2.2 試設計による設計法の解析及び評価
2.2.1 ギヤ比配分の方法による解析
2.2.1−1)ギヤ比配分と留意事項
多段遊星歯車装置の小型・高性能化は主に(1)歯車強度(2)遊星構造(3)軸受性能(4)損失動力が関連し、各項目はギヤ比配分方法が重要なポイントとなる。
(1) 歯車強度
遊星歯車ではギヤ比の大きさによりプラネットギヤ個数が変わるので歯車寸法が大きく変わる。そしてギヤ比は右図参考例のように歯車周速〜歯車容量の関係に関わるためJ G船級規格における曲げ・面圧強度を歯車周速について調査し、小型化を左右する歯車の最弱要素と許容値を把握した。【図1.1と1.2】参照。
上図から、高速歯車の場合JG規格以外にスコーリング強さを重視するため歯形を小さく設計する傾向になり曲げ強さが重要である。図1.1で1段目高速歯車列の小型化はプラネットギヤ(アイドルギヤ)歯の曲げ強さに着目すれば良いことを示している。図1.2は平行軸歯車の場合を示し、一般的な歯車設計が可能である。
JG規格における歯車周速と歯車強度の関係
(2) 遊星歯車構造
遊星歯車は下記a)〜c)の3つの基本構造に分類され、高速・大ギヤ比の仕様ではa)又はb)の組み合わせで2段減速機を構成する事になるがこれらの組み合わせは1・2段のギヤ比配分により強度容量・性能に影響する。
a)スター型
入出力逆方向回転
ギヤ比目安1.5〜12
b)プラネタリ型
入出力同方向回転
ギヤ比目安2.5〜13
c)ソーラ型
入出力同方向回転
ギヤ比目安1.1〜1.7
(3) 軸受性能
遊星歯車装置ではプラネット軸受が唯一積極的な荷重を受け、ギヤ比により荷重・回転速度が変化し軸受性能に影響する。又、プラネタリとソーラ型の構造ではプラネットギヤ公転による遠心荷重も軸受に作用し(下図)、遠心荷重の大きさはギヤ比によって変わる。
(4) 損失動力
高速仕様における損失動力の主要因に、歯車による潤滑油の撹拌損失とプラネット軸受の損失動力がある。何れもギヤ比の大きさが損失動力に影響する。