インターネットによる船陸データ自動伝送方式
株式会社ケーイーアイシステム
1.目的
船・陸間における各種データのやり取りは、従来様々な手段を使って行われている。通信費用の削減のため、あまり即時性が必要とされないデータは、合封便の形をとって、数ヶ月に一度本船から運航管理会社に送られている。また、緊急度の高い情報は、ファックス、テレックス、電話等で送信・受信されている。
しかし、近年、質の高い優秀な乗組員の確保が、困難になりつつあり、このため、本船から送られるレポートの一部の信憑性についての問題点が指摘されている。 さらに緊急事態(船底破損、機関故障など)における、陸上側からの可及的速やかなバックアップが求められている。
本調査では、最近急速にかつ劇的に進んでいるインターネット技術を利用し、船・陸間での各種データの送受信を可能とするために必要な各種ソフトウェアを開発し、その実用性を検証することを目的とする。
2.実施経過
2.1 実施項目
[1] 船陸通信システムの要求分析
[2] 通信手段の検討
[3] 機関部伝送データ仕様の検討
[4] 機関部データ自動収集ソフトウェアの作成
[5] 機関部自動帳票作成ソフトウェアの作成
[6] 電子メール自動送受信ソフトウェアの作成
[7] 船陸データ通信機能の検証
2.2 実施期間
[1] 開始 平成12年4月1日
[2] 終了 平成13年2月15日
2.3 実施場所
株式会社ケーイーアイシステム
3.実施内容
3.1 船陸通信システムの要求分析
船陸通信システムに対する要求分析を行うため、某船主の外航コンテナ船における船陸通信の現状を調査した。
・船陸間における通信は電話、Fax,Telex,郵便などを使って行われている。電話とFaxは、連絡事項や、緊急連絡事項のやり取りに使われている。Telexは、使用頻度が、減少している。
・エンジンデータや、各種アブログ、作業報告は、2〜3ヶ月に一度本船より、船舶管理会社へ郵送される。
・トラブル発生時は、Faxが主として使われ、これにメーカの資料などが添付される。
以上の結果より、船陸通信システムに対する要求としては、次のような結論が導き出される。
・本船が通常の航海状態にあるとき、本船から陸上に送られる報告書、各種データは、緊急性を持たない。
・トラブルが、発生した時は、できうる限り、正確な本船データを時間遅れがほとんど無い状態で陸側に送信する必要がある。
3.2 通信手段の検討
インターネット接続手段 |
適用 |
料金 |
通信速度 |
備考 |
インマルサット |
外航船 |
400円/分 |
9600bps
64Kbps(HSDオプシヨン使用時) |
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N-STAR |
近海 |
92円/分 |
64Kbps(下り)
9600bps(上り) |
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携帯電話 |
内航 |
30円/分 |
9600bps
14.4/64Kbps(cdmaOne)
384Kbps、2Mbps(W-CDMA)2001年5月より |
  |
3.2.1 インマルサット通信の問題点
インマルサットを使った、データ通信は、陸上の電話回線を使ったデータ通信に比べて、種々の問題点が有る。以下現時点で考えられるいくつかの問題点を列挙する。
[1] 伝播遅延時間が大きい:インマルサット衛星は、高度36,000Kmの静止軌道上に配置され、陸上−衛星−本船の延べ回線長が70,000Kmにもなり、電波の伝播時間だけでも0.24秒かかる。往復では、約0. 5秒となる。
[2] 回線品質が悪い:インマルサットでは、衛星と陸上地球局の間はCバンド(6G/4GHz帯)、衛星と本船の間は、Lバンド(1.6G/1.5GHz帯)の電波を使っており、回線長が長いこともあいまって、減衰量が大きく、かつ外乱により、データが乱される可能性が有る。このため、通話が途切れることを考慮しておかなくてはならない。
[3] 接続時間が長い:伝播遅延時間の影響もあるが、相手局に接続されるまでの時間が極端に長く、一般的な通信プログラムでは、相手局からの応答が無いため、相手局が存在しないものとして自動的に回線を遮断してしまい、正常な通信ができなくなる。
[4] 料金が高い:初期のころに比べると、かなり使用料が安くなったとはいえ、やはり通話料金は高く、これを考慮して、システムを構築する必要がある。
3.3 機関部伝送データ仕様の検討
異なったメーカ間での通信となる機関部伝送データ仕様の検討を行い、通信プロトコルを決定した。
3.3.1 物理層
RS−232Cを採用する。伝送速度は、9600Bpsを採用する。この伝送速度ならば、殆どのデータロガメーカは、対応可能と思われるが、もちろんソフトウェアとしては、その他の伝送速度にも対応可能なように考慮しておく。
3.3.2 伝送制御手順
伝送制御手順としては、無手順を採用する。
データを送出する周期は、5分とする。
3.3.3 伝送フォーマット
STX |
: フレームの開始フラグ(Hex.code: 02) |
本船年月日、時間 |
: 年月日、時分データのみ含む。 |
機能番号 |
: 本体に含まれるデータの種別を意味する。 |
通し番号 |
: 本体に含まれるデータの通し番号を与える。1〜999(Hex.code: 30〜39)までのコードからなる文字。 |
データ |
: スペース(Hex.code: 20)からDEL(Hex.code:7F)までのコードからなる文字。 |
BCC |
: フレームチェック文字。 |
CR |
: フレーム終了フラグ。(Hex.code: 0D) |
3.3.4 文字構成
伝送される文字は、JISC 6220(情報交換用符号)に規定された伝送制御キャラクタを用いることとする。