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2.2.2 液化ガスタンカーの種類
 液化ガスタンカーは、積荷である液化ガスの貯蔵形態により、化学薬品等を運搬するケミカルタンカーを含め次の3種類に分類することができる。
[1] 圧力式液化ガスタンカー(Fully Pressurized Liquefied Gas Tanker)
[2] 低温圧力式液化ガスタンカー(Pressurized and Refrigerated Liquefied Gas Tanker)
[3] 低温式液化ガスタンカー(Fully Refrigerated Liquefied Gas Tanker)
 
(1) 圧力式液化ガスタンカー
 圧力式液化ガスタンカーでは、貨物は温度及び圧力の制御を行なわずに常温において貨物の蒸気圧と等しい圧力を保って液状を維持される。この船舶では最低設計温度は0℃とされ、また,設計蒸気圧は18kg/cm2G(19.03kg/cm2A)とされる。
 したがって、45℃の蒸気圧が19.03kg/cm2A 以下の物質は、この方式の貯蔵運搬が可能である。なお、設計蒸気圧をいくら高くしても、臨界温度が45℃未満の物質は圧力式では貯蔵運搬できない。
 圧力式液化ガスタンカーの対象貨物としてもっとも一般的なのが、プロパン、ブタン等のLPGである。そのほか,プロピレン、ブテン類、塩化ビニール、ブタジエン、アンモニア等を運搬できる多目的船も多くなっている。
 
(2) 低温圧力式液化ガスタンカー
 低温圧力式液化ガスタンカーでは,常温45℃より低く、かつ、沸点より高い温度に貨物を制御して運搬する。圧力はその温度における物質の蒸気圧以上であり、当然、大気圧より高くなる。この方式では、貨物の温度や圧力制御が必要であり、タンクには防熱装置がほどこされ貨物冷却装置も設けられる。
 低温圧力式液化ガスタンカーは、特定貨物専用と多目的用に分けられる。前者は設計温度・圧力をある狭い範囲に限定したもので、エチレン、アンモニア、プロパン等の特定の貨物を対象としている。後者は設計温度・圧力に幅を持たせ、より広範囲の貨物を扱うことができる。
 多目的圧力式液化ガスタンカーは、タンクは圧力容器とし、形状は円筒形、球型、双胴円筒型等が採用されている。タンクには防熱装置、カバー及び温度圧力制御装置が設けられる。
 
(3) 低温式液化ガスタンカー
 低温式液化ガスタンカーは、貨物を大気圧に近い圧力下でその飽和温度以下に制御して貯蔵運搬する方式である。この場合、最低設計温度はその貨物の沸点前後とする。
 したがって、貨物温度や圧力の制御装置が必要である。
 この方式の対象貨物としてもっとも一般的なのがLNGであるが、そのほかLPGやエチレン等も対象貨物となり得る。
 
 液化ガスタンカーのうちLPG船については、設置されるタンクの形式から次の2種類に分類することもできる。
 [1] 圧力式LPG船
 [2] 低温液化式LPG船
 
(4) 圧力式LPG船
 圧力式LPG船では、タンクは水平縦方向設置の円筒形タンクとすることが一般的である。タンクの総容量が3,000m3を超えると、タンク形状は円筒形横置き式から球形タンクを複数個備えるようになる。タンクの上半部は一般的に甲板上に暴露され、甲板とタンクとは特別に設計された防水装置が取り付けられる。タンクには、前述の設計温度との関係からタンクカバーや防熱装置は設けられないのが一般的である。
 圧力式LPG船の例を図 2.2-6に示す。
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図 2.2-6: 圧力式LPG船の例
 
(5) 低温液化式LPG船
 プロパンガスやブタンガスは、常温で圧力を加えたり、また冷却すると簡単に液化する。従来の輸送では高圧式輸送方式により、船内に多数のボンベ方式のタンクを設備して行なわれたのであるが,大気圧下でプロパンは−42.2℃、ブタンは−0.5℃を保てば液化状態となるので大量の輸送ができるという運搬の経済性に基づき、低温式の運搬方式が発達した。
 LPGは大気圧下で低温化すれば液状を呈するので、タンク形状は方形かそれに近い形状となるが、タンク形式及び保温のための防熱方式の選定により、構造が異なる。
 低温液化式LPG船では、冷凍装置によるタンク冷却装置は設けない。単に、航海中侵入熱により発生したガスを各タンクから管で導き、これを冷却液化して元のタンクに戻すだけの容量の冷却装置が設備される。
 低温液化式LPG船の例を図 2.2-7に示す。
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図 2.2-7: 低温液化式LPG船の例
 
 液化ガスタンカーのうちLNG船については、LNG専用、LNGとLPG兼用、LNG以外のLPG・エチレン・アンモニア等の多目的に使用されるものとに大別される。LNG専用やLNGとLPG兼用の船舶は比較的大型である。
 また、タンクの構造様式から、次の2種類に分類することもできる。
 [1] 自立式タンク方式(Self-Supporting Tank Type)LNG船
 [2] メンブレン方式(Membrane Type)LNG船
 そのうち構造面、経済面及び運用面から見て、球型タンクを複数個設けることが有利であるとされている。
 
(6) 自立式球形タンク方式(Self-Supporting Sphere Tank Type)LNG船
 LNGを低温液化状態で複数の球形タンクにより運搬する方式であり、球形タンクの支持方式により、複数の様式がある。
 自立式球形タンク方式LNG船の例を図 2.2-8に示す。
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図 2.2-8: 自立式球形タンク方式LNG船の例
[1] モスシステム(Moss System):タンクは、船体構造上に設けられた円筒状ス カートと赤道帯で溶接され支持される。
[2] テクニガスシステム(Technigaz System):タンクは、赤道上に下端が取り付けられた平行ヒンジ式吊機によって甲板から吊り下げられて支持される。
[3] CBIシステム(Chicago Bridge and Iron Co. System):タンクは、鋼製大型ブラケットを使用して、赤道からやや下のタンク外板に接合された多数の垂直コラムによって支持され、コラムは熱絶縁された基礎上に設けられる。
[4] セナーシステム(Sener System):タンクは、箱形構造のスカート上に設置支持される。
 
(7) メンブレン方式(Membrane Type)LNG船
 液化ガスの容器を薄膜(メンブレン)の金属板とし、その外側に防熱材を配し、液圧による荷重を防熱壁を介して船体構造で受ける方式である。
 メンブレン方式LNG船の例を図 2.2-9に示す。
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図 2.2-9: メンブレン方式LNG船の例








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