,141 38,643
その他バラ積乾貨船 13 75,645 61,948 107,136
一般貨物船 807 1,189,605 1,852,838 1,750,157
旅客/その他乾貨物船 30 17,945 33,201 17,945
コンテナ船 12 44,082 51,538 56,081
冷蔵貨物船 5 4,068 8,340 6,505
Ro-Ro船 131 101,964 131,363 99,383
旅客/Ro-Ro船 46 51,933 120,992 23,954
旅客クルーズ船 2 1,149 3,894 373
旅客船 120 261,455 733,245 74,374
その他乾貨物船 2 4,755 6,886 7,912
漁船 334 80,286 318,652  
その他漁船 3 495 2,475  
海上補給船 53 33,306 143,555  
その他海上補給船 1 498 2,490  
調査船 13 10,011 36,148  
引船/押船 425 78,743 391,413  
浚渫船 23 68,853 160,500  
その他 68 30,253 135,061  
出所:Lloyd's Register
出典:World Fleet Statistics 1999より作成
 また、インドネシア船主協会(INSAーIndonesian National Ship-Owners Association)には、1999年時点で747社の会員企業がいるが、その数は1989年の306社に比べると2.4倍となっている。会員企業の報告によると、2000年1月現在のインドネシア籍船は、
932Unit 4,062,232DWT
892Unit 666,364GT
804Unit 781,833HP
となっている。
2-2 インドネシアの海運業
 
 インドネシアの海上輸送量については、国家統計局がデータを公表しているものがあるが、最新のものは1998年あるいは1999年版である。それによると、1999年の積荷量は2億5,290万トン、荷揚量は1億6,580万トンであった。表1-10にインドネシアの海上輸送量を示す。
表1-10 インドネシアの海上輸送量 (単位:1,000トン)
積荷 荷揚
国内貨物 国際貨物 合計 国内貨物 国際貨物 合計
1995 178,554 131,692 310,246 136,068 72,803 208,871
1996 160,953 132,693 293,646 141,150 74,178 215,328
1997 147,769 131,289 279,058 148,055 67,196 215,251
1998 113,487 133,700 247,187 119,795 47,138 166,933
1999 113,633 139,340 252,973 122,368 43,477 165,845
出所:国家統計局
 輸送量に占めるインドネシア籍船と外国籍船の割合の最新公式データはないが、インドネシア船主協会(INSA ーIndonesian National Ship-Owners Association)のコメントによると、インドネシア籍船が外国貨物輸送に占める割合は1980年代には、20%ほどであったが、1998年時点では、3%にまで減少しているという1 。また、国内輸送についても、1992年のインドネシア海運法第12号によると、国内諸島間の輸送は「沿岸貿易圏(Cabotage)」原則に則るものとなっているが、インドネシア海運会社の船舶保有量が充分でないため、多くの外国籍船が国内貨物を輸送しており、インドネシア籍船が占める割合は1998年時点で54%2 であるという。10数年の間に、インドネシア籍船が大幅に減少した理由は様々であるが、主な要因をあげると、次の点があげられる。
●政府の老朽船スクラップ政策:インドネシア政府は1984年に、30年以上の老朽船は1984年5月1日にスクラップ処分、25年以上のものは1985年1月にスクラップ処分にすることと決めた。政府はカラカジャヤ国内船近代化計画*で、老朽船の交換を試みたが、資金調達難もあり、需要のすべてを満たすことはできなかった。国際輸送労働者連盟(International Transport Workers Federation)のインドネシア担当報道官 Hanafi Rustandi氏によると、この政策によりインドネシアの海運業界は大きな打撃を受け、多くのインドネシアの船会社が倒産に陥った。政策施行前には、273あったインドネシア籍船は、103まで激減した。3
●規制緩和による外資参入:1987-88年の規制緩和により、国際貨物が外国企業に開放されたが、当時、インドネシアの海運企業は、貨物のコンテナ化に取り組みはじめたばかりだった。加えて老朽船のスクラップと代替船の調達にも取り組まなければならなかった。そこへ、外国企業の参入により競争が激化し、運賃が低下。すでにコンテナの設備を有していた外資海運会社がシェアを伸ばしていった。
●船舶ファイナンス:インドネシアの銀行は、船舶ファイナンスに対する知識が乏しく、また不動産などの利回りのいい案件に融資を優先させた。また、外資の銀行は、船舶建造の納期が遅れるケースが多かったため、徐々に船舶購入への融資をしなくなった。また、インドネシア国内の金利は高く、資金調達は容易ではなかった。
●付加価値税(VAT)**:船舶(新船、中古船を問わず)や部品の購入、修繕などに10%の付加価値税が課せられた。
●インドネシアの船舶クルーの所得税は一律25%に設定されている。近隣のシンガポールやマレーシアは、船舶クルーには所得税が加算されておらず、インドネシアの船主は経験のあるクルーを引き止めるために、通常所得税は会社負担にしている。
 
