3.6 2層式反応によるシステムの有効性の検証
(1)目的
実排ガス試験に先立ち、本システムの有効性を検証する目的で、粉体でのMn2O3・2ZrO2(吸着剤)とV2O5/TiO2触媒(脱硝触媒)とを2層にし、脱硝性能の試験を行った。なお、ここで用いた反応装置は先に示した「吸着剤−脱硝触媒」2層触媒反応器を用いて試験を行っている。
(2)「吸着剤−脱硝触媒」2層反応システムの有効性の検証
図3.6-1に「吸着剤−脱硝触媒」2層反応システムによるNO除去反応の結果を吸着剤のみの場合と合わせて示す。また図中に点線で示したアンモニアの導入量は今回の実験ではあらかじめ吸着剤のみで求めた脱離量にあわせて導入量がNO対NH3がほぼ1対1となるように導入量を変化させている。実際のシステム操作では、触媒層を400℃以上の高温域で作動させることは想定していないので、400℃以上ではアンモニア濃度を3,500ppm一定で変動制御は行っていない。(400℃以上では過剰に供給している。)図3.6-1はアンモニアを吸着剤層の後段から導入した場合であるが、本条件下では、反応用模擬ガスとして100℃から500℃までに供給したNOの88%が除去できた。また、後段の触媒量を増大させることで供給量の98%程度のNOが除去できた。
また、図3.6-2に本実験系にSO2を200ppm共存させた場合と、アンモニアを吸着剤層の前段から供給した場合の結果を合わせて示した。SO2が共存してもNOの除去率には変化は見られず、88%のNOが除去された。
一方、吸着剤の前段からアンモニア導入した場合には、かえって排出されるNO量は増大している。これは吸着剤のMn2O3・2ZrO2上でのNH3酸化によりNOx排出量増大したものとおもわれる。吸着剤自体に選択還元能力があれば脱離時にN2として除去できる可能性があるが、Mn2O3・2ZrO2の場合にはマンガンの酸化力が高いために酸化反応が進行するものと思われる。したがって、アンモニアの導入位置は吸着剤の後段である必要がある。
図3.6-1 吸着剤−脱硝触媒システムによるNO除去反応
●:NO(1000ppm)-O2(10%)-H2O(10%)
■:2層反応(V2O5/TiO2=0.43g(SV=10,000h-1))
◆:2層反応(V2O5/TiO2=0.72g(SV=6,000h-1))
Mn2O3・2ZrO2=1.3g(SV=6,000h-1)、
Total flow rate = 100cm3/min.
図3.6-2 吸着剤−脱硝触媒システムによるNO除去反応
■:NO(1000ppm)-O2(10%)-H2O(10%)-NH3(前段:0〜3500ppm)
◆:NO(1000ppm)-O2(10%)-H2O(10%)
●:NO(1000ppm)-O2(10%)-H2O(10%)-NH3(後段:0〜3500ppm)
▲:NO(1000ppm)-O2(10%)-H2O(10%)-NH3(後段:0〜3500ppm)-SO2(200ppm)
Mn2O3・2ZrO2=1.3g(SV=6,000h-1)、V2O5/TiO2=0.43g(SV=10,000h-1)、
Total flow rate = 100cm3/min.
一方、今回用いた「吸着剤―脱硝触媒」2層反応器では以下の図3.6-3に示すように、吸着剤層と脱硝触媒層では20℃程度の温度差が生じており、後段の脱硝触媒の方が吸着剤層よりも温度が低くなってしまっている。したがって、実排ガスによる浄化では、システム設計や運用方法を検討する必要がある。
図3.6-3 2層反応器の昇温特性