2)ネックガードの役割
上記の分析結果を基に、落水者を後続艇の衝撃から守ることを主眼に、膨張式ネックガード救命胴衣の試作を行ったが、このネックガード効果を考えると次のような効果が予測される。
[1]衝撃緩和
ガスで充たされたネックガードそのものが、艇からの衝撃を吸収し、選手身体に加わる衝撃そのものを緩和する効果をもつことは否定できない。
先に示した各種の防護具の調査結果や研究試験結果等からも、衝撃は大幅に減少することがわかる。
[2]衝撃の分散及び回避
下図1において、ネックガード無しに上側の矢印方向で競技艇のバウが当たった場合、選手の首は進行方向に曲げられ、衝撃を逃がすためある程度衝撃を緩和することができる。しかし、下の矢印位置から接触した場合、頭部の慣性が働き、首のところで体と頭部が「く」の字に曲がり、艇のエネルギーすべてが加わるはずで、身体全体が艇の進行方向(前方)に持っていかれて頚部にも大きな衝撃が加わる。
しかし、太線のような断面のネックガードがあった場合、瞬間的経過で考え、接触の当初は弱い衝撃でネックガードがヘルメットを押し、急激でないから頭部の慣性も弱まる事から選手の首が艇の進行方向に曲がってから、後で大きな衝撃が加わることになり、体ごと進行方向に持っていかれるようなことは少なくなるはずで、後続艇の速度エネルギーそのものが体に加わることは少ないと推定される。
[3]首の保護
頭部はヘルメットで、身体はセーフティジャケットが守っているが、ネックガードなしの場合、身体の中で比較的弱い首部(頚部)を保護するものが必要で、この機能をネックガードに持たせる必要がある。
これは、車のヘッドレストの役割であるが、現状の救命胴衣にはヘッドレストの機能がない。(セーフティジャケットでは後部に取り付けてある)。
このネックガードは、頚部の折れ曲がりを抑えるため、頭部のヘルメットと身体の救命胴衣間をネックガードで囲み、ネックガードのガス圧力や浮力で、固めて一体化することで、首に衝撃が集中しないようにする保護すること可能である。
ネックガード
競技艇の進行
一体化のイメージ時図