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(7)輸送
 ロシア全般としては、寒冷な土地柄、陸上の輸送路の建設、維持コストが割高であることから、鉄路及び道路の普及率は先進国に比して低く、また整備状態も芳しくない。特にシベリア北辺には永久凍土が存在し、道路建設には、断熱工法または置換工法を採る必要があって建設・維持コストが膨大な額に上るため、この地域の陸上輸送の主体は冬季の氷上輸送となる。ロシアにはアムール川を例外としてユーラシア大陸を南から北へ流れる、オビ川、エニセイ川、レナ川等の大河川があり、これらの大河川を利用する内陸水運、北極海航路、及びシベリア鉄道、これらの水路・海路・鉄路を連結する道路、支線鉄道、及び空路がロシアの輸送システムを構成する。
 1990年の輸送量を100とした国内旅客及び貨物輸送量の動態を図2.27に示す。
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図2.27 国内旅客・貨物輸送量の推移
 貨物輸送の輸送手段比率(1999年)を図2.28に示す。
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図2.28 輸送手段別の貨物比率

 国内の政治・経済の混乱、不安定、衰退と生産システムの深刻な立ち遅れにより、旅客についても貨物についても、1990年以降漸減傾向を辿っている。
 ヨーロッパ・ロシアとシベリア鉄道沿いの地域を除けば、空路は殆ど唯一の人の移動手段である。既存の空路は、モスクワを中心として言わば放射状に発達し、極東ロシアの一部を除けば地方都市間の空路網は無きに等しい。国営航空エアロフロートの解体と共に、ロシア国内空路は分散民営化され、殆どの民営航空が経営危機に直面していて、旅客数を少なくとも現状維持、望ましくは増加させるための具体策に窮している。僻地に対する空路では、定期便航空は概ね採算上の理由から欠航頻度がかなり高く、定期便運航に比して運航条件の楽なチャーター便が、この空隙を埋めている。
 なお、図2.28では輸送量をton・kmで表しているから、輸送頻度が高くとも、短距離、軽量貨物であれば輸送量は少なくなる。長大なシベリア鉄道やパイプラインによる輸送量が高いのはこのためであり、実際にはロシアに隣接あるいは近接する欧州諸国からの自動車輸送はかなりの数量になっている。
 船舶による輸送については、北極海航路の運航頻度が激減していること、内陸水運を担う船舶が喫水制限もあって概して小型かつ老朽化船であり、載貨効率及び運航効率に問題があるものが多く、ton・kmベースの輸送量は高くならない。
 海外へ、および海外からの旅客数を見たものが図2.29である。
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図2.29 出入国者数の推移

 経済的困難にも関わらず、海外へ出掛けるロシア人の数はほぼ横這い状態であるが、これには海外旅行の自由化が大きな影響を与えている。
 1999年度について、ロシア人の渡航先を国別で見たものが図2.30であり、ロシアへの入国者を国別比率で示したものが図2.31である。
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図2.30 渡航先国比率
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図2.31 国別入国者比率
 渡航先としては、経費負担の楽な隣国や旅行費用の格安な国が目立つが、中国と同様、通称「シャトル貿易」と言われる商売人の渡航分がかなりの比率を占めている。
 ロシアへの入国者としては、隣接する各国からが大半を占めているが、商用目的での入国者が多い。
(8)通信
 対外開放政策が採られて以降、国際通信業は急成長しつつあるが、インターネットの普及率も大都市偏重で、全国平均では人口の数パーセントに過ぎず、また電話普及率の都市・農村格差も改善されていない。
 ここ数年での電話普及率の推移を図2.32に示す。
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図2.32 都市および農村部における電話普及率








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