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1.4 モナコ海洋博物館(Monaco)
 モナコ海洋博物館は、ALBERT I 世が1910年に建造したもので、海洋学研究のメッカ的存在である。博物館には大公の海洋調査、生物サンプルのコレクションなどが展示され、歴史を感じる。潜水艇などの展示は、必要と好奇心から創意工夫した当時の海洋調査への並はずれた熱意を感じる。また、水族館では地中海の生物が展示され、観光スポットとなっている。
 水族館で使用されている水槽には、Closed system aquarium(図1-7)があり、水槽内部で物質循環がなされている画期的なものとして紹介されている。日本でもモナコ水槽としてペットショップなどが扱っているようである。
 Closed system aquariumは、水槽内に自然の生態系(バクテリアを含む)を創り上げ、排泄されるアンモニア態窒素を好気性バクテリアが硝酸にし、それを嫌気性バクテリアが窒素ガスと酸素に分解する仕組みで、これらのバクテリアの存在が何らかの方法でコントロール(バランス)している水槽とのことである。詳細なメカニズムは秘匿されているのでわからないが、生態系が成立しているため、給餌も不要とのことである。
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図1-7 Closed system aquariumの解説
 
 
1.5 下水処理場(AMPHITRIA)(Toulon)
 AMPHITRIA下水処理場は、Toulon市からの下水をSicie崎で処理する大規模なもので、このような下水処理場は、地中海側に4つ(ニース、マルセイユ、モンプリエ)存在する。AMPHITRIAはこのうち完全な密閉処理を行う処理場で、最先端のものと言うことである。
 Sicie崎は、もともとToulonの下水を放流していたところで、下水はblack waterといわれ、濁水が海域に拡散していた。処理場は1997年から稼働し、現在の稼働率は60%とのことである。
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写真1-5 下水処理場前面の濁水の拡散(左が処理場建設前、右が現在)
 
 下水処理場前面海域の環境モニタリングは、面談したCREOCEAN(環境コンサル)が担当し、10年間の契約で1997年から継続している。モニタリング調査の一括契約については、調査データの質を維持するため重要な要素である(日本では単年度契約で、調査コンサルが変わることがあり、データの継続性に疑問が残る場合がある)。
 環境モニタリングは、前面海域の17点で行われ、窒素、リンなどの栄養塩物質、重金属類、ベントス(食性別に指標種の追跡と多様性)を夏季1回行っており、1997年と2000年の調査結果を比較してモニタリング結果を中間的にまとめていた。具体的な資料は入手できなかったが、評価基準として重金属類7項目を使って改善率のようなものを判定していた。
   ID=Σ重金属測定値/Σ重金属過去最大値
 








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