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2.3 小型内航船の定義と航行条件
(1)はじめに
 試験を行うにあたり、想定する内航船のサイズ、航行パターンを精緻化し、実験条件の設定に反映することを目的として、日本内航海運組合総連合会(永田町:船舶会館内)におけるヒアリングと資料入手、および船主協会他の統計データの調査を行った。
 
(2)内航船の船型別船腹量
 内航船腹量は平成11年3月31日現在7,925隻、392万2,562総トンにのぼっている。内航船腹量を船型別構成でみると200総トン数未満が隻数比で過半数の53.4%を占めている。しかし、船型の大型化が年々進み内航船舶全体の平均総トン数は10年前に比べ27.6%の増加となっている。
 一般的に、小型内航船と定義されるのは総トン数499トン以下の船のことである。その中でも特に199トン以下の小型船は全内航船船腹数の50%以上を占める。したがって、主に本研究では199トン以下クラスへの適用を前提として、システムの運用条件を設定する。
表2.3-1 船型別船腹量
船型(G/T) 隻数(構成比%) 総トン数(G/T)
〜99 2,198 (27.7) 75,454 (1.9)
100〜199 2,032 (25.6) 358,404 (9.1)
200〜299 355 (4.5) 92,988 (2.4)
300〜399 333 (4.2) 117,399 (3.0)
400〜499 1,560 (19.7) 756,033 (19.3)
500〜699 543 (6.9) 363,653 (9.3)
700〜999 294 (3.7) 254,126 (6.5)
1,000〜1,999 237 (3.0) 350,654 (8.9)
2,000〜2,999 141 (1.8) 384,927 (9.8)
3,000〜4,999 128 (1.6) 470,830 (12.0)
4,500〜6,499 69 (0.9) 363,458 (9.3)
6,500〜 35 (0.4) 334,636 (8.5)
合計 7,925(100.0) 392,2562(100.0)
平均 388 495
グレー部分: 小型内航船
(「内航海運の現状」1999 日本内航海運組合総連合会)
*フェリー等の旅客船は含まず
*船型 499まで小型内航船
 
(3)内航船の船種別船腹量
 船種別には土・砂利・石材専用船および自動車専用船を除いたその他の貨物船が隻数比で59.1%総トン数比で41.3%を占めている。また油送船は隻数比で19.1%総トン数費で23.1%となっている。平均総トン数では自動車専用船が3,826総トンと最も大きく、これにセメント専用船の2,251総トンが続き油送船は599総トンその他の貨物船は346総トンである。(表2.3-2)
 また、表2.3-3に示すように、旅客船は平成10年4月1日現在で2,516隻となっている。
表2.3-2 内航船の船種別船腹量
船種 隻数 総トン数(G/T)
土・砂利・石材専船 990 467,550 [472]
自動車専用船 62 237,195 [3826]
その他の貨物船(コンテナ、石炭、石灰石、ROROなど) 4,684 1,618,792 [346]
セメント専用船 198 445,736 [2251]
貨物船計 5,934 2,769,273 [467]
油送船 1,516 907,931 [599]
特殊タンク船 475 245,358 [517]
合計 7,925 3,922,562 [495]
(「内航海運の現状」1999 日本内航海運組合総連合会)
[ ]内は平均総トン数(平成11年3月31日現在)
表2.3-3 国内旅客航路事業の概要
船種 隻数 総トン数(G/T)
一般旅客定期航路 1,245 1,339,673 [1,076]
特定旅客定期航路 15 638 [43]
旅客不定期航路 1,256 52,671 [42]
2,516 1,392,982 [554]
うちフェリー 449 1,232,361 [2,745]
(「海運統計要覧」1999 社団法人日本船主協会)
[ ]内は平均総トン数(平成10年4月1日現在)
(4)内航船の航行距離
 小型内航船の航行パターンは個々の事例によってかなり異なり、航行時間も数十分〜1日と幅広い。そこで東京湾内の内航船の航行事例をもとに、港湾内を航行する内航船のモデル航行パターンの検討を行うこととした。
 表2.3-4、5に示すように、環境省が実施した「船舶排出大気汚染物質削減手法検討調査」の中で東京湾エリアにおける港湾間の距離と航行時間の推定が行われている。この調査では表示された航行距離間を航行する船舶の運転モードを負荷率の異なる5ランクに分類し、それぞれのモードにおいて想定される航行距離から港湾間の運転時間および平均負荷率を推定している。
 これらのデータから港湾間の航行距離は10kmから40km程度の範囲内であり、航行時間は43分から125分程度の航行時間と推定できる。
