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3.1.4 連続スペクトラム分析法の調査
 分光計センサーを用いて油水の流れをオンラインで測定できる可能性を調査した。
3.1.4.1 測定原理
 光源から出た光はサンプル水を透過し分光計センサーで受光される。センサーのデータはコンピュータによってスペクトル解析し、水100%の基準とサンプル水を比較して油分の吸収レベル値を油分濃度として測定する。
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連続スペクトラム分析法測定原理
3.1.4.2 測定実験
 分光センサーと解析処理可能なコンピュータを入手して、軽油・潤滑油・船燃料を測定してスペクトラム表示させた。この計測法により見出す点は
1)油の種類別に吸収波長の相違点はあるか。
2)ペクトラム分析にて油と混入物の区別ができるかどうかである。
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油種別・スペクトラム
1)測定では油の種類に対し個別的スペクトラム波長による相違は見られなかった。
2)区別する事は困難で理由は油類別に色が異なることから透過光を揃えるための補正制御が必要である、その問題を解決することで区別は可能と思われる。
 実験では満足行く結果が得られなかった。
3.1.5 各種測定法の比較評価
各測定方法の比較評価項目を表1にまとめた。
 (表1)
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3.2 精度確認手段の調査
 装置の油分濃度精度を確認するための手段として、既存測定法の適応性を検討。
超音波照射法
 目標濃度基準液の製作が現状困難のため、電気的模擬信号を用いて対応。
透過・散乱・反射光法
 校正基準器棒を製作、困難な場合は校正不要となるユニット交換処置を可能にする。
赤外線吸収フィルター法
 LPガスを基準油分濃度値になるように薄めてビン詰めにし、基準棒として使用する。
連続スペクトラム法
 基準油分濃度値にした油分液をジェル状に硬化しそれを校正準器として使用。
3.3 操作性の簡易化
 油排出監視制御装置の現場調査を行い問題点の整理、改善方法を検討した。
2.3.1.1 現状操作上の問題点
1)マニアルでので各装置説明が個別であるため、装置全体の働きが解らない
2)油分検出装置・流量検出装置等の原理・仕組みが解らず触ることができない。
3)算装置が理解し難いため各測定値から換算表を作り、演算値を確認している。
4)メンテナンス必要時メーカを呼ばないと処理できずメンテナンスに時間がかかる。
2.3.1.2 改善点
1)マニアルに記載する図面等はカラー図および写真を載せる。
2)各装置間の動きや関連内容が理解できるよう装置マップを載せる。
3)センサー部はできるだけユニット化にし交換処置を可能にする。
4.調査研究の成果
性能改善可能な油分濃度測定方法の調査
 超音波照射法については、油以外の混入物の干渉除去効果は低濃度測定には十分発揮しているが高濃度測定には改良の必要性があり、また超音波照射の原理上構造が複雑、防爆環境内に測定部本体を持ち込めない等の問題の解決が必要である。 透過光・散乱光・反射光測定法については、受光検出角度を変えた2方向からの散乱光を測定する方法を考案したことで、油とSSを分けて検出できる可能性を実験確認によって見出せたことが最大の成果であった。しかし検出した2つの散乱光と透過光の検出値が複雑に相互干渉しているので、両者を完全に分離して希望精度で計測できるようにするにはさらに干渉を解く方法を見出すことが必要である。
 赤外線吸収フィルター法については、希望とするフィルターガラスを低価格で入手する方法が見出せず測定原理案を検討するところまでにとどめた。
 連続スクトラム分析法については、波長900〜1000nmの領域で水と油の吸収特性があることは認められたが、低濃度の油について高感度に吸収特性を測定する条件を検討する段階で成果がないまま終了した。
 確認手段の調査については、オンラインと同等な条件で校正できる方法を調査した結果、基準となる油分濃度の固体化、たとえば基準液・基準棒・基準濃度LPガスをビン詰めにする等の着想を得た。
 操作性の簡易化調査については、ユーザーが理解できるマニアルの作成と、監視御装置全体が理解できるような装置マップ資料を追加することなどが必要と思われる。
4.2 今後の課題
1)受光検出角度を変えた2方向から散乱光を測定する油分濃度測定法の実用化に向けてさらに検討を進める必要がある。
2)赤外線吸収フィルター法でのフィルターガラスの調査についてさらに調査を行い、フィルター法の可能性を確認する必要がある。
3)操作性の簡易化については、計測器設計の段階で操作・保守の容易化に対する配慮を行うと共に、解読の容易なマニアルの作成法について検討することが今後の課題となる








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