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4.3 フュミゲーション現象の計算による解析
4.3.1 フュミゲーションの計算例
 これまで、いくつかのフュミゲーション計算手法が提案されている。
1. 内部境界層内に進入したプルームは、攪拌され、内部境界層内では高度に関わらず濃度一定とする。(蒲生ら1977)
図4.3-1 内部境界層内の濃度を一定とする方式
(模式図)
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2. 海上では海上の拡散係数を用い、陸上では陸上の拡散係数を用いる。また、海陸の境界で滑らかに接続するために、海陸の境界線で拡散幅が同一となるような仮想煙源を想定し、陸上ではこの仮想煙源からの拡散を計算する。(社団法人舶用機関学会:平成5年度環境庁委託調査 船舶排出大気汚染物質削減手法検討調査報告書)
図4.3-2 仮想煙源を用いる計算方式
(模式図)
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 煙源高さは30m固定、有効煙突高による増分は0mとし、海上風速6m/sの条件で計算を行った。仮想煙源を用いる方式では陸上風速を3.0m/sとした。煙源強度は0.01Nm3/secとした。フュミゲーションを含まない計算を同一条件下で行い、それぞれの最大着地濃度の比を求めて最終的な判断を行った。
4.3.2 フュミゲーション計算の例(1)
 内部境界層内での濃度を一定とする方法で、フュミゲーション現象時の試算を行った。内部境界層は下層から直線的に上昇するように与えた。
 
 参考として、海上の大気安定度が不安定な場合の計算を行ったが、フュミゲーション時の結果はこの結果に類似している。また、海上が不安定である場合に対してもフュミゲーションの計算を適用したが、この場合は、フュミゲーションがない場合と比較してほとんど変化がなかった。
 
 煙源から最大着地濃度地点以内の近距離で内部境界層に進入した場合は地上に高濃度が発生するが、最大着地濃度地点以降で内部境界層に進入した場合、最大着地濃度以上の濃度は現れない。計算の結果、フュミゲーション強度は10倍のオーダーだと考えられる。
図4.3-3 フュミゲーション発生時の濃度断面図
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図4.3-4 フュミゲーション発生時・非発生時の地上濃度の比較
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表4.3-1 着地最大濃度の比
海上の安定度 A B C D E、F
煙源が海岸線にある場合 1.0 1.6 3.0 7.8 38.4
煙源が海岸線から1,000mの場合 1.0 1.0 1.0 1.4 7.2
4.3.3 フュミゲーション計算の例(2)
 環境庁H5年の方法は、フュミゲーションに限らず海陸での安定度と拡散幅の違いを表現した計算手法であるが、ここではフュミゲーション現象を再現できる計算モデルとしてフュミゲーション発生条件下での計算を行った。大気安定度の組み合わせは、海上で安定〜中立(E/FまたはD)、陸上で不安定〜中立(A、B、C)を用いた。なお、拡散係数導出に安達(1997)の方式を用いており、大気安定度EとFでは同じ拡散係数を用いている。
 それによれば、海上の大気安定度EまたはFから陸上の大気安定度Aと言う両極端な状態への進入に関して最大着地濃度比は最も大きくなりフュミゲーション非発生時の3.0倍となった。
図4.3-5 フュミゲーション発生時の濃度断面図
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海上の安定度E/Fから陸上の安定度Aへ進入した場合海陸の境界は風下距離2,000mの地点とした
図4.3-6 フュミゲーション発生・非発生時の地上濃度比較
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実線は海上の大気安定度B、C、D、Eでの地上濃度
破線は海上の大気安定度D、Eから陸上の大気安定度A、B、Cに進入した場合の地上濃度
表4.3-2 海上・陸上の大気安定度の組み合わせと最大着地濃度の比
海上の大気安定度 陸上の大気安定度
A B C
D 2.3 1.6 1.0
E/F 3.0 2.2 1.4
4.3.4 フュミゲーションの影響度
 フュミゲーションの発生率と強度から、年間における濃度平均値に対するフュミゲーションの影響を見積もり、その結果について年平均値への反映を行った。
 
 観測値によれば、フュミゲーション発生条件下では1.3倍程度の濃度が発生する。また、発生条件の全体濃度に対する濃度寄与度は8.8%である。これにより大まかに言って、フュミゲーションによる濃度増加は年平均値のうち2.0%程度であると考えられる。
 
 また、複数の計算事例による見積りから、フュミゲーション発生時は、非発生時の3倍〜10倍程度の濃度が発生すると考えられる。フュミゲーション発生条件であっても、必ずフュミゲーションが発生するとは限らないし、またすべての地点でフュミゲーションが発生するとは限らないことから、年間を通した値としては、測定値から算出した1.3倍の濃度発生という見積もりは妥当であると考えられる。
 
 また、フュミゲーションによる濃度増加は濃度の年平均値のうち、2.0%程度を占めると考えることができる。








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