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7.4.1 企業
 
 タイでは主に以下の4社が熱間圧延コイル及び冷間圧延コイルの製造及び販売を行っている。
 
Sahaviriyaグループ
 
 Sahaviriyaグループは、タイ湾の北西部バンサファンで主要な製造設備を運営しているタイ企業であり、鉄鋼部門は日本の企業(日本鋼管)が出資し、技術指導している。同設備は約210万トンの鉄板を海外から輸入し、すべてを熱間圧延し、約200万トンの熱間圧延コイルを製造している。同製品の20%は海外へ輸出されている。
 
 現在の生産量は工場の生産能力の500万トンを大きく下回っている。約55%がタイの他の工場に輸送され、熱間圧延コイルから直接製造される冷間圧延コイル、鉄管、又はその他の製品の製造となっている。同製品の大多数(約83万トン)は、トラック(約30%)及びバージ(70%)によりバンコク及びその周辺地域に送られる。残量はほぼ全てバージによりマプタプトに送られる。
 
 残りの50万トンはSahaviriya工場で冷間圧延される。また50万トンの冷間圧延コイルを輸入している。総量の35%は海外に再輸出され、10万トンはバンサファンで電気亜鉛メッキ用に更に加工される。残量の55万トンの内、35万トンはバンコク及びその周辺地域に送られ、20万トンは東部沿岸地域に送られる。これらは全て道路輸送されている。同社は現在、バンコク及びレムチャバンへのRo-Ro船による定期航路運送会社の設立を考慮中である。
 
BHP Steel社
 
 BHP Steel社は、オーストラリアの鉄鋼メーカーの一部保有子会社で、マプタプトに統合製造工場を保有している。熱間圧延コイルは一部オーストラリア、一部Sahaviriya社のバンサファンの工場から輸入している。熱間圧延コイルはBHP社の工場で冷間圧延され、その後更に加工されzincalume及び色凝着製品になる。これらの商品は主としてバンコク及び周辺地域に輸送される。同製品の少量はバージによりチャオプラヤー川の民間埠頭に輸送される。残りはトラックで20トン単位で運ばれる。現在の生産量は年間15万トンで、35万トンの製造能力を大きく下回っている。
 
Siam United Steel(SUS)社
 
 Siam United Steel社は、日本(新日本製鐵)及び韓国企業の出資により設立された企業で、マプタプトで鉄鋼の冷間圧延を専門とする工場を運営している。熱間圧延コイルは主に海外から輸入されるが、少量はSahaviriya社のバンサファン工場から調達している。長期的には同比率が増加する可能性はあるが、現在SUS社はSahaviriya社製品の品質が錫鉄板の製造に使用される高品質仕様のコイルの製造に適していないと懸念している。
 
 冷コイルは工場から他地域に輸送されており、その送り先は主にバンコク及びその周辺であり、20%はラヨーン及び東部沿岸地域である。現在、全ての製品は道路輸送されているが、バンコクには民間埠頭を保有し、製品の海上での受け取りに備えている顧客もいる。SUS社は現在これらの顧客のニーズに合わせるべくバージによる運搬について検討中である。現在の生産量は50万トンで、100万トンの製造能力の約半分である。
 
Siam Strip Mill(SSM)社
 
 Siam Strip Mill社もマプタプトに位置しており、直接還元鉄鋼製造工場を設立したタイ投資家によるベンチャー企業である。同社は国産及び輸入の鉄くずから鉄鋼を製造し、その後工場で熱間圧延を行っている。その後パイプや構造用鋼の一部に使用するか、他の目的にあわせた鉄鋼に切断される。冷間圧延による加工は極少量行われている。
 
 SSM社の製品は、現在30%が輸出、70%が国内消費向けである。国内消費向け製品の大部分(総生産の50%)はバンコク及びその周辺に送られる。総製造の10%は東部沿岸部で消費され、残りはタイの各地にトラックで輸送される。
7.4.2 鉄鋼コイルの流れ
タイ国内での鉄鋼コイルの流れを、表7.4.2-1にまとめている。
表7.4.2-1: タイの鉄鋼コイル及び関連製品の移動 (1999年)
O-D 熱間圧延板 冷間圧延板 小計 合計
  トラック バージ トラック バージ トラック バージ  
バンサファン −マプタプト
-Sahaviriya社 10,000 260,000     10,000 260,000 270,000
-Siam Strip Mill社             -
-Siam United Steel社             -
合 計 10,000 260,000 - - 10,000 260,000 270,000
バンサファン−バンコク
-Sahaviriya社 250,000 580,000 350,000   600,000 580,000 1,180,000
-Siam Strip Mill社             -
-Siam United Steel社             -
合 計 250,000 580,000 350,000 - 600,000 580,000 1,180,000
バンサファン−レムチャバン
-Sahaviriya社     200,000   200,000   200,000
-Siam Strip Mill社             -
-Siam United Steel社             -
合 計 - - 200,000 - 200,000 - 200,000
マプタプト−バンコク
-Sahaviriya社             -
-Siam Strip Mill社 300,000       300,000   300,000
-Siam United Steel社     320,000 80,000 320,000 80,000 400,000
合 計 300,000 - 320,000 80,000 620,000 80,000 700,000
出典: Study Interview Program
7.5 輸送手段
7.5.1 道路輸送
 