註:
* カラカジャヤ国内船近代化計画:政府が資金援助をして船舶を建造し、海運会社に船をリースするプロジェクト。20年間のリース後、海運会社が船を買い取るオプションがある。
** VATは、1999年に廃止された。
 
 また、INSAは旧スハルト政権下で、政府管轄の貨物(米、小麦など国営企業が輸入を独占していたものなど)は、入札を行っても、必ず決まった業者に発注されており、普通の(スハルト政権とコネクションのない)海運業者には出る幕がなかったことも、海運業界が発展しなかった1つの要因である4 、という。
 国営造船所のPT Dok & Perkapalan Kodja Bahari のIrnanda Laksamawan 部長によると、インドネシアの海運業が10年後に輸出入量の10%を取り扱うようになるためには、商船を現在より168万DWT増やして、428万DWTにしなければならないと試算している。これによると、2万4,000DWTの船24隻、3万6,000DWTの船30隻が必要で、6億5,600万ドルの投資を要するという5
2-3 インドネシアの港湾
 
 インドネシアは1万7,000千以上の島から構成されており、国内輸送、国際輸送ともに海運が重要な役割を占める。しかし、前述のような海運業者が抱える問題のほか、港湾インフラにも問題を抱えている。INSAの事務局長、Barens Th Saragih氏によると、「インドネシアには、国際交易に開放された港が130あるが、そのうちバルク船が利用できるのは3港しかない。」6という。そのため、小型船でシンガポールやマレーシアの港に持ち込み、積み替えている。こうしたことが、インドネシアの海運コストを競争力のないものにしているという。また、不充分なインフラに加え、インドネシアでは港湾局が直接、港湾労働の管理をしており、陸揚げ・船積みに要する時間が長い。そのため、船舶はバージの空きを何日も待たなければいけないこともあり、海運業の効率を悪化させている。
 さらに、アジア諸国では港湾の民営化がすすみ、競争は激しくなっている。こうした中、インドネシア政府も港湾の一部民営化に踏み切り、1999年に国有港湾公社PT Pelabuhan Indonesia (PELINDO)IIが管理するTanjong Priok港のジャカルタ国際コンテナターミナル(JICT)の株式51%を香港のHutchison Groupの子会社Grosbeakに、PELINDO IIIが管理するスラバヤのTanjong Perak港スラバヤ国際コンテナターミナルの株式49%をオーストラリアのP&O社に、コンセッションベースで売却した。JITCの発表によると、民営化直後の5ヶ月で、生産性が28.5%上昇し、1999年の売上は2億米ドルを記録した。また、スラバラの港を管理するPERINDO IIによると、民営化により、1999年の税引き前利益は、1998年の4,000万米ドルから1億3,500万米ドルへと上昇した7 。政府は、その他の主要港(メダン、ウジュンパンダン)の民営化も計画中である。ジャカルタ国際コンテナターミナルを運営するHutchison International Port Holdings社は、今後数年間で2億5,000万ドルを投資し、ジャカルタのKoja Termina 3を開発する予定である。この第3ターミナルが完成するとジャカルタ国際コンテナターミナルの貨物取り扱い能力は年間180万TEU となる8








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