3.3. 水噴射用機器の試験
試験は実エンジンとの組合せではなく、ベンチ(台上)試験とした。水噴射タイミング、水噴射量などの信号は、プログラミングによる指令値である。
3.3.1. 水噴射時間の試験
実エンジンを想定した水噴射時間、およびサイクルの試験を実施した。
図4に示すのが試験データである。この試験はエンジンの1サイクルに相当する水噴射を模擬的に行った試験で、エンジン回転を最高の74rpm、噴射量が最大の116mLを想定した。クランク軸角20°間(約45msec)噴射を行い、その後一定時間保持し、水圧を供給し次のサイクルに備える。
また、噴射量が82mL、48mLの場合を想定した噴射時間の試験結果もまとめて表1に示す。
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図4.試験結果{1サイクル}
表1. 噴射時間の試験結果
水噴射量 |
116mL |
82mL |
48mL |
水噴射時間 |
45.0msec |
32.5msec |
16.5msec |
3.3.2. 水噴射量制御および精度の試験
次に水噴射量制御および精度の試験を行った。水噴射量は噴射完了後、注水ピストンが供給水によって戻され、注水シリンダヘの水供給工程の終端となる制御ストッパーの位置によって決定されるので、実際には制御ストッパーの位置制御の試験となる。
図5はエンジン回転74rpmを想定し、このサイクルで運転している状態において制御ストッパーをステップ応答させた時のデータを示す。
噴射量の指令値は48⇔116mLである。現実には燃料噴射量の変化に応じてエンジン回転数が変化するので、噴射サイクル一定で噴射量が変化する場面はありえないが、最高サイクルにおける噴射量の制御として模擬的にこの条件によるベンチ試験を行った。この結果によると、48⇔116mLの噴射量の制御は6〜7サイクルで完了することがわかった。これは、実エンジンに対する燃料量の変化を考慮すると、問題ないレベルと考えられる。
また、噴射量を116、82、48mLと設定し、実際の噴射量の精度を測定した結果を表2に示す。
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図5.試験結果{ステップ応答(48⇔116mL)}
表2. 噴射量精度の測定結果
設定噴射量 |
116mL |
82mL |
48mL |
噴射量の精度 |
+1.0mL
(+0.9%) |
+1.0mL
(+1.2%) |
+1.0mL
(+2.1%) |
-1.5mL
(-1.3%) |
-1.5mL
(-1.8%) |
-1.5mL
(-3.1%) |
4.調査研究の成果
本調査研究によって得られた成果を以下の表3に記す。
表3. 調査研究における成果一覧表
項目 |
仕様 |
成果 |
水噴射サイクル |
0.81sec/回
(1.23回/sec) |
0.81sec/回
(1.23回/sec) |
水噴射時間 |
Max.45msec
(噴射量116mL) |
45.0msec(噴射量116mL) |
32.5msec(噴射量82mL) |
16.5msec(噴射量48mL) |
水噴射量 |
116〜48mL/回
(任意に設定可) |
116〜48mL/回
(この間で任意に設定可) |
水噴射量の精度 |
- |
116mL |
+1.0mL(+0.9%)
-1.5mL(-1.3%) |
82mL |
+1.0mL(+1.2%)
-1.5mL(-1.8%) |
48mL |
+1.0mL(+2.1%)
-1.5mL(-3.1%) |
水噴射圧力 |
29.4MPa |
29.4MPa(理論上は44MPaまで可能) |
5.今後の課題
本調査研究により前項に記した成果を得ることができたが、実用化には以下の点についての課題が残っている。
[1] 実機関でのNOx低減効果の確認
(水噴射タイミング、水噴射時間、水噴射量の最適条件の探索)
[2] 水噴射システム装置の耐久性の確認
[3] 中速機関への対応の可能性確認
(噴射サイクルの高速化および噴射時間の短縮など)
以上