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3.実施内容
[1] 関係する文献調査を行い、本調査研究では内航船がターゲットとされているが将来的にはタンカー等の大型船をも範疇に入れ、多種に渡り対応できる製品を目標に、実船における使用環境を考慮した上でのシステムを構想した。図C,D
 計測方法は供給空気をコントロールユニットにて集中管理を行い、計測空気を計測対象先へと送り込み、その圧力を圧力変換機にて計測した値を液位として表示させる。
 計測空気供給管は総合的に検討した結果φ6mmを暫定的に採用した。
 供給空気には水・油・ごみなどの不純物が入り込む事による計測空気管に“つまり”が発生し、故障の原因になる。
 計測空気中に湿気分となって混在して供給されてしまうと、それ自体が質量をもっているので抵抗になり計測値に影響が出る。本機器での生命線であるので水・油・ごみの完全除去を目指した。
 だがフィルタでの水分の完全除去は不可能であるし、仮に完全除去したとしても配管の温度変化により空気中に含まれる成分で湿気分が発生してしまう。
 フィルタは数種類存在しており、その構造は様々である。
 除去率が高くノーメンテナンスが望ましいので、衝突分離方式を採用した。エレメントを一切使用せず、空気を旋回させ仕切り版に衝突させることで混在したゴミなどを分離させる物で、既存のフィルターの欠点を克服した物である。
 液位の急激な変化による逆流を防止するために計測対象先に逆流防止弁を設ける。
 計測空気管内に海水が逆流した場合、最終的には計測空気が供給されていたり、クリーニング機能などにより、それは排除できるが、海水に含まれているカルシウム成分などにより計測空気管内に固着物が発生し、つまりの原因に成りかねない。
 
 供給空気は脈動・乱流を含んでいると思われるので、それらを抑えるためにコントロールユニット内外にてそれらを緩和する配管を施し、レギュレータにて調整し、更に計測対象先に合わせるために更に別のレギュレータにて調整を行う。
 該当すると思われる計算値をピックアップし現状でのシステム構想を元にした実証試験機の設計製作は大型船をターゲットとしたもので行った。
 圧力変動及び流量特性の相関関係の調査を開始した。
 文献にあるような傾向は確認出来たものの計測器としては芳しいものではなかった。
 
計測調査の手順−準備
・各機器を設置・接続する。
・圧力変換機等計測器に電源供給をし、電源投入直後の計測誤差を避ける為、しばらくの間アイドリング状態にしておく。しばらくした後に0点とスパン調整を行い動作確認をする。
・各レギュレータの調整
空気供給を開始する前に計測空気管を外し“めくら”処理を施し、第一レギュレータを調節する、続いて同様にレギュレータを調節する。
例えば、計測対象先液位が10mの場合、最大液位での水頭圧は比重が1.000の時、0.0980665Mpa・1kgf/cm2となる。よって各レギュレータの設定値は最低でもこの数値を下回ってはならない。
更に管路抵抗等により圧力低下要素があるためそれを見越した圧力で調節する必要がある。
・流量調節弁の調整
空気供給を開始させチューブ全体に空気が行き渡るまで待つ。流量調整は本機器では最重要なファクターであるので、細心の注意を図りながら調整を行う。
・圧力変換機の調整
計測空気が供給されている状態で調整を行う。
 ノーマル状態(計測空気が供給され計測対象先液位が0の場合)で0点調整を行う。スパン調整は擬似的に水頭圧を作り出し設定を行う。
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 計測調査の手順−調査
 約1mのパイプ型水槽に水を入れ、計測空気管を上下する事で液位変化を作りだし、計測動作の調査を行う。
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 計測空気管をある一定深さまで沈め、その長さをスケールで読み取り記録する。計測空気管の先端よりパージが確認できたらしばらくした後に圧力変換機の出力値を記録する。同様に計測深さを変えてデータを確認する。
 同様に流量を変化させ、調整した後データ取りを行う。
 
