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大会趣旨
 風にのって聞こえてくる、祭り囃子の心地よい太鼓の音に胸を弾ませたり、大太鼓の響きに包まれたとき、ふと懐かしい思いにかられたり、自分の鼓動と一つに重なったような感覚にとらわれた経験はありませんか。
 「どんつく どんつく」太鼓の響きは、一人の人間がこの世に生まれる前、胎内で聞いた母の鼓動や、一人一人の体の中で脈打つ心臓の鼓動ととてもよく似ているといわれています。太鼓のコンサート会場の大音響の中で、スヤスヤと眠ってしまう幼い子ども。耳の聞こえないはずの聴覚障害者が響きを体で感じ、振動する太鼓の皮に恐る恐る触れる。我々が最近作曲した曲を聞き、懐かしいと涙を流すお年寄り。リハビリでは緊張して、上手く動かせなかった麻痺した手がリズムにのって動きだした。そんな不思議な場面に数多く遭遇してきました。そのたびに、和太鼓の響きとリズムは、老若男女、心身に障害のあるなしにかかわらず、人間の最も根源的な部分を刺激し、心をひきつけてはなさない不思議な魔力が潜んでいることを実感してきました。太鼓を聞き、打つことによって、人は生命の原点へといざなわれ、安らぎと生きる力を感じとることができるのです。
 近年障害をもつ人達の中でも、この和太鼓の素晴らしさに気づき取り組み始めた人、団体が増えてきています。しかし、和太鼓活動の継続、存続には大変な問題が山積みされています。太鼓は購入、維持にコストがかかること、指導者の数が少ないこと、中心となる組織がなく情報の収集や交換が困難なこと、実力を発揮する発表の場が少ないこと等々。障害を持った人達でも比較的多くの方が取り組め、かつ療育的効果が得られることがわかってはいるものの、障害者が太鼓を楽しむ環境はまだまだ整っているとはいえません。
 全国で、障害を持ちながらも精力的に和太鼓に取り組む19団体が一同に会し、太鼓演奏会を開催します。
 彼らの舞台を一人でも多くの方に観ていただくことにより、太鼓が心のバリアフリーとなり、人間の秘めたる可能性への認識、生きることの素晴らしさを感じとって頂き、勇気と感動を分かちあえることを祈りつつ趣意とさせていただきます。是非ともご理解の上ご協力頂けますようお願い申し上げます。








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