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4−5−4 多気筒エンジンの性能試験結果
1)燃焼室および噴射ノズルを同じ仕様とした単気筒エンジンとの性能比較
 多気筒エンジンの仕様は単気筒エンジンの性能試験結果をもとに選定した。そこで、この仕様における多気筒エンジンで得られた結果を単気筒エンジンと比較した。比較したときの試験条件を表4・11に示す。
 
表4・11 試験条件
連絡口面積比  1.5%
連絡口数  6(60°等分)
噴射ノズル  φ0.4×4-60°
回転速度  1200 rpm
負荷  4/4
燃料噴射時期  15〜0 degBTDC
 
 単気筒エンジンと比較したエンジン性能、燃焼経過を図4・50、図4・51にそれぞれ示す。多気筒エンジンの仕様は表4・11に示すように単気筒エンジンと同じ燃焼室および噴射ノズル仕様であるが、多気筒エンジンのほうが図示熱効率が高く、スモークは低くなっている。NOxは高くなっているが噴射時期の遅延側ではほぼ同等である。この性能差は過給圧の違いによるものと考えられる。単気筒エンジンの過給圧が試験ベンチ据え付けの過給装置により噴射時期に関係なく一定圧で供給されるのに対し、多気筒エンジンはターボチャージャのA/Rを比較的絞った仕様としたために過給圧が単気筒エンジンより高くなったこと、また、噴射時期の遅延側では排気温度が高くなることで過給圧が上昇したこと、さらに多気筒エンジンで使用した燃料噴射ポンプは、単気筒エンジンにおいて使用したものよりも燃料噴射圧力が10〜15%ほど高いことによるものである。一方、これまでの単気筒エンジンの試験結果より得られた噴射時期を遅延させても図示熱効率、スモークをさほど悪化することなくNOxの低減が図れる副室式燃焼方式特有の効果は多気筒エンジンでも同様に認められた。
 多気筒エンジンの燃焼経過は燃焼初期に熱発生率のピークが現れ、その後緩やかな拡散燃焼をともなう二山の熱発生パターンとなっている。同条件の単気筒エンジンの燃焼経過と比較すると、多気筒エンジンでは拡散燃焼の部分で単気筒エンジンよりも熱発生率が高く、燃焼の後期では低くなっており、多気筒エンジンのほうが若干燃焼期間が短くなっている。これは前に述べたように、本試験条件では多気筒エンジンのほうが吸気管圧力が高く、噴射圧も高い仕様で試験を行っている。このため、燃焼中期の拡散燃焼期間で燃焼が活発となったためと考えられる。
 以上のように、多気筒エンジンの性能、燃焼経過から多気筒エンジンの燃焼は概ね単気筒エンジンにおける燃焼を再現し、単気筒エンジンで決定した燃焼系の仕様はほぼ妥当である。
 
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図4・50 エンジンの性能線図
(単気筒エンジンとの比較)
 
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図4・51 エンジンの指圧線図
(単気筒エンジンとの比較)
 
2)ターボチャージャのA/Rの影響
 ターボチャージャの過給圧はエンジンの性能、燃焼を大きく左右する。本エンジンにおいては定格回転速度が比較的低いので、低速域から過給できトルク点の効率を重視したターボチャージャを選定すべきである。そこで、ターボチャージャのA/Rが性能に及ぼす影響について試験を行った。試験条件を表4・12に示す。
 
表4・12 試験条件
ターボチャージャA/R  12%、15%、20%
連絡口面積比  1.5%
連絡口数  6(60°等分)
噴射ノズル  φ0.4×4-60°
回転速度  1200 rpm
負荷  4/4
燃料噴射時期  10 degBTDC
 
 ターボチャージャのA/Rを変えた場合のエンジン性能、燃焼経過を図4・52、図4・53にそれぞれ示す。図示のとおりA/Rの違いは性能に大きく影響を及ぼしており、A/Rを小さく絞る方が試験した回転速度全域で図示熱効率が高く、スモークも最も低い。特に低速から中速域では性能差が大きく、高速側ではその差は小さくなっている。A/R12%はNOxはやや高くなっているがトルク点の効率、スモークの点で有利である。
 燃焼経過はA/Rが高いほど燃焼初期から中期にかけて熱発生率が高く、燃焼後期では逆に熱発生率が低くなって燃焼期間が短くなっている。これはA/Rが小さくなるほどターボチャージャのタービン開口面積が小さいためタービン流速が早くなって、その結果、過給圧が上昇して吸入空気量が増加したためである。その結果、高い空気過剰率での運転が可能となり、燃焼中期の熱発生率の増加、燃焼期間の短縮がなされたと考えられる。
 
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図4・52 エンジンの性能線図
(ターボチャージャのA/Rの影響)
 
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図4・53 エンジンの指圧線図
(ターボチャージャのA/Rの影響)








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