日本財団 図書館


(3)人口動態と労働力
 ロシアは先進国の中では、人口減少傾向を示す異例の国として知られている。体制転換後、年間80万人程度の人口自然減があり、ロシアへの移民流入も漸減の傾向が見られる。2025年にはロシア総人口は1.2億人になるとの予測もある。1999年現在、1000人あたりの出生率は、旧体制時代の約半分の8.3人であり、人口構成の高齢化も見られる。また平均寿命は男性59.8歳、女性72.2歳(1999年)、先進諸国に比して極めて低い状態にある。
 1994年の民族構成調査では、人口の83.0%がロシア人であり、タタール人3.8%,ウクライナ人2.4%、チュヴァシ人1.2%の順となっている。都市と農村との人口比率は、それぞれ73%、27%であり、経年変化は少ないが、1980年以降現在まで総播種面積は漸減の傾向にあることから、今後都市人口は漸増するものと思われる。なお、ロシアにおいても、都市部周辺への新鮮野菜の需要が高くなり、郊外での温室栽培が急増し、旧来農業の質的変化の兆しが見える。従って、従来の都市・農村人口区分についても実情を反映した区分の見直しがやがて必要となろう。
 ロシア国内での人口移動は、年間250〜300万人程度、国際的な流出入は60〜70万人程度となっている。旧体制下の国策により、あるいは高待遇を求めて辺境の地へ移住したロシア人は、冷戦構造の消滅により僻地の戦略的価値が薄れると共に職を失い、ロシア中心部へ移住しつつあったが、近年は主として経済的理由が背景にあって、CIS、バルト諸国からのロシア人帰還傾向が続いている。
 ロシアへの流入、ロシアから流出人口の動態を図2.5に示す。
z1006_01.jpg
図2.5 人口流入出動態
 体制転換後の失業者増加傾向は変わらず、1999年末には909万人(経済的活動人口の13%)に達している。失業率には人種的問題が絡んで地域格差が著しく、モスクワでの5.6%に対してイングーシ共和国では51.8%、タゲスタン共和国では31.2%と高い水準にある[注1]。失業率の漸増傾向を図2.6に示す。
注1:失業率
 ロシア統計では15〜72歳人口は、経済的活動人口と経済的非活動人口(学生、年金生活者、家事専従者等)とに区分し、経済的活動人口を就業人口と失業人口とに区分する。
 ロシアでは、職業斡旋上の国家雇用局の役割が低く、国家雇用局登録の失業者数は126万人でしかない。また、無給休暇を宣告されたもの、恒常的には雇用状態にないものなどがあり、ロシア定義による実質的な失業実態はロシア統計よりかなり悪いことになる。
z1006_02.jpg
図2.6 ロシアの失業率の変移
 民営化の進展により、所有形態では半数以上が私有企業となっている。 産業部門別では、市場経済化を反映して、商業、飲食業、金融、保険、各種サービス業に従事する者が次第に増えているが、生産部門の就業者比率は低下している。市場経済導入により、採算性の面で深刻な打撃を受けた機械工業、軽工業では、1999年までの10年間でその就業者数はほぼ半減した。一方国家的産業である、燃料・エネルギー、鉄鋼、非鉄部門では、就業者数の減少はほとんど見られない。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION