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2.3 科学技術研究開発と大学教育
(1)科学技術研究開発
 軍事、宇宙技術を中核として巨額の国家資金を投じた科学技術研究開発は、民営化への路線変更後、自主開発方針が定まらぬまま、経済不況下にあって深刻な停滞状態にある。
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図2.33 各国の研究開発費(1999年)
 国家の赤字財政により、科学技術開発研究への財政支出は切り詰められ、旧体制で育った國際級の研究者達は、職を求めての海外移住、意に反する転職、研究時間を奪う長時間の副職など、様々な生き残り策を講じつつ苦難の生活に甘んじているものが少なくない。
 図2.33に示すように、主要国の研究開発費との比較してロシアの研究資金状況(1999年現在)は、先進国の1/2〜1/3であり、ロシアGDPの1%に過ぎない。図2.34はロシアにおける研究資金出所内訳(1999年)を示したものである。
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図2.34 研究資金出所内訳
 研究資金は国家予算からの支出が50%を占め、企業資金は16%程度のシェアである。大学の研究資金は異常に少なく、大学における基礎研究の荒廃が懸念されている。財政逼迫とは言え、現状では国際市場に通用する新製品の開発はおろか、将来、国力の鍵となる研究開発力を涵養することもできない。
(2) 大学教育
 明日の研究開発を担い、ロシア社会の中核人材となるべき大学教育は、旧体制からの転換期の混乱の中で一時期危機に瀕したが、その後ほぼ順調に回復し、進学率、大学数および学生数はいずれも増加している。西欧諸国に倣って、私立大学が創立されたが、学生の約90%は国立大学に学んでいる。ロシアの国立大学は、フィンランド等と同様、基本的には授業料を無料としているが、大学への財政支出激減のため、有料入学枠を新設、増加させ、財源確保を行っている大学も増加している。
 図2.35に、国立大学について学生在籍分野比率(2000年)を示す。教育分野専攻者の比率が高いのは、日本の戦後直後における新教育制度確立とやや似通った環境があり、新体制下での新しい教育理念の中で育った教育者の養成需要があるためでもある。学生の在籍分野別では、理工学分野専攻がほぼ横這いで推移し、市場経済化で求人需要の多い法律・経済分野専攻の学生が増加している。
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図2.35 学生在籍分野比率








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