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石川県立ろう学校中学部「風神太鼓」(石川県)
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─プロフィール─
 「風神太鼓」は石川県立ろう学校中学部の生徒全員によるチームです。今年度は11名の生徒が在籍しています。和太鼓は中学部の授業の一環として取り組んでいます。外部講師として安江信寿氏をお招きし、4年目となりました。互いの音を聴こうとする気持ち、体の動きを見て合わせようとする気持ちを大切にしながら、メンバーが心をひとつにして、一生懸命演奏することを目標としています。
 昨年度の日本太鼓ジュニアコンクール石川県大会では初の敢闘賞を受賞しました。
 技術の向上のみならず、コミュニケーション能力や社会性の育成のため、和太鼓を通して様々な人との交流活動も行っています。
演奏曲
野 火
出演者
大森 綾子   柳澤 知栄
山本  史   吉田 秀平
川端 志織   串田 紀子
下原 栄二   西 誠覚志
八野 拓朗   上野 一也
中垣 彩乃      
─実践報告─
 石川県立ろう学校中学部が和太鼓に取り組みはじめたのは平成9年のことです。
 毎年秋の学園祭でそれまで劇を発表していたのですが、当時の3年生が「和太鼓をやってみたい。」と言い出しました。彼らの中に能登で生まれ育った生徒たちがいたのです。伝統的な祭りなどの行事が根づいている能登ではそれらに深く太鼓が関わってきました。聴覚に障害をもちながらも、体に響く太鼓の音は彼らにとって身近な「音」だったのです。
 その年の学園祭では、3年生が中心となり能登のリズムを取り入れた太鼓のパフォーマンスを披露しました。創り上げていく過程で普段の学校生括にはないような、積極性、創造性、集中力を見せてくれました。指導は、石川のろう劇団“結”の方たちが応援して下さいました。同じ聴覚に障害をもつ先輩から教えてもらうことは彼らの励みにもなりました。
 この年の発表会を機に翌平成10年の本校創立90周年記念式典で和太鼓を演奏することが決まりました。さらに本格的に基礎から学ぶことが必要となり、現在も指導していただいている安江信寿氏との出会いが生まれたわけです。約5年にわたり大変熱心に指導して下さっていますが、話すことはいつもシンプルです。「互いの音をよく聴こうとし、よく見て合わせようとすること。皆でひとつのチームだから心をひとつにすること。そして何より一生懸命打つことが大切。」
 同じ曲を何度も練習し、いろんな方たちに聴いていただく機会をもち、交流を深めていく。この過程の積み重ねは生徒たちにとって得難いものとなってきました。そこには他の学習場面では見られない姿があり、彼らの成長の糧として蓄積されていくことを確信しました。
 そこで今年度より“生きる力”を育むことをねらいとしている「総合的な学習」のひとつに位置づけ取り組んでいます。彼らにとっての“生きる力”となるコミュニケーション能力や社会性のエキスがこの和太鼓による活動に凝縮されているからです。
 本校での和太鼓は中学部3年間でピリオドを打ちますが出会った人たちとの絆や培った心と技と体が今後の人生に彩りを添えていってくれることを願っています。








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