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V. 次世代海洋構造物
東京大学大学院工学系研究科 鈴木 英之
[サマリー]
1.背景
 海洋に関する諸外国における取り組みや、我が国における各種調査や提案から、今後われわれの海洋への取り組みは、"海を知る"、 "海を守る"、 "海を利用する"という観点に集約されることが判る。
 一方、21世紀には地球環境問題や資源・エネルギー・食料問題など制約的な問題が顕在化することが予想されている。また、我が国固有の問題としては、国民生活が物質的に満たされたレベルに達し、心の豊かさを重視する傾向が顕著になってきている一方で、少子高齢化により労働人口が減少し、活力の全般的な低下に直面することが予想されている。
 このような制約の中で、わが国が高い生活レベルと活力を維持してゆくためには、理念を掲げ社会を無駄なく効率的に運営してゆかなければならず、海洋における我が国の活動も、効率的かつ最適化したものでなければならない。これは、海洋に設置されるシステムという個別課題についても、仮に安全保障、国際貢献、技術戦略といった経済効率を必ずしも問われないものについても、十分な最適化とライフサイクルでの低コスト化が求められることを意味している。次世代海洋構造物も提案、実現にあたっては必要にして十分な性能を保持しつつ最適化が図られていなければならない。
 このような観点から次世代海洋構造物について検討を行った。
2.次世代海洋構造物
 海洋において考えられる活動については従来より様々に検討が行われており、これらを"海を知る"、"海を守る"、"海を利用する"という観点から整理し、これらの中から21世紀の海洋においてわが国が活動する上で、検討が必要になる課題について海洋構造物の観点から検討を行った。その結果、"海を知る"という観点からは、沖合および沿岸域に設置され地球環境研究のためのインフラを提供する" 洋上地球環境研究センター"を取り上げた。"海を守る"という観点からは、200海里経済水域を有効に管理するために設置する"海洋総合管理基地"と、国内および日本周辺の災害に出動して指揮、救援の基地となる" 移動式洋上防災基地"を提案した。"海を利用する"との観点からは、沖合に設置する"メタンハイドレート等深海資源開発基地"、" 沿岸開発用海洋構造物"、"海洋への生活圏拡大用構造物" を提案し、必要となる要件について検討した。
1)洋上地球環境研究センター
2)メタンハイドレート等深海資源開発基地
3)海洋総合管理基地
4)移動式防災基地
5)沿岸海洋空間利用のための海洋構造物
6)海洋への生活圏拡大用浮体








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