 表1・2の差はレギュレータ設定圧に変化を与えたが、あまり差は見られない。
 データ取りの結果、本システムで正確な計測を行うには流量を極限にまで抑える必要があることが実証された。
 しかし、1m計測するのに数分間も掛かるので非常にレスポンスが悪くなってしまう。計測器として致命傷であり、そうなると急激な液位の変化に追従できなくなってしまう。
 更に計測空気管内部に海水が逆流するなどして、管内部に付着した物質によりつまりを起こしかねない。
 又、リニアリティー性に欠けるデータもある。これは圧力変換機自体による物と本システムの計測誤差による物だが、後の圧力変換機で対策は可能と思われる。
 更に他の要因として考えられるのは、
 ・フロアにチューブを這わせたが直線では無理なので、なるべく管路抵抗が少なくなるように設置したが完全ではない為、その影響を受けている。
 ・計測空気管がナイロンである事が考えられる。 温度変化による伸縮が考えられ計測値に影響を与える。
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 参考までに容器にお湯を入れ計測空気管をその中に通した時とそうでない時のデータ比較を行ったが、その影響は大きな物であった。
 原因としてチューブの膨張や計測空気に湿気が発生したと思われる。
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・計測空気の圧力降下は以下の式より算出できる。
 
 空気圧配管の圧力低下演算式(ハリスの式)
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Q:空気流量(NI/min)
P:空気圧力(kgf/cm2)
d:管内径(mm)
△P:圧力降下(kgf/cm2/m)
 
・絞り(抵抗)間の流量の算出式
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Q:空気流量(NI/min)
S:管内径(mm)
△P:圧力差(P1−P2)
P1:一時側空気圧力(kgf/cm2)
P2:二時側空気圧力(kgf/cm2)
T:温度(℃)
 後の温度係数に関しては削除しても良い。
 今回の調査研究に関係する数式を数ある中で2つ取りあげた。
 本来であればこれら式に当てはめることで、数値が見出せるはずであろうが、実験した結果をふまえこれら式に当てはめてみたが、残念ながら今回には当てはまらず、引用するまでにはいたらなかった。
 原因としては先にあげたチューブの膨張や温度などによる物であろうと考えられる。ちなみに傾向としては上記式の圧力損失を求める式では計算値に比べて大きい値が計測された。
 以上の試験結果を交え検討した所、計測器としてふさわしくないと判断し、本システムでの検討を中止した。
 したがって別途新規システムの検討をこれまでの経験をもとに開始した。基本的な構造はこれまでと同様とし、計測空気圧の計測方法を直読方法から変化量のみの差圧を計測する方式に変え、レスポンス向上を図る。
 今回の再検討において、クリーニングラインを追加し、計測空気管へのつまりを防止する。一定時間度に圧縮空気を空気供給間に供給しゴミ・油・水等を排除させる。
 再検討したシステム(図E)で検証計測を開始した。
 いくつかのパターンを想定してデータ取りを行った。
 計測結果を調査すると、レスポンスは向上したもののリニアリティー性が前システムより劣る事がわかった。圧力変換器にて計測された液位信号のリニアリティーはただ単にシステムの特性だけではなく、供給空気による影響や計測空気管の配管方法による影響が大きく、計測空気管の配管方法ではなるべく管路抵抗が大きくならないようにする必要がある。
 例えばジョイント用いた場合、そこで乱流が発生しジョイントの一時側と二次側管で圧力差が生じる。
 計測空気管をエルボ状に90°曲げた場合、曲がり部分の内側と外側で流速差が生じ乱流が発生してしまう。
 長距離に配管された計測空気管の環境変化では一部では冷やされ一部では暖められと、計測空気管の膨張による管路抵抗値の変化や計測空気自体が膨張したり湿気分を帯びることで計測値に誤差が生じてしまう。
 こういつたファクターにより計測値のリニアリティーを狂わす原因になる。








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