No.1 鳴海醸造店
中町の南端、東側角地に間口約24間、奥行約46間の広大な屋敷を構える。文化年間(1804〜17)創業の造り酒屋で、代々「文四郎」を襲名している。屋敷内には店舗付住宅のほか、奥には文庫蔵や仕込み蔵、貯蔵蔵、米蔵、味噌蔵などの各種土蔵が8棟配置されている。店舗付住宅は文化5年(1808)頃の建築と伝えられ、入母屋造、妻入の梁間8間のうち南側に3間幅の通り土間を設け、店舗から奥へは2列の居室が続く。さらに店舗に隣接して表側に1列の居室がのびる。したがって、店舗付住宅の全体の平面形はL型となり、中町の商家遺構のなかでも特異な形態を示す。また表側に1列の居室がのびるほぼ中央に漆喰仕上げの土蔵造りが見られる。これは鳴海家の仏間である。このようなことから同家は藩政期以来、特権的存在であったことがうかがえる。表側の「こみせ」は路面が石敷なるなど伝統的形式をよくとどめ、しかも、中町のなかでも最長の約45mとなる。なお、前町境の道路に面する仕込み蔵側面の全長約44mもある土蔵造り景観も良好である(図3-23,24,25)。
図3-23 (株)鳴海醸造店 図面1 (昭和58年度と平成13年度の調査による)
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図3-24 (株)鳴海醸造店 図面2 (昭和58年度と平成13年度の調査による)
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図3-25 (株)鳴海醸造店 図面3 (昭和58年度と平成13年度の調査による)