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1. 【生態系の安定性】を示す項目
 以下には【生態系の安定性】を示すそれぞれの項目について評価・解析方法を示す。さらにデータが存在する項目については、代表6海湾について具体的な数値を示す。
【生態系の安定性】を示す項目は合計6項目で評価を行うが、
1. 生物組成
2. 生息空間
3. 生息環境
という3つの観点から評価項目を選定している。【生態系の安定性】を示す項目の一覧を表III-2に示す。
表III-2 【生態系の安定性】を示す項目の一覧
観点 番号 指標項目 調査方法 調査結果の見方
生物組成 生態-1 分類群毎の漁獲割合の推移 農林水産統計年報に基づき最近10年間の魚種別漁獲量を整理する。最近10年の平均値と最近3年間の平均値を整理し、分類群毎の漁獲割合を比較する。
分類群は浮魚、底魚、底生生物、貝類、海藻類、海藻養殖とする。
漁獲割合の一番大きい分類群の割合の変化に着目する。
生態-2 生物の出現状況 干潟や岩礁域等の沿岸域を目視及び聞き取り調査を行い、生物の生息をチェックする。 良好な環境を好む生物がどの程度生息しているのかに着目する。
生息空間 生態-3 藻場・干潟面積の推移 環境省の自然環境保全基礎調査に基づき、藻場及び干潟の面積の推移を整理する。
面積についてのデータがない場合は、聞き取り調査を行う。
藻場・干潟の面積の変化に着目する。
生態-4 海岸線延長の推移 環境省の自然環境保全基礎調査に基づき、海岸線の形状(自然・人工)の推移を整理する。 海岸線の形状の変化に着目する。
生息環境 生態-5 有害物質 公共用水域水質測定結果に基づき健康項目を整理する。
生物については、奇形等の異常個体、有害物質が原因で個体数が減少した種の報告例等を整理する。
水質基準等と照らし合わせる。
異常個体等の報告例の有無に着目する。
生態-6 底層水の溶存酸素濃度 公共用水域水質測定結果及び浅海定線調査に基づき底層の溶存酸素濃度の経年変化を整理する。 溶存酸素濃度が3mL/L以下を貧酸素状態とし、貧酸素状態の頻度に着目する。
 
1.1 分類群毎の漁獲割合の推移(項目番号:生態-1)
1.1.1 調査趣旨
 漁獲割合は海湾に生息する生物構成の指標となり、分類群(後述)ごとの構成が安定していれば生態系の擾乱が少ないということを意味する。
 
1.1.2 使用データ
農林水産統計年報
作成機関:農林水産省統計情報部
入手方法:社団法人全国農林統計協会連合会へ注文する。
社団法人全国農林統計協会連合会
〒153-0064 東京都目黒区下目黒3-9-13
TEL03-3495-6761 FAX03-3495-6762
使用データ:漁業地区別魚種別漁獲量及び養殖業別漁獲量
(漁業地区別あるいは魚種別のデータがない場合がある)
 
1.1.3 調査手法
 農林水産統計に基づき、最近10年間の魚種別漁獲量を整理する。最近10年の平均値と最近3年間の平均値を整理し、分類群毎の漁獲割合を比較する。分類群は浮魚、底魚、底生生物、貝類、海藻類、海藻養殖とする。漁獲対象種を分類する方法は表III-3に示すとおりである。
表III-3 漁獲対象種の分類
浮魚 イワシ類、アジ類、サバ類、ブリ類などの回遊性の魚類で遠洋・沖合漁業で漁獲されるマグロ類やカジキ類は除外している。
底魚 上記、浮魚を除く魚類で同様に遠洋・沖合漁業で漁獲されるマグロ類やカジキ類は除外している。ヒラメ類やタイ類など。
底生生物 エビ類、カニ類、タコ類、イカ類、ウニ類やその他の水産動物。
貝類 アワビ類、サザエ類、ハマグリ類、アサリ類
海藻類 ワカメ類、テングサ類などの採藻による漁獲
海藻養殖 ノリ養殖などの海藻類の養殖
 
 一方、構成割合の算定にあたっては、構成要素の推移を認識しやすいように、上記のように分類した分類群をさらに組み合わせて、以下の3つに分類する。
  浮遊系=  浮魚
  底生系=  底魚+底生生物+貝類
  海藻 =  海藻(漁獲)+藻類養殖
 分類群毎の漁獲割合の推移をみることにより、魚類を中心とした高次の海生生物の生息状況やそれらを取り巻く生態系の安定性を把握することができる。しかしながら、漁獲量はその海湾の健康状態を反映する一方で、浮魚などの外海からの移入が大きく変化することにより変動する。このような影響を除くために過去10年間にわたる平均的な漁獲割合を算定しておき、その平均値と調査対象年次の漁獲割合の比較して評価を行うこととする。
 
1.1.4 調査結果の評価手法
 調査結果の評価に際しては、「分類群別の漁獲割合が大きく変化していないか。」という観点で評価を行うものとする。
 「海の健康度」の評価基準は以下のよう設定する。
 
最近10年間の平均値と最近3年間の平均値とを比較し、漁獲割合の一番大きい分類群の割合が、20%以上変化していないこと。
 
 ここで、分類群のうちイワシ類等のように一般に自然状態で資源量の変動が大きい種を含んでいる浮魚類についても、一次検査では、上記の評価基準を適応し、二次検査の再検査で照査に検討することとする。
 
1.1.5 調査結果の事例
 分類群毎の漁獲量の推移を図III-2に示す。ここでは、昭和55年(1980年)、平成元年(1989年)および平成10年(1998年)のおよそ10年ごとの3つの年代で算定した。
 一方、図III-3には漁獲割合の変遷を整理した。算定した年代は分類群別の漁獲量と同年代である。円グラフの大きさは昭和55年に対する相対的な漁獲量を示す。
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図III-2 分類群別漁獲量の変遷
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図III-3 漁獲割合の変遷
 
1.1.6 注意点
 まず、海湾に生息する魚類の資源量に関わらず漁業者数の変化などの社会的要因によりデータが影響を受ける点が挙げられる。この点については、漁獲努力等で補正しても正確な見積もりが困難であることから、注意しながらデータを取り扱うこととする。
 また、対象海湾の空間的なスケールが小さくなると、海湾内の漁業者による水揚げ高が対象海湾内の資源量を反映していない場合も想定される。この場合は、対象海湾で操業している漁業者へ聞き取り調査を行い、対象海湾での漁獲量が総漁獲量占める割合を把握し、対象海湾での漁獲量及び漁獲割合を推定する。
 








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