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日本太鼓と学校教育−5
 今回は、(財)日本太鼓連盟静岡県支部長であり、富岳太鼓の代表者である山内強嗣氏から、学校教育に和楽器が導入されることについて寄稿していただきました。
太鼓と学校教育
富岳太鼓代表 山内 強嗣
 
 平成14年、学校教育の音楽の授業に和楽器が導入されるという。確かに文部省の揚げたこの政策自体は素晴らしいことだ。国際化を迎えた現代社会で、一番大切なことは自分の国に誇りを持つことだと思う。自国を知らずして、他国と語れず。学校教育のなかで日本文化を取り入れることは大変良いことだ。体育の授業でも、国技の相撲などを正式に取りいれることも面白いかもしれない。
 しかし私が考えるに、問題はその後にある。音楽の授業に取り入れることまでは良いが、そのフォローが問題だ。教職員を目指す学生の授業に、太鼓や琴や三味線が取り入れられたか。生徒に教えるのなら楽器は選択としても、必修科目としてしっかりとした知識と技術を持って、教育現場へ送り出すべきではないだろうか。また、現職の教員に対して研修制度が設けられたかである。一番大変な思いをしているのが現場の教員である。通達はされたが、後はかってに考えろとでも言うのだろうか。最近、私たちが主催するワークショップの参加者に、小学校の教員が増えた。以前は障害者施設の指導員や保育園の保育士、学生が多かったが、やはり音楽の授業に導入されるということでの参加らしい。そして、参加者の多くが求めるのが、基本も身につけていないのに、生徒達と一緒に打てる曲を教えて欲しいという。たった1日の講習でだ。これでは本当の日本太鼓は何も子供達に伝わらない。太鼓打ちとしてはとても悲しい。
 私は、太鼓を障害者のセラピーとして導入している。基本的理念は「太鼓を学ぶにあらず、太鼓で学ぶ」である。
 曲が打てるとか、太鼓が上手いということはやる以上は大切だが、太鼓を通して礼儀作法、人とのつき合い方、生きる喜びなどを学ぶことの方が、もっと大切だと考えている。学校教育においても、にわか仕込みの指導者が消化不良の授業をするのでなく、太鼓の持つ本来の良さを充分に活用することを願って止まない。
 今、日本太鼓を取り巻く世界に、新たなムーブメントが興ろうとしている。私もこの時流のなかで、自分を見失わず、自分に何が出来るのかをしっかり見極め、日本太鼓をこよなく愛するひとりとして貢献できればと思っている。








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