 また、東京都環境保全局が実施したヒアリング調査によれば、東京湾内においてタグ作業を行う曳船の1作業あたりの平均航行時間は119分となっている。(船舶に係る大気汚染物質排出実態調査、東京都環境保全局 平成3年)
表2.3-4 東京湾エリア港湾間航行距離
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表2.3-5 東京湾エリア港湾間における推定航行時間
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(出典:「船舶排出大気汚染物質削減手法検討調査」報告書、環境庁 平成5年)
 
(5)小型内航船の使用燃料
 表2.3-6に示すように、小型貨物船、油送船における使用燃料はA重油が最も一般的である。また、内航船の船種類別燃料の調査事例を表2.3-7〜9に示す。この調査は日本内航海運組合層連合会参加の5組合所属の3,129隻に対して行われたアンケート結果である。これらの表をみると、1,000馬力以下の貨物船ではA重油を使用する船舶が多く、90%程度であるのに対し、2,000馬力以上の船舶では逆にほとんどがC重油を用いている。内航船舶の専用船に関しては1,000馬力以下ではほとんどがA重油を使用しており2,000馬力以上ではA、B、C重油の割合がほぼ同程度となっている。C重油の使用割合が高いものは5,000馬力以上である。油送船に関しても同様に大型船ほどC重油の使用割合が高い傾向にある。
 これらの事例から、本調査研究で対象とする499トン以下クラス、特に199トンクラス程度の船舶はほとんどがA重油を使用していることが推定できる。
表2.3-6 日本国内における燃料種類別燃料消費量(推定値:1996年)
単位:103t
産業・船種・船型 燃 料 種 別 合計
区分 ガソリン 灯油 軽油 A重油 B重油 C重油
内 航 貨 物 貨物船 大型 181 32 879 1,092
小型 780 49 279 1,209
小計 961 181 1,159 2,301
油送船 特大 38 2 179 219
大型 42 3 195 240
小型 306 20 105 432
小計 386 25 479 890
旅客 186 311 17 1,460 1,974
タグボート 95 95
その他 5 13 18
5 199 1,752 224 3,098 5,278
漁業 398 125 894 2,407 1 18 3,842
レジャー 72 72
合計 470 130 1,092 4,159 225 3,116 9,193
注:表中数値は小数点以下四捨五入のため、合計値が一致しない場合がある。
(出典:平成10年度「船舶排ガスの地球環境への影響と防止技術の調査」報告書、シップ・アンド・オーシャン財団.)
表2.3-7 貨物船における燃料消費量
PS別 隻数 油種 合計
(kl)
A重油(kl) B重油(kl) C重油(kl)
500 未満 319 2,577 1 0 2,578
500〜1,000未満 646 11,026 1,727 108 13,685
1,000〜1,500未満 513 8,319 4,032 6,460 21,454
1,500〜2,000未満 266 4,441 4,364 2,919 15,964
2,000〜2,500未満 74 1,499 1,020 2,678 6,421
2,500〜3,000未満 5 142 0 510 652
3,000〜5,000未満 22 518 0 3,093 3,743
5,000  以上 4 190 0 1,282 1,472
小計 1,849 28,712 11,144 17,050 65,969
比率(%) 59.1 54.9 52.2 28.2 44.14
(内航船舶における燃料油種別需要調査報告書 日本内航海運組合総連合会をもとに作成)
表2.3-8 専用船における燃料消費量
PS別 隻数 油種 合計
(Kl)
A重油(kl) B重油(kl) C重油(kl)
500 未満 15 165 0 0 165
500〜1,000未満 14 858 76 0 1,039
1,000〜1,500未満 43 1,141 305 178 1,883
1,500〜2,000未満 24 769 459 101 1,731
2,000〜2,500未満 17 356 332 306 1,290
2,500〜3,000未満 22 660 497 631 2,648
3,000〜5,000未満 57 1,952 284 6,328 8,942
5,000  以上 38 1,522 0 12,451 13,973
小計 260 7,423 1,953 1,995 31,671
比率(%) 8.3 14.2 9.1 33.0 21.19
(内航船舶における燃料油種別需要調査報告書 日本内航海運組合総連合会をもとに作成)
表2.3-9 油送船における燃料消費量
PS別 隻数 油種 合計
(kl)
A重油(kl) B重油(kl) C重油(kl)
500 未満 221 1,875 5 0 1,880
