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3−3−6 多気筒エンジンの設計
1)多気筒エンジンの仕様
 RCEM、単気筒エンジンによる燃焼特性、エンジン性能、及び排ガス特性の評価結果を多気筒エンジンに反映し、廃食用油燃料による性能評価を行う。
 表3・6に多気筒エンジンの主仕様を示す。燃焼方式等の基本的な仕様は単気筒エンジンに同じである。
表3・6 4気筒エンジンの仕様
項目 仕様
形式 遮熱式4サイクル圧縮着火方式
燃焼方式 中央副室式燃焼方式
給気方式 過給機、インタークーラー付
気筒数 4気筒
内径×行程 φ110mm×125mm
排気量 4,751cc
燃料 廃食用油
圧縮比 16(単気筒結果反映予定)
副室容積比 39%(〃)
 
2)多気筒エンジンの主要構造
 単気筒エンジンの構造を基に、大物主要部品の概略、詳細設計を行った。シリンダの中央に副室と噴射ノズルを配置した中央副室式燃焼方式を採用し、燃焼室壁面には窒化珪素セラミックスを用い、その外周に空気層、低熱伝導材を配置した遮熱構造(いわゆる魔法瓶構造)等の基本的な構造は単気筒エンジンと同じである。
 シリンダ配置は、直列4気筒とし、ラジエター、クーリングファン、ウォータポンプ等の冷却系は除去している。
 大物部品としては、単気筒エンジンと同様に分割したセラミックポートライナーを組み込んだウォータジャケットのないシリンダヘッドと、シリンダライナー周囲のウォータジャケットを廃止したシリンダボディの設計を実施した。副室はシリンダヘッドの上方から挿入し、噴射ノズルの固定も兼ねた専用のホルダーでシリンダヘッドに装着される。噴射ノズルの燃料供給口が配置されるシリンダヘッドカバーは縦壁部を別体構造とし、組み立て作業の容易化を図る。ギヤタイミングトレインはエンジン後部に、吸気系、噴射ポンプはエンジン左側面、排気系はエンジン右側面に配置する。コンロッド、クランクシャフト、ベアリングキャップ等のピストンより下側の構成部品は水冷エンジンと同じでよいのでベースエンジンとなるいすゞ自動車(株)の量産エンジン用部品を採用する。図3・29に多気筒エンジンの縦断面、図3・30にシリンダヘッド形状、図3・31にシリンダボディ形状を示す。
 
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図3・29 多気筒エンジンの縦断面
 
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図3・30 多気筒エンジンのシリンダヘッド形状
 
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図3・31 多気筒エンジンのシリンダブロック形状
 
3−3−7 結 論
 以上、高温高圧容器を使用したメチルエステルの燃焼観察、廃食用油を燃料とした遮熱エンジンの性能試験、急速圧縮膨張装置を使用した廃食用油の燃焼観察を実施した。平成12年度に得られた結果は以下のようにまとめられる。
(1) 試作した副室式遮熱エンジンにおいて、燃料を廃食用油とした場合における燃焼上の問題点は少ない。
(2) エステル化などの処理・加工することなく廃食用油を、燃料としてそのまま遮熱エンジンに適用できる。
(3) 廃食用油を燃料とした遮熱エンジンでは、軽油とほぼ同等の性能・熱効率を見込める。
(4) 廃食用油では、NOxおよびスモークが低減する。特に、スモークは半減する。
(5) 試作した副室式遮熱エンジンにおいて、廃食用油と軽油との混合燃料としても、十分利用でき、多種燃料エンジンとしての可能性がある。
(6) 副室式遮熱エンジンにおいて、副室における燃料分布とそれによる燃料、混合気、燃焼ガスの早期噴出、主室における燃焼火炎のペネトレーションおよび副室噴流による主室燃焼の促進が性能向上のキーポイントである。
(7) 単気筒エンジンの試験結果に基づき、4気筒エンジンの主要構造部品を設計した。








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