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(3)「21世紀における我が国の海洋ビジョンに関する調査研究」への進展
 今日、海上交通路は過密化の一途を辿り海運界はボーダーレス化を加速している。そのような中で、国連海洋法条約に基づく海洋管理に係わる様々な法令、協定や取極などが策定されつつあり、それらがまた海上交通の世界に影響と変化を及ぼすという循環を作っている。一方、冷戦終結による海軍力バランスの変化と海賊やテロなどの多種多様な危険、さらには海域の管轄権や海洋資源の取得権を巡っての国家間の対立が海洋の安全保障環境を不安定なものとし、海上交通ネットワークの連続性と持続性を脅かすようになっている。
 そのような状況認識のもと、多方面からの協力を得て本事業「アジア太平洋地域における海上交通網を巡る諸問題に関する調査研究」を実施し、当初予定した計画項目をほぼカバーする調査論文等を収集し分析・評価した。収集した調査論文は、いずれも豊富な統計資料による定量評価と的確な現状把握に基づいて問題点を明確に抽出し、かつ解決のための方向を示している。海外調査(「オーシャン・ガバナンス」、「海賊」に係わる各国際シンポジウムへの参加)と緊急討論会(「海上における危機管理」)での成果と併せ、所期の目的とする基礎的資料をほぼ収集することができた。
 収集した資料を統べると、歴史上経験したことのない新しいパラダイムの世界にある今日の海上交通網の実態が浮き彫りにされる。この成果と、本事業を通して結びつきを強めた世界の専門家や専門・実務機関等とのネットワークを有効に活用する態勢を整え、当財団が目指す「21世紀におけるわが国の海洋ビジョンに関する調査研究」事業のさらなる進展へと繋げることが検討されなければならない。進展の方向としては、例えば、本事業の成果としての「海上交通網の安定と発展」を全体の一部として捉え、21世紀における最重要課題である「平和的で持続可能な海洋利用」のための「法制」と「体制」と「実施」に係わる態勢の構築のためにリーダーシップを発揮し、地球的ニーズに応えることを目指す、などが考えられる。
 将来的には、成果を累積しつつ、当財団の定常的な活動の一環として、以下のことを実施して、海洋問題を解決する手段を提言していくこととしたい。
[1] 普及啓蒙としての、国際会議、講演会、シンポジウム等の開催
[2] 海洋に係わる政策、条約、諸制度、研究活動等に関する資料のデーターバンク化
[3] 資料の収集・配布を目的とした情報ネットワーク化
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[4] 国家の枠組みを超えて実施可能な諸活動 … 例えば科学調査や環境保護活動等








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