3)4次(最終)試作ネックガードの評価等
[1]衝撃緩和
ダミーによる衝撃試験では、直接ヘルメットに接触するときより、ネックガードを介して接触した場合は、衝撃加速度は約80%減少し、大きな効果が認められた。
しかし、ヘルメット部に衝撃が直接加わっても、反対側のネックガードが支えになり、車で使用されるヘッドレストの効果が得られるはずで、頚椎に加わる衝撃も減少すると思われる。
[2]自動膨張センサー
今回使用した和紙のセンサーが、水に溶解することで動作するものであるが、反応が遅く使用に耐えない。しかし、手動と併用することで、気を失った場合有効である。手動またはテザースイッチによる作動方法の詳細検討が必要である。
不膨張時の収納はカバーにマジックファスナーを使用する形式であったが比較的良好な動作で、ネックガードが膨張することでマジックファスナーを開くことができた。また、容易に再収納も可能である。
[3]浮力の増大
この膨張時の浮力増加が、この形式の課題の最大ポイントで、衝撃吸収と水面下に潜りたい要望が相反し、評価は容易でない。ただし、ウエットスーツにヘルメット装備の状態で、救命胴衣なしでも、水面下に退避することは不可能であり、救命胴衣をつけることで更に浮き、水面下に退避できず、水面上にヘルメットが出た状態しかありえないはずである。高速、大型化した現在の競技艇では、この退避が十分効果を持つとは言い切れない状況で、このネックガードのような防護の必要性はたかいであろう。
[4]重量増大
最終試作品でこの装置は、約600gの重量増加になるが、セーフティジャケットの重量が1.9kgであり、大きな負担にはならないと思われるが、問題なものは、ガスボンベであろう。この一点に325gの重量が集中し、体重の軽い選手には、艇の振られにあわせ邪魔になることが考えられ、再航走試験等が必要である。
[5]膨張後の走行
ネックガードが膨張のまま、競技艇に乗り込むのは、足元が見えず、乗艇後も手元が見えずテザーコードの取付けや操作盤のセット等は容易でない。しかし、乗艇後は、各試作品でも体ごと横を向くことなどで前方確認を行えば乗艇は可能であった。また、競技上、落水して競技艇から手が離れた場合、失格になる競技規則では再乗艇を急ぐ必要もなく問題ない。
[6]浮遊状態
通常、無意識時の浮遊状態は、うつ伏せになるようであるが、この程度では大きく水面上にでることも少なく、水面ぎりぎりで気道が確保できるかできないかのところで、ほぼ適正であると思われるが、各種の条件で再度試験が必要である。