6 蜜源を知らせる情報伝達システム
花から蜜や花粉を持ち帰った蜂は必ず収穫ダンスを踊る、と思われがちであるが、そうではない。帰巣した働き蜂は採餌場所に仲間を誘導する価値があると判断した時にだけ踊る、ダンスでは、翅の微小な上下動から発せられる二五〇ヘルツ前後の音の発信時間が距離の情報となる。ニホンミツバチは一キロメートルを約○・七秒にコード化しており、同じceranaでも熱帯産のものとはコード内容が異なっている。北限のceranaともいえるニホンミツバチは、コロニー規模が大きくなったのに見合うように“広域適応型”"となっている(佐々木ら一九九三)。(図[9])
[9]中央のダンサーが周りのハチに情報を発信し伝達している
採餌蜂たちは蜜の質、蜜量、巣からの距離を総合評価し、ダンス内容に情報表現する。こうしてリアルタイムで、その時々のもっとも収益性の高い花を集中的に利用し、見合わない蜜源や花粉源はどんどん切り捨てていくという、きわめて効率的な採餌を行っているのである。