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1.2 パリ第6大学海洋観測所(Villefranche-S-Mer)
 「UNIVERSITE P et M CURIE - INSU - CNRS, OBSERVATOIRE OCEANOLOGIQUE」は、Centre National de la Recherche Scientifique(CNRS)に所属し、1884年に設置された歴史のある海洋観測所で、CNRSの研究者や教育研究者ら1 00人余りが在籍している。今回の訪問では、「STATION ZOOLOGIQUE」を訪問し、海洋生物学のNIVAL博士とGORSKY博士に面談、話を伺う機会を得た。
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写真1-1 GORSKY博士から「尾虫類が生態系に与える影響」について説明を受ける
 
(右から、中田委員長、NIVAL博士、GORSKY博士)
 NIVAL博士は、様々な角度から海の自然現象を継続的に調査している。特に、基礎生産、生物の生産力、生物と海洋環境の関係、食物網のパラメータとモデリングを主要なテーマとしている。観測所の地先海域では、鉛直方向のプランクトン分布を毎週観測し、データを蓄積している。
 プランクトンの鉛直観測には、Marine Video Profilor(図1−5)が使われ、映像と同時に光学的測定を行い、水温、塩分等も測定している。観測結果は、IFREMERともネットワークで共有しているとのことである。
 GORSKY博士は、このビデオシステムを用いた研究者で、「尾虫類(オタマボヤの類)が生態系に与える影響」の成果を発表している。東京湾などでもミズクラゲの大発生が問題となっているが、同様の現象として興味深い。生物の種類は異なるが、有用魚介類が利用できない尾虫類の食物網への入り込みは、食物連鎖の時間や高次への受け渡しをショートカットする結果となり生態系の成り立ちを変化させる可能性がある。我が国においても動物プランクトンを大量に摂食し、高次の生物への栄養塩の受け渡しに障害を与える可能性のあるクラゲの研究が必要と思われる。
 「尾虫類の生態系に与える影響」研究は、1998年9月から2001年8月の計画で、EC委員会の支援で実施されているプロジェクト(MAS3-CT98-0161)である。
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図1-5 Marine Video Profilorと鉛直測定結果の事例(ホームページより)
 
 








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