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グループホーム推進グループ
伴侶を失っても、一人で自立した生活ができますか?
 日本では核家族・ディンクス(共働きで子どもを持たない夫婦)の増加で、これからますます夫婦のみ・単身の高齢者が大きな割合を占めていくものと推測されます。高齢者が感じている二大不安が自分や配偶者の病気のことと、配偶者に先立たれた後の生活のことであるのも、こういう背景を考えると当然なのかもしれません。
 私も最近、2人の友人が妻を亡くし、その孤影悄然とした姿に接し、胸を痛めた経験があります。2人とも一人娘が結婚した後は夫婦のみの生活を続け、平穏で円満な日々を突然の妻の死で断ち切られて、うろたえ、悲しみで呆然となったそうです。2人から「妻と娘との思い出が一杯詰まった自宅で一人で生活することの寂しさは耐え難い」と訴えられて、他人事でない不安を感じました。
 生者必滅・会者定離は人の世の定めと頭ではわかっていても、自分たち夫婦の平穏はいつまでも続くものと思っていたい。そんな現実に目をつぶった姿勢を反省しなければなりません。夫婦はいつの日か一人になるんだと覚悟して、一人になったらどう自分の老後を過ごすのか、お互いによく話し合っておく必要があると思います。そういう覚悟なしに、一人になったら「呼び寄せ老人」として子どもたちの世話になるのでは、あまりにも自立心のない、寂しい老後ではないでしょうか。
 どんなにささやかであっても人の役に立つ立場でありたい、可能な限り子どもたちの世話にならずに生きていきたいと思うのは、多くの高齢者の心からの願いであり、それであってこそ、生きている実感=生きがいを感じることができるのです。
 親子の情愛の本質は時代を超えて不変ですが、その表し方・親子関係は変わっていきます。親子の交流をより密に、生活はお互いに可能な限り自立してという親子関係が増えているようです。独りになった親が「呼び寄せ老人」というかたちで子どもたちと同居するよりは、一人になっても自活している親を気遣った子どもたちが近居するというケースが、最近多くなってきたような気がします。同居から近居への流れは、自立を前提としない親子間のもたれあいでなく、血縁でつながった情愛をごく自然に表現しあえる、余裕のある親子関係への変化を表していると思います。
 老いて、一人になって、誰とどこで暮らすのかをよく考えておくことが大切です。しかし、それに応える住まい方の選択肢は、現在、社会に十分に用意されていません。高齢者が、家族・若い仲間の力を借りて、自らの住まい方をつくり上げていく必要があります。
 住み慣れた町で、同じ立場の仲間と集まって組織をつくり、自立しながらも支え合える住まい方を目指していってほしいと思います。温もりある支え合いが加味された自宅・下宿屋・アパート等自由な発想で、新しいシステムづくりを楽しんでください。
(神谷 和夫)








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