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1.3 ニース大学沿岸海洋研究所(Nice)
 ニースの海岸線から少し内陸に入ったところにニース大学のキャンパスがある。「LABORATOIRE ENVIRONNEMENT MARIN LITTORAL(LEML)」は、キャンパスの正門を入った右手の丘の上の建物にある。LEML所長のMEINESZ博士の歓迎を受けた。LEMLは、博士を含め9人の研究者、研究生で構成され、沿岸域の藻場や潮間帯生物、生態系の調査研究を行っている。
 この研究室のメンバーは、全員がダイビングなどフィールドの調査に携わり、沿岸域の生物や環境を体感している。
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写真1-2 LEMLのメンバー
 
 MEINESZ博士は、地中海の海草(Posidonia)研究の権威で、外来海草であるtaxifoliaの繁殖がフランス地中海沿岸の藻場生態系に影響を及ぼすことを懸念している。沿岸域の藻場の調査は広域に及び、フランス沿岸でもモナコからマルセイユ近くまで200kmにも及ぶ。外来海草は、船舶や漁具によってもたらされ、沿岸域の風の吹き方、温暖化などの生息環境条件の変化で在来種を駆逐し、生息範囲を拡大させているようだ。博士らは、外来海草の繁殖に対して広く注意を呼びかけ、在来の藻場やその生態系を保全する努力をしている。また、THIBAUT研究生は、taxifoliaの分布の拡大をモデル解析し、勢力の拡大を予測する試みを行っている。このように、沿岸域の環境の現状把握を丹念に行い、将 来予測にも踏み込み研究を進める一方で、広く啓蒙活動にも参加していることは見習うべきところがある。
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写真1-3 在来海草のPosidoniaと外来海草のTaxifolia(ホームページより)
 
 
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図1-6 Taxifoliaの分布拡大予測フローと予測成果のパネル
 
 また、ニース前面の海岸線、潮間帯における生物観察マップを作成し(写真1-4)、環境の変化を把握している。調査は、約20kmに及ぶ海岸線を20m毎に区切り、出現生物を観察記録するシンプルなものであるが、夏場に1月かけて作成するマップには説得力がある。「多くの測定をする必要はない。簡単なチェックを重ねることで環境の状態が見えてくる。」という話であった。50種程度の指標を観察し続けているようである。
 他にも、Webサイトで生物の検索ができるように写真や同定のポイントなどを整理し、一般市民が生物や環境に正確に触れられるようにする努力が進められていた。
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写真1-4 ニース前面の海岸線、潮間帯における生物観察マップ
 
 








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