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富岳太鼓(静岡県)
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─プロフィール─
 富岳太鼓の「富岳」とは「富士山」の別名であります。
 富岳太鼓は、日本一美しい山、富士山の麓にある、御殿場市に所在する、社会福祉法人富岳会に働く職員とホームで生活する障害者によって結成されました。
 1975年、富岳会理事長山内令子の発想により、障害者の機能回復訓練と地域の青少年の健全育成のためのミュージックセラピーとして、日本の伝統芸能の一つである和太鼓を取り入れ、富岳太鼓は誕生しました。
 我々のミュージックセラピーとは、主に知的障害者の機能回復訓練とし、彼らが人前で演奏することによって自分に自信を持つこと、施設の外に出て公演をすることによって社会とのコミュニケーションを計り、自立への第一歩となるよう精神の安定を目的とした音楽療育のことを表しています。
 地域での活動では主に「おじゃましますコンサート」として、全国各地の小・中学校やイベント、また海外など様々な公演をさせて頂いております。
 昨年5月には、イギリスロンドンのハイドパークでの公演をはじめ、24時間テレビ出演等全国各地で約30公演を行ないました。
演奏曲
雷 舞
出演者
大川登志夫   梅原 知栄
矢口 博司   畑原 礼子
久保田真喜   長島 一生
佐野ひろ子   石原  純
桑原 幸代   小熊 華代
田中 大輔   矢本 佳織
須賀 有希   田代 雅子
勝間田里美   早野  均
氏原 悠子   鈴木 智子
五十嵐善一   持摩かおり
鈴木 進一    
─実践報告─
 富岳太鼓というのは、富岳会で生活している利用者のチーム、富岳会に勤務し、利用者の方達に和太鼓の指導をする職員チーム、地域の子供達で編成されているチームの3団体から結成されています。
 チーム結成のきっかけは、1977年、障害者のための訓練の一環として和太鼓を用いたことから始まりました。25年前から和太鼓を使った知的障害者のための訓練、活動は当時は例がなく、いち早く取り組んだ富岳会では周囲から非難を浴びることも多くあったようです。
 この和太鼓には、演奏する楽しさのほかに、リハビリ、体力作り、コミュニケーションの形成といったように、障害のあるなしにかかわらず、それぞれの体力や技術、運動能力に合ったメニューを決め、取り組むことが出来ます。心・体を鍛え、技を研き、太鼓から多くを学び、自立に向かうことを目標にしています。これらを軸に、活動を行っています。
 毎回の稽古の流れについてもそれぞれの項目を反復訓練することで、それぞれのもつ意味を理解してきています。黙想からはじまり、挨拶、バチ体操、基礎・曲打ち、黙想、挨拶という流れになっていますが、稽古前に黙想することにより、自己コントロールを養い、決められた時間座り続ける、姿勢の矯正、腹式呼吸の確立をねらいとし、稽古に集中できるようになります。
 また挨拶については礼儀や協調性、自立を目標として行ないます。この中には、挨拶を交わし、返事をする、感謝の気持ちを育てるということが含まれています。
 バチ体操については機能回復訓練、老化防止を目標とし、身体の各箇所のストレッチを行う事により、年齢、障害に応じ、自分のレベルにあわせ、自分の限界で動きをとめることができ、安全性が高くなり、特に練習中の怪我の防止に効果的な運動です。
 基礎打ち、曲打ちには機能回復訓練、老化防止、体力強化、集中力、リズム、協調性を養うことを目標として実施します。太鼓の演奏を見ること、聞くこと、自由に打つこと、また、始め、止めの決まりを守ること、聞くこと、片手(左右)、両手打ち、太鼓独特の間を身につけることなど基礎打ちについてはもっとも時間をかけて行う必要性があるものであります。
 練習後の黙想については、練習前のねらいと、その日のポイントの再確認を行います。
 練習後の挨拶については、練習前の挨拶のねらいにあわせ、道具、稽古場への感謝の気持ちも込めて行います。
 それぞれが意味を持ちその意味を理解した上で稽古に取り組んでいます。
 私たち、富岳太鼓利用者チームのメンバーは授産施設、更生施設の利用者約、200人から成っています。
 普段は、地域の会社で働いたり、施設内で作業に取り組んでいます。彼らの目標の一つとして、社会に出て自立するということが挙げれますが、太鼓を通じ多くのことを学んできているように思われます。
 太鼓に接することにより、多くの人とかかわりを持つことができます。コミュニケーションを図る場として、人の前で、自分を表現する一つの方法としての演奏を行うことによって、自信を持ち、認められるという意識を持つ良い機会になっています。
 その他にも、腹式呼吸の導入により、今まで発声が不明瞭であった人も、大きな声がでるようになったり太鼓の掛け声により発声が可能になったりということがあります。
 私たち施設では全員が日ごろの練習の成果の発表をできる場が、年間を通じて何度かあり、メンバーー人一人が個々の目標を持って練習に取り組んでいます。施設内の発表から、外での公演と、訓練から芸術活動へ次のステップアップとして取り組んでいます。
 富岳太鼓の取組みをふまえた上で、太鼓を通じて自立する、太鼓の演奏活動を一つの仕事にしていくことも考えております。








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