4 調査研究の成果
4.1 まとめ
FMSNという新分野について、我が国舶用工業活性化のため、関連する重要な国際標準案を活用し、製品化を行えるようにそのキー技術を開発したことが本調査研究の成果であると言えるが、以下、主要な成果についてその詳細に記す。
1) 市場創出、ビジネス創出に関する成果
[1] 船社等、FMSNの利用者が自社ネットワーク構築のための検討作業を行う際、本研究での実例を基にすることによりその指針を得ることができる。 これにより利用者側でのFMSN構築の機運を促進することが期待できる。
[2] メーカーやサービスプロバイダがFMSNビジネスにおける自社商品やサービスについてのフィジビリティースタディを行う際の技術的なバックボーンを示すことができた。 これにより新たなビジネス分野創出の促進が期待できる。
2) 国際標準実用化に関する成果
[1] ある程度の具体性を盛り込んだ我が国からの提案が既に取り入れられているとはいえ、まだまだ概念性の強いISO/DIS 15849規格に対して、APIの実装仕様及びサンプルとなる実証用のソフトウェアを開示することにより、異システム間相互接続性を考慮したFMSNの具体的仕様を示すことができた。
[2] FMSNシステム構築ツールとしてビューア機能を持たせることにより、ユーザー業務におけるFMSデータの拡張性や新規データ定義の容易性を確認できた。
[3] 開発した実装仕様に基づくシステムを試作実証したことにより、表3.1に示す項目に関する評価検証を行うことができ期待通りの結果を得ることができた。
3) 国際貢献、関連プロジェクトヘの貢献
[1] ISO/DIS 15849制定に対する積極的な貢献を行ったことにより、関連する国際会議における主導的立場を得やすくなることが期待できる。
[2] 各団体で取り組まれているFMSプロジェクトに対して、具現性のある国際標準規格を示すことにより、各プロジェクトに対してシステム化技術に関する方向性を与えることができた。
4.2 今後の課題
FMSN実現のために重要な位置づけであるAPIに関する実装仕様を開発し、それを試作実証したことによりその骨格部分は完成した。 FMSNで扱われるデータについてはISOの場で鋭意、標準化が行われており、今後この標準化の進展や諸団体で行われているFMSアプリケーションの具現化に対応する形で今回仕様化したサービス機能の拡充が必要になることも予測される。この場合にはこの拡充を行わなければならないが、標準化過程であるがゆえの普及しづらさを克服できるよう、標準仕様の拡充については十分な考慮が必要となる。
また、舶用工業会のサーバ等を介して、クライアント用ソフトをパブリックドメイン化することなど、FMSNの普及を促進するための諸策を早急に講ずることも重要なことであると考えている。
*本調査研究は、(財)日本船舶標準協会の関連委員会の協力を得て実施した。 また、関連諸団体から多くの情報や貴重な助言を頂いた。