500〜1,000未満 212 4,311 1,010 31 5,471
1,000〜1,500未満 220 3,385 4,162 1,994 10,932
1,500〜2,000未満 169 2,557 1,964 5,383 11,177
2,000〜2,500未満 120 2,269 987 7,054 11,399
2,500〜3,000未満 32 706 88 2,831 3,625
3,000〜5,000未満 46 1,066 58 6,208 7,332
5,000  以上 0 0 0 0 0
小計 1,020 16,169 8,274 23,501 51,816
比率(%) 32.6 30.9 38.7 38.8 34.67
(内航船舶における燃料油種別需要調査報告書 日本内航海運組合総連合会をもとに作成)
 一方、燃料中に含まれる硫黄含有率は、国産A重油の硫黄含有率は最大1.0wt%程度であり、平均0.5%程度と推定されている。(平成10年度「船舶排ガスの地球環境への影響と防止技術の調査」報告書、シップ・アンド・オーシャン財団.)一方、内航向けC重油の硫黄含有率は日本内航海運組合総連合会の調査によると平均2.3wt%程度とされている。
 また、東京都環境保全局が東京港湾内に入出港する船舶の所有者に対して行ったヒアリング調査結果によれば油種別の燃料性状は以下の表2.3-10に示す通りであり、平均値は0.67wt%となっている。一般的に燃料中に含まれる硫黄分1%は排ガス中に含まれるSO2濃度では200ppm程度に相当する。したがって、A重油を燃料として用いた場合には、排ガス中におよそ52〜230ppmの範囲(平均134ppm)のSO2が含まれることになる。実際に東京都環境保全局が実施した実測データを以下の表2.3-11に示す。標準的なA重油を用いた場合には120〜130ppm程度のSO2が排ガスが含まれていることが判る。
表2.3-10 東京港湾における船舶の燃料性状
燃料種別\項目 比重 硫黄含有率(%)
平均 MAX MIN
A重油 0.8552 0.67 1.15 0.26
B重油 0.9206 2.02 2.86 1.6
C重油 0.9572 2.39 2.87 1.45
(出典:船舶に係る大気汚染物質排出実態調査、東京都環境保全局 平成3年)
表2.3-11 舶用ディーゼル排ガス実測値
テスト機関概要 負荷率 出力 回転数 NOx濃度 SO2濃度 残存酸素
(%) (ps) (rpm) (ppm) (ppm) (%)
4サイクル 25% 400 573 1,480 -- 13.1
定格出力:1600PS 50% 800 723 1,220 123 12.4
定格回転数:910rpm 75% 1,200 827 1,060 128 12.6
90.12建造 100% 1,600 910 960 120 13
4サイクル 25% 150 840 500 64 14.4
定格出力:600×2PS 50% 300 860 520 61 14.3
定格回転数:900rpm 75% 150 880 520 69 13.8
86.3建造 100% 600 900 600 72 13.1
(出典:船舶に係る大気汚染物質排出実態調査、東京都環境保全局 平成3年)
*各エンジンを30分以上稼動させ暖気を行った後に測定。
(6)199総トン船用エンジンの出力・排気量および排ガス性状
 内航船舶明細書に示されている小型内航船の事例を表2.3-12に示す。代表的な199トンクラスの主機関馬力は200〜2,000psとかなり幅広くなっており、船種によってエンジン出力、種類が異なるため一義的に決めるのは困難であるが、新潟鐵工所のこれまでの納入実績によると、貨物船、タンカー等は735kw(1,000ps)前後の出力が一般的となっている。
表2.3-12 199トンクラスの内航船の事例
船名 船種 総トン数 主機関
冨貴丸
(中村船舶)
化学(リン酸液) 199.7 ヤンマー
D〈550ps〉
第五榮吉丸
(稚内海運)
貨物(一般貨物) 199.66 新潟鉄工所
6M26ZG〈650PS〉
菱真丸
(市川汽船)
セメント 199.66 新潟鉄工所
6MG20AX〈750PS〉
第二泉州丸
(小川佳雄)
貨物(穀物) 199.61 ヤンマー
D〈200ps〉
(内航船舶明細書(日本海運集会所)による)
 貨物船に適用される代表的な1,000ps低速エンジンのNOx値、排ガス量を図2.3-1に示した。この値はIMOのNOx規制をクリアーしていない値である。したがって、IMOの規制を考慮すると、今後このクラスの船舶に想定される排出NOx濃度としては1000ppm程度と考えられる。また、排ガス量は100%負荷相当時で5,000m3N/h程度である。
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図2.3-1 新潟鐵工所製1,000ps低速エンジンのNOx排出量および排ガス量








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