トラックサイズ及び容量
 
 熱コイル及び冷コイルの道路輸送は主に10輪トラック又は18輪トラックとトレイラーの組み合わせで行われる。正式には、10輪トラックの制限積載荷重は13トンで、 18輪トラックとトレイラーによる制限積載荷重は23トンである。
 
主要路線
 
 鉄鋼の輸送に利用されている主要路線は図7.5.1-1に示されている。
 
バンサファン港〜バンコク港
 
 同路線は、プラチュアップキリカン県バンサファン地区のSahaviriya社グループ の鉄鋼生産工場が起点となっている。同路線は北部バンサファン地区バンサムヤックの幹線道路4号線へ曲がる前に、3169号線に続き、プラチュアップキリカン県のプランブリ地区、フアヒン地区を通り抜けている。その後道路は、チャウム地区、ムアンペッチャブリー地区、コアヨイ地区を通過してペッチャブリー県境と交差する。トラックはそれからラチュブリー県パクト地区バンシヤックの幹線道路35号線へと進路を変える。サムットソンクラーム県のムアン地区を通りぬけ、その後サムットサコーン県のマウン地区を通る。トラックは、東部沿岸部への主要道路とみなされている有料道路のダオカノン料金所を通りバンコクに到着する。
 バンサファン港からバンコク港への距離は約368kmである。
 
バンサファン港〜レムチャバン港
 
 同路線の第1段階はバンサファンからバンコクへの路線と同様である。トラックはダオカノンの料金所を通過してバンナへ向かう。そこからトラックはバンナの幹線道路34号線を走行し、その後バンプラコン地区の幹線道路36号線へと進路を変える。レムチャバン港へと向かう前に、同道路沿いに、バンノンカンコック、バンカオチェオンティエン、バンプラ貯水池、バンコンダラを通過する。
 バンサファン港からレムチャバン港への距離は約480kmである。
 
バンサファン港〜マプタプト工業団地港
 
 同路線の道程の大部分は、バンサファン港からレムチャバン港への路線と同様である。しかし、トラックがレムチャバン港付近を通過した後、幹線道路36号線に沿ってラヨーン県のマプタプト工業団地港へと続く。
 バンサファン港からマプタプト工業団地港への距離は約546 kmである。
 
マプタプト工業団地港〜バンコク港
 
 マプタプト工業港から、バンコク港へは幹線道路36号線を利用する。
 マプタプト工業団地港からバンコク港への距離は約193Kmである。
図7.5.1-1: 熱コイル及び冷コイル輸送の主要路線
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 表7.5.2-1はタイの鉄鋼製品の輸送に関連した主要港間の海上距離を示している。
表7.5.2-1: 主要鉄鋼路線の海上距離
航   路 距  離
バンサファン港〜バンコク港 300km
バンサファン港〜レムチャバン港 260km
バンサファン港〜マプタプト 240km
マプタプト工業団地港〜バンコク港 180km
 
 これらの路線は図7.5.2-1に示されている。妥当な復路貨物量を得られる可能性のある路線は二重矢印で示してある。一重矢印で示された路線は、本質的には片道運航になり、往路は鉄鋼を運搬し、復路は空荷となる。
 
 バンサファンからレムチャバンへの路線も含まれている。これら2港間では現在鉄鋼の輸送はないが、レムチャバンはマプタプト港向けのコイルの避難港として利用される可能性がある。レムチャバンを基点港としての利用は、復路貨物を獲得できる可能性が高いため優位であり、Ro-Ro船サービスを開設できる可能性もある。
図7.5.2-1: 鉄鋼コイルの沿岸輸送可能航路
(拡大画面: 243 KB)
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