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4.7 減圧・加圧実験
(1) 実験方法
 減圧実験は、流速変化実験と同じ試験片を用いて、流速変化実験では地上1mで行った実験を、白色化現象の程度から明らかにキャビテーション発生量が多くなったと判断される地上7.5mまで試験装置を持ち上げて行った(写真II.4.7-1)。スリット部流速は、流速変化実験で効果が確認された12.2m/secと18.8m/secである。
 加圧実験は、加圧弁(5個のボール弁)を試験片後方のキャビテーションが消失するまで絞る条件で行った。スリット部流速は、減圧実験とほぼ同じ12.2m/secと18.7m/secで行い、加圧弁の操作で、結果的に12.2m/secでは4mAq、18.7m/secでは44mAqの加圧となった。
 なお、他の実験方法に関しては、流速変化実験と同様である。
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写真II.4.7-1 減圧実験風景
 
(2) 実験結果
 写真II.4.7-2には、減圧・加圧実験の各流速時における試験片下流側の状況を示した。
 減圧実験では、白色化現象が確認され、速い流速でより顕著であり、キャビテーションが発生していたと考えられる。一方、加圧実験では、白色化現象は観察されず、キャビテーションは発生していなかったと考えられる。
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減圧実験,流速12.2m/sec
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減圧実験,流速18.8m/sec
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加圧実験,流速12.2m/sec
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加圧実験,流速18.7m/sec
写真II.4.7-2  減圧・加圧実験における試験片下流側の状況

 図II.4.7-1には、減圧実験における音圧スペクトル計測結果を示した。なお、加圧実験では、計測範囲以下の微小な音圧しか観測されなかった。
 減圧実験における音圧スペクトルは、流速変化実験と同様に数kHz〜20kHzの周波数帯において音圧スペクトルの強さ(Pa)が増していた。この結果は、加圧実験における非観測の結果と共に、減圧した場合に限りキャビテーションが発生していることを指示している。なお、減圧実験における数kHz〜20kHzの周波数帯の増幅程度は、流速変化実験における流速12.3m/secのレベルに留まっている。一方、キャビテーション発生状況を白色化現象は、減圧実験の流速12.2m/secおよび18.8m/secの方が明らかに顕著であった。この矛盾する結果の理由は、減圧実験では多く発生したキャビテーションの気泡で音が減衰したためと考えられる。
 以上の、試験片下流側の状況と音圧スペクトル計測結果から、減圧実験ではキャビテーションの発生と剪断力が共に作用した状況下、加圧実験では剪断力単独作用状況下における観測が実施できたと判断した。
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減圧実験,流速12.2m/sec
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減圧実験,流速18.8m/sec
図II.4.7-1 減圧実験における音圧スペクトル計測結果

 図II.4.7-2には、減圧・加圧実験時のスリット部流速と圧損の関係を示した。
 両者の関係は、流速が速くなると減圧実験での圧損が高くなり、キャビテーションの発生が圧損を高めていると考えられる。
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図II.4.7-2 減圧・加圧実験におけるスリット部流速と圧損の関係








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