2.2 ロシア経済
(1)ロシア資本と投資
ロシアの投資不足の現況は深刻である。固定資本投資は図2.7に示すように1999年には1990年時の23%まで落ち込んだ。その後若干回復機運が窺えるが根源的な回復力は弱い。
図2.7 固定資本投資の動態
投資構造を総固定資本投資額に対する比率で見たのが図2.8である。 鉱工業全体に対する投資は、1999年には総固定資本投資額全体の37%を占めるが、従前と異なり、その中での燃料・エネルギー部門の比重が急速に高くなっている。
エネルギー輸送や情報通信分野の急速な発展を背景に、運輸・通信部門へのインフラ的な投資も増大しつつある。また、その他分野への投資増の根底には、燃料・エネルギー産業の直接的、間接的な影響が見受けられる。教育・医療施設分野関連の建設整備への公共投資は落ち込み、生活環境整備が遅れ気味である。なお、農産物の市場経済化の影響による地方での農村荒廃が進む中、農業への投資は激減している。近代農業への転換資金を欠いて、ロシア農業はロシア社会の行く末に暗雲を投げかけている。
図2.8 固定資本投資の部門別構成
外国投資の動態を図2.9に示すが、投資模様は弱く、また、投資効果の大きな直接投資の占める割合も半分以下である。ロシアへの各国投資推移を図2.10に、2000年末までの累積投資額各国比率を図2.11に示す。
図2.9 ロシアへの外国投資
図2.10 各国の投資比率
図2.11 各国の累積投資額比率
沈滞した国内投資市場、ハード面での市場インフラとソフト面での関係法整備の立ち遅れ、政治経済の不安定要素等のため、ロシア市場の先行き判断が難しく、海外からの投資活動は低調と言える。
外国投資が活発な分野は、エネルギー関連を中心とする鉱工業であり、投資対象の約半分を占める。投資地域としてはモスクワ市が30%弱で際立って多く、石油・天然ガス開発が進むサハリン州は約10%で第2位を占めている。
今後、不法な資本の国外流出の防止、利子補給、投資優遇税制、投資を誘引する金融機関整備などの民間投資支援、重点産業や社会資本への国家投資の増加、国民の購買力の増強などが計られない限り、老朽化と施設廃棄が急速に進むロシア産業への投資増は望めないとの指摘がある。ロシア向け投資に関しては、日本はマイナー国である。