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10 政策課題
10.1 沿岸輸送に関する施策
10.1.1 財政上
 
 海運振興のマスタープランでは、沿岸輸送促進のために計画された2つの主な財政上の解決策につき既に述べている。
 
・国際航海船舶事業者に対するものと同様の方法による沿岸船乗組員に対する所得税の減額
・国際海上事業者と供に沿岸輸送事業者に対する低貸付金利ローンの提供
 
 マスタープランは以下についても支援している。;
 
・海運業に従事しているタイ人及び外国人双方の投資家が得た配当に対する所得税免税
・外国人が海外輸送企業により多くの株式を所有することを許可するための投資規制の自由化
・外国海上輸送企業がタイに輸送関連事業を設立し、長期投資及びタイでの効果的な事業管理とともに管理事務所を設置することを条件として、タイの海上輸送企業と同様の方法で免税を受けることの許可
・完全及び迅速に国内の輸送分野に適用された場合、これら全ての解決策は船舶の一新及び沿岸輸送における技術革新を促進するであろう。
10.1.2 港湾施設及び手数料
 
手数料
 
 港湾手数料は、明らかに一部の沿岸輸送サービスに本質的な要因となる。タイの港が商業ベースで運営されること及び提供した施設の費用を償却することは適当である。しかし、港湾設備は高い固定費及び低い限界原価が特徴であり、港がこの目的を達成するための方法はかなり柔軟に対応できる。
 
 沿岸輸送の利益となるよう手数料を区分することは以下の理由により正当化される。;
 
・沿岸輸送は道路輸送との厳しい競争に直面しており、そのため沿岸輸送サービスに対する需要は海外輸送サービスに対する需要よりも非常に融通性のあるものである。
・沿岸輸送業務は、海外輸送業務よりも小規模な船舶を使用しており、それほど高価な施設を必要としない。沿岸輸送業務単体の費用は、故にかなり低いものである。
・沿岸輸送利用と関連した非常に重要な外的利益がある。これらの外的性質は、手数料構造にも承認されるべきである。
 
 タイの民間港湾事業者による港湾使用料は、海事産業振興委員会事務局により見直される。同見直しの過程は沿岸輸送事業者の使用料が適切に設定されていることを確認するために行われることが可能である。
 
施設
 
 Ro-Ro船及びバージは共に、沿岸輸送貨物の全輸送モードでの比率増加の中で重要な役割を果たすと考えられる。どちらの輸送形態もこれまでの港湾計画では高い優先度をつけられていないと思われる。将来の港湾計画ではRo-Ro船専用バース及びバージの適切な投錨地が確保されることとすべきである。
10.1.3 書類
 
 トラック輸送の書類は最小限であるのに対し、沿岸輸送者は国際輸送と同様の税関書式を含めた必要書類条件を満たさなければならない。多くの沿岸航路では、そのような書類の必要性は疑問である。必要書類の簡素化は、沿岸輸送をより魅力的な選択肢にするのに役立つであろう。
10.1.4 バージ登録
 
 現在のバージ登録の必要性は港湾局に幅広い自由裁量を与えており、バージ業界への新規参入の障害となっている。バージ業界の技術改良は相当の領域があり、バージの改良方法に障害はない。外洋でのバージの運航は、合法的かつ通常の沿岸輸送と見なされるべきであり、他の要素と同様に取り扱うべきである。これには投資及び外国人参加の自由化の促進に関連した条項も含まれる。
10.1.5 共同一貫輸送
 
 港-後背地リンケージに関する海事産業振興基本計画の推薦案の実行は、タイにおけるモーダルシフトに大きく貢献する可能性がある。これらは優先的に行われるべきである。
10.1.6 その他
 
 貨物の道路から沿岸輸送への移行を促進するのに役立つ他の方法には以下のものが含まれる。;
 
・政府及び産業フォーラムを通じ、短距離海上輸送の潜在的な環境上、安全上、経済上の利点に対する公衆の認識を高める。
・沿岸輸送に対する研究開発の援助。
・沿岸輸送促進における近隣諸国との地域的な協力の促進等。
・現在港、海運業者及びその他の関係者で使用している又は開発中の多種の港湾情報システムの統合の促進。
10.2 道路輸送に関する方法
 道路輸送は沿岸輸送の主な競争相手であり、道路利用の全費用が道路輸送価格に反映されない限り、貨物輸送の道路から海上へ移行の望ましいレベルの達成は難しいであろう。この分野では2つの重要な解決策が取られるべきである。
10.2.1 道路価格
 
 道路システムを利用する大型トラックに課される使用料には、最低限、これらによって引き起こされる道路損傷の全費用が反映されるべきである。理想的には、空気汚染、渋滞及び交通事故により被る死傷の費用を含む大型車両の道路利用による外的費用も使用料に反映されるべきである。
10.2.2 車両積載限度の遵守
 
 道路車両の過積載は、荷受人への貨物料金を減額する点では明らかな利点であるが、道路損傷の増加という多額の社会的費用も負わせている。トラック事業者及び荷受人双方に法を犯す強力な商業的動機があるため、施行を厳格にし、積載限度違反の代価を認識されるレベルに罰則を設定しない限り、過積載は続くと思われる。








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