2.2 風向・風速階級
風速階級は、0.4m/s以下の無風(または静穏)1階級と0.4m/sを超える有風6階級の合わせて7階級に分けた。有風に関しては16方位風向を用い、無風時は風向を考慮せずまとめて取り扱った。
表2.2-1 風速階級と代表値
階級 |
風速 |
代表風速 |
0 |
0.0〜0.4m/s |
0.4m/s |
1 |
0.5〜1.2m/s |
0.8m/s |
2 |
1.3〜2.2m/s |
1.7m/s |
3 |
2.3〜3.6m/s |
2.9m/s |
4 |
3.7〜5.0m/s |
4.3m/s |
5 |
5.1〜8.0m/s |
6.5m/s |
6 |
8.1m/s〜 |
10.0m/s |
拡散計算時の代表風速は各階級の平均を用いた。ただし、風速階級0については、風速0.4m/sとし、風速階級6については、階級1から5までの代表風速を外挿し、10.0m/sとした。
2.3 海上の大気安定度区分
大気安定度の導出は、安達(1997)に従い、Monin-Obukhovの大気安定度長からGolderの値を用いて大気安定度に読み替える方法を用いた。
数式2.3-1 Monin-Obukhovの大気安定度長 (Lv;Stability length) |
κ |
:カルマン定数0.4を用いる |
g |
:重力加速度9.8(m/s2) |
θvs |
:海面仮温位(K) |
θv |
:大気仮温位(K) |
u(10m) |
:地上高10mでの風速(m/s) |
CuN |
:中立時の運動量抵抗係数(0.75+0.067・u(10m))×10-3 |
CTN |
:中立時の熱量抵抗係数(1.3×10-3) |
海面仮温位としては海水温度を用い、大気仮温位としては気温の値を用いた。仮温位と温位の差は3%程度であり、鉛直方向の気圧の変化も、ここで対象としている数十メートル内ではほとんどなく、気温を温位として用いることに問題はないと考えられる。また、風速としては、地上、海上で観測された風速を用いた。
表2.3-1 大気安定度長Lvと大気安定度
大気安定度 |
大気安定度長 |
B |
-10m ≦ Lv < 0m |
C |
-25m ≦ Lv < -10m |
D |
25m < │Lv│ |
E |
10m < Lv ≦ 25m |
F |
0m < Lv ≦ 10m |
図2.3-1 風速、気温・海水温差と大気安定度区分
3 拡散式
3.1 実煙突高
船舶の実煙突高については、船舶排出大気汚染物質削減手法検討調査報告書(社団法人舶用機関学会:平成5年度環境庁委託調査)の手法を用い、船舶の総トン数に応じて求めた。
数式3.1-1 船舶の総トン数と実煙突高
H0=2.59・X0.23
H0:実煙突高(m)
X:総トン数
図3.1-1 船舶の総トン数と実煙突高
3.2 有効煙突高
過去の例(船舶排出大気汚染物質削減手法検討調査報告書(船舶排出大気汚染物質削減手法検討調査報告書、船舶排ガスの環境への影響と防止技術の調査報告書)に従い、無風・有風に関係なく、窒素酸化物総量規制マニュアル所載の電力中央研究所により修正されたCONCAWE式を用いた。ただし、煙突頂部における風速として船速の影響を考慮した。
数式3.2-1 船舶の有効煙突高
3.3 拡散基本式
拡散計算は、風向を16方位に区分して、水平方向拡散パラメータσyに無関係なプルームとして計算を行った。窒素酸化物総量規制マニュアルなどでは弱風時・無風時にパフ式を用いることが推奨されているが、海上でのパフ式に対する拡散幅については研究されていないため、弱風時・無風時についてもプルーム式で計算を行った。気象条件ごとに拡散計算を行なった後、気象条件ごとの出現頻度で重み付けした重ね合わせを行った。
図3.3-1 拡散計算に用いる座標系
数式3.3-1 水平方向拡散パラメータσyに無関係なプルーム式
C(R,z):計算点(R,z)における濃度
R:点煙源と計算点の水平距離(m)
Z:計算点のZ座標(m)
Qp:点煙源強度(Nm3/s)
u:風速(m/s)
He:有効煙突高(m)
σz:鉛直拡散パラメータ(鉛直方向の正規分布の標準偏差)
数式3.3-2 気象条件による重ね合わせ